機能から情緒への差別化へ、ヒット商品の生みの親は「直感」

【連載】プロパティマネジメントで切り開く未来 第120回

管理・仲介業|2019年01月14日

経営者はアートに触れ観察力を鍛錬

論理より感性

 2019年の初めは、最近読んで大変感動した本を紹介したいと思う。それは、山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』である。ぜひ、ぜひ、読んでいただきたいと思う。ちょうど2年前にこの連載で、ダニエル・ピンク著『ハイ・コンセプト』を読むことを推奨したが、その系譜に連なる良書だと思う。要約すると、「論理」や「理性」だけでは勝てない時代になっている、「感性」や「直感」を重視すべきだ。また「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められる、と述べている。

 昨今、「デザイン思考」や「ブランディング」なる言葉がはやっている。企業においては経営者にはクリエイティブなマネジメントが必要とされており、クリエーターとの共通言語を持たなくてはならないとする考え方だ。『ハイ・コンセプト』では21世紀に生きるビジネスパーソンは「6つの感性(センス)」を鍛えなくてはならない。その第1は「デザイン」であり、「機能だけでなくデザイン」の力をもっと重視すべきとあった。多くのビジネスが、「機能の差別化から情緒の差別化」へと競争の局面をシフトさせている。そして、論理をつかさどり言語を操り分析能力にたけた「左脳」とは別に、感情や非言語的表現の理解をする「右脳」をもっと鍛えよという。「感情の意味を読み取る力」があり、「直感的に答えを見いだす力」「物事を全体論的に認知する力」があるのが右脳だ。今までは「左脳至上主義」であったのではないかというのだ。いまアメリカではMBA(経営学修士)よりMFA(芸術学修士)のほうが人気で重視されているらしい。アートスクールや美術系大学によるエグゼクティブトレーニングに多くのグローバル企業が幹部を送り込み始めているらしい。

 『世界のエリート~』の中では、有名なエピソードに触れている。ソニーの井深大名誉会長が、「海外出張の際に、機内で音楽を聴くための小型・高品質のカセットプレーヤーが欲しい」と言い出し、開発部門が一品限りの特注品を作った。これを同じく創業経営者の盛田昭夫に見せたところ、盛田も大いに気に入り、製品化しようと言い出した。「ねえ、コレ見てよ!」「お~、いいですねえ」と決まったのである。しかし、実はこれに現場は大反対であった。彼らは、それまでの市場調査から、顧客が求めているのは、大きなスピーカーであること。そして多くの人がラジオ番組を録音して楽しむためにカセットプレーヤーを購入していることを知っていたため、「スピーカーも録音機能も持たないカセットプレーヤーなど売れるわけない」とまさに「論理的」かつ「理性的」に猛反発したのだ。しかし、二人の創業経営者は開発にゴーサインを出した。それは「論理」や「理性」ではなく、「感性」や「直感」で判断したからだ。これが世界に大きな影響を与えたソニーの代表的な製品「ウォークマン」の誕生の瞬間なのだ。ソニーは会社設立の目的の第一条に「面白くて愉快なことをどんどんやっていく(意訳)」とあるそうだ。これは、会社の意思決定の際には「面白いのか?快なのか?」または、「美しいのか?」という「感情に訴える要素」に基準をおいているということになる。

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