新型コロナウイルス下での衛生面や居住性に対するニーズの高まりから水回り設備が注目を集めている。オーナーにとっては投資額が高く、住宅設備の中でも優先順位は低くなりがちだが、ほかの物件との差別化のポイントになる商材だともいえる。使い勝手の良さに加え、デザイン性の高さ、居住スペースの確保に配慮した商品を紹介する。
3点ユニット解消 過去最高の出荷台数
住宅設備の販売・施工を行うパナソニックAWエンジニアリング(東京都品川区)は、2005年より3点ユニットを分離し、トイレとシャワールームを独立させる「SHOWER&POWDERⅡ(シャワーアンドパウダーツー 以下、S&PⅡ)」を提供している。21年度では、過去最高の出荷台数を記録し、賃貸物件でのリフォームを中心としつつも、新築物件やホテルなど非住宅での引き合いも伸びている。
シャワールームとトイレを分けるS&PⅡ(パナソニックAWエンジニアリング)
出荷台数が増加した要因の一つには、21年9月に行ったリニューアルがある。まず、温水洗浄便座付きのタンクレストイレが標準仕様となった。従来型にあたるタンク付きで温水洗浄なしの標準便座もオプションで選べるが、約7割は温水洗浄便座付きのタンクレストイレを選択している。
従来サイズに加え、一回り大きい1150mm×1600mmの「セパレート1216サイズ」もラインアップに加わり、大きめの3点ユニットも交換できるようになった。
施工においても、梁や壁高に対応する工場加工部材が、通常商品と同じ納期での対応となったこともあり、これまで短納期で導入が難しかったリフォーム案件における受注も増加した。
パナソニックAWエンジニアリングでは、マーケティング・リサーチを行う日本インフォメーション(東京都中央区)に依頼し賃貸住宅に住む男女600人に独自調査を実施。3点ユニットの付いたワンルームと、S&PⅡの付いたワンルーム、どちらの部屋に住みたいかを聞いたところ、S&PⅡを選んだ人が全体の68.5%に上った。学生から30代までの若い世代は70%以上、特に学生の場合は全体の75.8%となった。「コロナの影響もあり、浴槽がなくてもその分、独立したトイレがいい、居室やワークスペースを充実させたいという声が高まっている証左だ」とパナソニックAWエンジニアリングの担当者は分析する。
賃貸住宅の修繕・リノベーションを多く手がける朝日リビング(大阪市)は、既存のユニットバスを交換せずに見栄えを刷新する「お風呂セット」を展開している。浴室の黄ばみやさびを特殊な塗料で塗装。壁や天井のパネルを張り替え、照明とシャワーヘッドを新たに取り付けることで、使用感のある浴室の印象を大きく変える商品だ。
これまでは物件によってユニットバスの交換を案内してきたが、家賃帯を考えて交換費用の捻出が難しい場合、シートの張り替えやシャワーヘッドの交換など部分的に対応してきた。内見時の物件の印象を大きく左右する浴室の見栄えを、低コストで改善するために考案したのが浴室専用のパッケージリノベーションプランとなるお風呂セットだ。
お風呂セットの施工事例(朝日リビング)
デザインコンセプトは入居者ターゲットに合わせて3種類を用意。ピンク色を基調とした「Fairy(フェアリー)」、木目調パネルを使用する「Forest(フォレスト)」、青系の色で爽やかさを演出する「Wind(ウィンド)」だ。料金プランは二つで、床と浴槽の塗装を行う「ぷちっとプラン」が29万7000円から、床・浴槽に加え壁3面と天井まで塗装する「まるっとプラン」が37万4000円から(いずれも税込み)となる。両プランには、アクセントパネルの設置、シャワーヘッド・ホースの交換、浴室鏡・照明の取り付けなどが含まれる。
シャワーヘッドは「ReFa(リファ)」などのヒット商品を展開する美容機器メーカー・MTG(エムティージー:愛知県名古屋市)が開発したシャワーヘッド「ReFa FINE BUBBLE S(リファファインバブルエス)」を取り付ける。ファインバブルの微細な泡が毛穴につまった汚れや皮脂を取り除き、節水効果もあることから幅広いターゲットへ訴求できると考えパッケージプランに取り入れた。
女子力企画室・國分麻里絵プランナーは「新規交換する場合と比較して約3分の1の費用で印象を良くすることができるため、残りの資金を浴室以外の部分のリノベに振り向けられる」と話す。
これまでの施工件数は約170件。築15~20年の物件を手がけることが多く、施工後は賃料アップや空室期間の短縮につながっている。
(2022年5月23日8・9面に掲載)