企業研究vol.162 スターリンク 長尾 泰治 社長【トップインタビュー】

スターリンク

インタビュー|2022年06月30日

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スターリンク 千葉県船橋市 長尾 泰治 社長(61)

 賃貸不動産において、入居者の家賃滞納や明け渡し関連費用を保証する賃貸保証サービス。賃貸住宅でのサービスの利用率が高まっている中、見通しの悪い景況感を背景に、オフィスや店舗などの事業用不動産でも需要の高まりが予想される。スターリンク(千葉県船橋市)は、事業用専門の保証会社として2007年より保証サービスを展開。保証リスクが大きく、テナント審査が難しいとされる事業用保証で実績を積み上げつつある同社の長尾泰治社長に話を聞いた。

ビル経営専門の保証サービス

新規契約、21年比1.5倍 充実保証の商品展開

―複数の事業を展開していますが、今回は、新型コロナウイルスなどの影響もあって需要が高まっている事業用不動産の賃貸保証サービスについて詳しく聞かせてください。

 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻は、多くの企業や個人事業主の業績に影を落としています。情勢の悪化に伴い、事業用不動産の賃料滞納の増加が懸念される中、滞納保証サービスへの関心は高まってきました。当社では、オーナー目線で保証内容を充実させた「オフィス保証24」のほか、利用コストを軽減できる、テナントを対象とした「テナント保証24」を提供しており、21年比で1.5倍となる約1500件の新規契約をいただいています。サービス取り扱い企業も1000社を超え、オーナーや大手不動産会社からの指定利用も増えています。

オーナーとテナント、双方の目線で設計した商品を展開している

オーナーとテナント、双方の目線で設計した商品を展開している

―住居用保証と比較した場合の相違点を教えてください。

 事業用保証は保証額が大きいうえに、テナントの入居審査が難しいことが住居用保証との大きな違いです。そもそも事業用不動産は住居と比べて賃料や初期費用が高く、複数人が使用することで物件の損傷も起きやすいのです。机や棚などの家具も多いため、万が一夜逃げなどが発生した場合は、残置物を撤去するのにも相当なコストがかかります。事業用保証は、滞納家賃や原状回復費用、残置物撤去費用、物件明け渡しに関する訴訟費用などが保証対象になりますが、保証額は住居用を大きく上回ることになります。

―入居審査についてはいかがでしょうか。

 決算書の読み込みは必須ですが、銀行からの借り入れや利益の多寡から単純に判断できるものではありません。さらなる事業拡大に向けて投資をするために融資を受けている可能性もありますし、そもそも借り入れができるということは当該企業に信用力があるとも受け取れます。また、税金対策のために意図的に利益を抑えた決算書を作成している事業主もいるでしょう。数字上は利益が少なく見えても、そのテナントが行っている事業の将来性がないことにはなりません。ここが事業用不動産におけるテナント審査の難しい点です。

審査・回収・交渉に強み 債権未回収案件はゼロ

―御社の強みを教えてください。

 完全に事業用不動産を専門としていることと、保証範囲の広さです。滞納賃料と訴訟費用、原状回復費用、残置物撤去費用において、費目ごとに上限を設けず、総額で24カ月分相当額を保証します。業界最大級と自負している保証内容で、ビルオーナーの視点から設計した商品です。そのほか、審査、回収、交渉においても自信を持っています。当社では金融機関出身の社員による精度の高い審査が可能です。決算内容の確認はもとより、テナントの代表者がどういう人物かを見極めることも重視しています。

―どのような部分を注視しているのでしょうか。

 例えば、期日どおりに決算書を作成しているか、税金は払っているか、毎月の残高試算表を管理しているか、必要資料の提出を求めた際に迅速かつ誠実に対応してくれるか。いずれかに不信感が残る人物の場合、万が一何かが起きた際に誠実に対応してくれない可能性が高い。当社では、オーナーから要望があれば、テナントへの評価の詳細を「審査承認レポート」として提出しています。

―昨今では外国人の事業主も増えているようです。

 外国人の事業主に必要なビザは、賃貸借契約の締結後に取得申請が行われます。そのため、初めて賃貸借契約を交わす時点では、ビザが用意されていません。契約後、どういう手順でビザを取得し、確認するかを明確に決めることで、強制送還などのリスクの芽を摘むことができます。飲食店の場合は、営業の形態に合わせてしかるべき届け出が必要なので、認可の取得確認も必須です。

―審査には多様な観点が必要であることがわかりました。

 これまで承認した案件で過去に退去・明け渡し訴訟の提起に至ったケースは1件のみです。その件についても債権は全額回収できていることから、未回収案件は1件もありません。理由は、滞納が発生した際に迅速な対応を取っているからです。テナント側とは、連続滞納で債務が膨らまないよう対策を話し合います。コミュニケーションが取れないテナントに対しては、2カ月連続滞納後、すぐに催告による契約解除通知を発送できるような運用体制を構築することで早期の退去・明け渡しを実現しています。

―初動対応の早さやオペレーションが重要ということですね。

 ビルオーナーにとっては次のテナントを早く決めて収益確保につなげることが大事です。そのためにも迅速な解決を目指し、オーナーのビル経営を支えたいと考えています。

海面下の新世界に魅了

 長尾社長が「唯一の息抜き」と話すのがダイビングだ。起業前、上場企業の専務として根を詰めて仕事をしていた長尾社長を気にかけ、元スターツの先輩が誘ってくれたのがダイビングだった。向かった先はフィリピンのセブ島。泳ぎは得意ではなかったが、いざ潜ってみると、30~40m先まで見える透明度の高い海の中に見たこともない世界が広がっていた。以降、コロナ前までは社員や取引先を連れて毎年訪れるほどだったため「来年こそは」との思いも強いこの頃である。

セブ島沖での写真

2019年、セブ島沖での1枚

会社概要

社名:スターリンク
所在地:千葉県船橋市葛飾町2-2005-3 マルショウビル5F
設立:2005年2月10日
資本金:1億4800万円
事業内容:不動産ディレクション事業、貸地・トランクルーム・駐車場などのサブリース事業、事業用不動産に特化した賃貸保証事業など

会社メモ

2005年にバイクパーキング事業を開始。06年に公益財団法人千葉市産業振興財団千葉市ビジネス支援センター主催のビジネスプランコンテストでグランプリを受賞。07年に、事業用物件の専門保証サービス「オフィス保証24」の前身となる「オフィス保証金補償」の提供を始めた。19年から、大手損害保険会社との共同組成サービスとしてオフィス保証24を不動産オーナーに提供している。

社長メモ

1961年2月生まれ。高知県南国市出身。84年4月、千曲不動産(現スターツコーポレーション)入社。足立支店、せんげん台支店、札幌支店、千葉支店などの各支店長を歴任し、不動産コンサルティング事業を中心に不動産業務全般を経験。95年、林総合研究所(現エリアリンク)の設立に参画し取締役に就任。2005年にスターリンクを設立。趣味はダイビング。

(2022年6月27日15面に掲載)

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