賃貸管理業などを手がけるエイゼン(神奈川県川崎市)は、相撲部屋とシェアハウス、賃貸マンションが一体化した「クリエイティブハウス文花」を運営している。入居者が力士と交流を図れる機会を提供し、物件の付加価値向上につなげる。物件には力士7人を抱える押尾川部屋が入居中だ。
力士と入居者相互の交流育む
同物件は2022年5月に竣工した。RC造6階建てで、延べ床面積は918.18㎡。1階が約168㎡の相撲部屋となっており、2、3階は力士と親方の居住部分だ。2、3階の一部と4階がシェアハウス、5、6階が賃貸マンションとなっている。
9月15日時点の稼働率は、シェアハウスと賃貸マンションを合わせて70%ほど。入居者は20代前半から半ばくらいの学生や社会人がメインだ。平均家賃は近隣の相場と同程度だが、入居者には同社が運営するフィットネスジムを無料で利用できるサービスをつけている。
エイゼンの片桐拓弥社長は「ジムが無料で使える事を理由に入居を決める顧客もいる」と話す。
新型コロナウイルス下では交流イベントが開催できなかったが、コロナ禍が落ち着いた23年からは、入居者が力士と交流を深めるイベントも計画している。
7月には隅田川花火大会に合わせてイベントを開催。花火大会の鑑賞会を同物件で開き、入居者や押尾川部屋の後援会の会員ら約50人が参加した。鑑賞会では力士が作るちゃんこ鍋もふるまわれ、参加者からは「力士たちが普段食べているちゃんこを食べることができて楽しかった」などの感想が上がったという。
片桐社長は「近隣付き合いが乏しい現代だからこそ、ほかの入居者や力士とともに墨田区での生活を楽しんでほしい」と話した。
同物件を企画したのは、地元の金融機関から押尾川部屋の押尾川旭親方(元豪風)を紹介されたことがきっかけだった。押尾川親方は、両国国技館がある墨田区に部屋を持ちたいという意思があり、相撲部屋の建設を打診された。
クリエイティブハウス文花が建つ場所には以前、エイゼンが所有していた築約100年になる長屋が建っており、老朽化が目立つことから取り壊しを検討していた。また、同時期に近隣に大学が2校開設されたことから、学生向け物件の需要が見込めると考え、相撲部屋とシェアハウス、賃貸マンションが一体型となった物件を建設することを決めた。片桐社長は「相撲部屋の力士と大学生が同じくらいの年代だったことから、若い人向けの物件を併せて建設することでコミュニティーが生まれ、双方にとっていい刺激になるのではないかと考えた」と狙いを話す。
次回は餅つきなどのイベントも検討中だ。
エイゼン
神奈川県川崎市
片桐拓弥社長(41)
(2023年10月2日5面に掲載)