神奈川県で不動産事業を主力として事業を拡大するミックグループは、生涯顧客化を目指して事業を多角化。本社のあるエリアを中心に「ミック経済圏」を形成している。飲食店などの非不動産事業と、中核とする不動産事業とのシナジー効果を生み出す。
究極の内製化と生涯顧客戦略推進
40事業展開 不動産につなげる
春木磨碑露社長の下で事業の多角化を推進し、就任前の2011年と比べて売上高を4.1倍、事業数を2.6倍、社員数を2.7倍に伸ばした。ミックグループは1977年2月に創業し、現在49年目。不動産事業を展開する三春情報センターを中核企業とし、グループ会社18社で構成されている。
2025年3月期の売上高は110億円。26年3月期は、売り上げ123億円、粗利57億円の着地見込みで、売上高のうち約7割が不動産事業となっている。
グループ全体の従業員数は正社員約450人、パート・アルバイトを含め約630人に上る。全拠点数は86拠点だ。

グループのうち不動産事業を行うのは三春情報センターと、賃貸管理・資産運用を行うリースティ、賃貸仲介を行うミックサポート、買い取り・再生販売を行うミックライフプロデュースの4社だ。不動産事業の拠点は、神奈川県横浜市南部と鎌倉市を中心に49店舗を展開する。
創業当初は賃貸仲介・管理と売買仲介を中心とする不動産事業から始まった。創業者で先代社長である春木裕児氏の「世の中の役に立つ」という強い思いの下、創業時から利益を店舗展開に投じることで事業を拡大していった。創業時から不動産に関連するリフォームや建築、保険などの事業の多角化は進めていた。
春木磨碑露社長が就任して以降、事業の拡大は加速度的に進んだ。現在、グループの事業は40以上に及び、主力事業である不動産に加え、レストラン、温泉旅館、保育園、デイサービス、訪問介護、障害者雇用支援事業など、多岐にわたる分野に進出。直近では印刷会社や映像制作会社をM&A(合併・買収)でグループに迎えた。自社で既存事業に関連する事業を完結できる究極の内製化体制を構築中だという。
春木社長は「これらの事業は一見無関係に見えますが、すべての事業は不動産に関係させるように設計しています」と話す。
記念日に花を持参 顧客と関係構築
不動産事業の年間成約数の4割強は既存顧客からの紹介またはリピーターだ。その根幹は長年続けてきた「生涯顧客戦略」にある。
08年ごろから、賃貸仲介、売買仲介、リフォーム、建築など不動産事業で成約となった顧客を対象に「ゴールドメンバー様」制度を開始。年に1度、顧客の記念日に社員が花を持参して自宅に訪問したり、はがきでの連絡、公式ラインの配信などを行ったりし、定期的に接点を持ち続けている。
このような施策により、リフォーム、修繕、買い替え、売却、賃貸住宅への転居といった新たなニーズを顧客から直接把握。
さらに多角化した事業と連携して、親子3代にわたる長い付き合いを可能にしている。飲食やその他の非不動産事業は、同制度のメンバーを招待するイベントなどで活用。他社との差別化やリピートと紹介を促す「ファンづくりの土壌」として機能する。
「ゴールドメンバー様方に感謝を伝え付加価値を感じていただけることを目指しています」
チーム体制で対応 専門家目線を重視
同社の特徴として、顧客提案時にチーム制を導入していることが挙げられる。
チーム体制は社長就任後に開始。売買仲介や建築・リフォームの顧客への提案時には不動産営業の担当者だけでなく、リフォームコーディネーター、現場監督、保険担当など、複数の専門担当者で構成されたチームで対応することを前提としている。このチーム体制は離職率の低減にも貢献している。
「専門性のある内容は、専門の担当者から説明します。営業担当は顧客の側に立って専門家に質問もしますので、顧客からご安心いただけると考えています」
賃貸仲介では、案件の進捗などをチーム内で共有して複数人の視点からフォローすることで成約率の向上を図る。
理念経営を実施 人材育成を強化
「社員を幸せにするというのが、会社を経営するうえで私が重視しているコンセプトです。幸せにし続けるためには、企業として存続し発展し続ける必要があります」
このコンセプトを実現するため、顧客、会社、自分・家族、地域の幸せを満たす「四方善し」を選ぶことができる人材の育成を目標とする。
会社の進む方向を示すものとして「事業発展計画書」を全社員に配布。経営理念をはじめ、30年までの売上高や粗利の目標金額、現在展開する事業や将来参入予定の事業をまとめたポジショニングマップなどが入っている。
本社の応接スペース
社員は全員、個人の幸せの形を明確にするために毎年「ビジョンマップ」を作成。個人、家庭、会社における3年後、5年後、10年後の目標をビジュアル化し、働く原動力を社員の内側から引き出す。ビジョンマップは、自分が実現したい夢や目標などについて100項目を書き出し、裏面に実現したい項目に関連する画像を貼る。これにより視覚的に目標を確認できるよう工夫している。A3判の紙1枚にまとめたのち、A4サイズに縮小し、事業発展計画書に貼り付ける。
また挑戦の文化を醸成するため、社内には24個の委員会を設置。全社員が部署や役職に関係なく、各々の業務と並行して活動している。委員会には「風紀委員」や社内イベントを実施する「笑顔委員」に加え、「新規立ち上げ事業に携わる委員会」もある。
「新規事業立ち上げの委員会では、年間を通じてメンバーが企画出しや事業計画の作成を行います。希望者がいれば事業のリーダーを任せることもあります」
ミックグループは30年の「ハンドレッドビジョン」を当面の目標とする。
「30年までに粗利100億円の達成とグループ全体で神奈川県内に100拠点以上の店舗展開を実現し、総合生活産業として顧客の生活を支え、県内唯一無二の存在として信頼される企業を目指します」
(2026年4月27日16面に掲載)





