住宅の地震対策として「制震技術」が注目されている。住友ゴム工業(兵庫県神戸市)は「高減衰ゴム」を用いた住宅用制震装置を展開し、導入実績は累計10万棟を突破した。耐震基準の想定を超える繰り返しの揺れに備え、住宅市場での普及拡大を目指している。
高減衰ゴムで揺れを吸収
地震エネルギー 熱変換の技術
住友ゴム工業は、日本で発生してきたいくつもの大震災の経験を踏まえ、新耐震基準の想定を超える、複数回の震度7規模の地震に耐えられる住宅の普及に尽力する。
同社が開発した制震装置には高減衰ゴムと呼ばれる特殊なゴムが組み込まれている。このゴムの内部には、微細な石が練り込まれている。地震で建物が揺れるとゴムが変形し、内部の石同士が擦れ合って摩擦が生じる。この摩擦によって地震の運動エネルギーが熱エネルギーへと変換され、建物の揺れを抑える仕組みだ。
ハイブリッド事業本部制振ビジネスチームの所健部長は開発の経緯について「1990年代に橋梁(きょうりょう)のケーブル振動を抑える技術として開発が始まりました。その後、ビル用の制震ダンパーとして応用。阪神大震災や東日本大震災での被災経験を経て、2012年から一般住宅向けの『MIRAIE』として販売を開始しました」と説明する。ビル用の制震ダンパーについては現在も、建物の構造設計者の指定を通じて新築物件などに採用されている。
耐震基準に死角 震災大国で「備え」
なぜ、従来の「耐震」に加えて「制震」が必要とされるのか。その背景には、現行の建築基準法の想定がある。所部長は「現在の建築基準法は、震度7の地震に『1回』耐えられればよいという考え方です。倒壊せず、人が逃げる時間が確保できればよく、その後に住み続けられないほど半壊したとしても、法律上は問題ありません」と指摘する。
しかし、熊本地震では震度7の地震が2回発生。能登半島地震でも前年に大きな地震が起きている。巨大地震が繰り返し建物を襲う可能性は決して低くないという。一度強い揺れを受けると、建物を支える筋交いや合板などの耐力壁には目に見えないダメージが蓄積していく。最初の地震で1cmしか変形しなかった建物でも、ダメージが残れば次に同じ力が加わった際には2cm変形することもあると説明する。地震を繰り返し受けるほど変形は大きくなり、建物全体の耐震性能は徐々に低下していく。こうした背景から、繰り返しの揺れに対応する制震技術の重要性が高まっている。





