築40年の風呂なしアパートを大改修
2016年01月05日 | リノベーション
築40年風呂なし、全10室の木造アパートが、大改修により約1万円の家賃増に成功した。
JR京都線山科駅から徒歩10分の場所に立つ「垣ノ内荘」(京都府京都市)は、
近年、周辺にあった3軒の銭湯の廃業により、空室が常態化していた。
以前は、退去が出ても、高齢者を中心に次の入居者が決まっていたが、それすら難しい状況となっていた。
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2011年、父親から経営を引き継いだ2代目オーナーは、資金を投下し、ターゲットを若者に代え大改修を行うことを決意する。
とはいえ、「垣ノ内荘」周辺は、若者向けの物件でも家賃の値下げ競争が始まっており、浴室を付けたとしても相場以上の家賃設定を望むことは難しく、空室が解消されない懸念も残ったままだった。
そこで写真家を生業とするオーナーはデザインセンスで勝負する大胆なリノベーションを選択した。
施工内容は、スケルトンの状態からの配管の設置や、防音材を使用した床や壁の防音処理などだ。
さらに、20.52㎡という狭さを解消するためロフトを設け、1居室当たり200万~300万円の投資を行った。
躯体部分に経費をかけた一方、トイレは既存のものを、浴槽には1番小さいサイズのものを使用するなど、設備面での節約を図った。
リノベーションが施工された5部屋は、蛇口やドアノブ、照明器具などアンティーク小物でそれぞれの表情を出す。
女性向きにデザインされた8号室は、白を基調とした空間や、ヨーロッパの古城を思わせるアイアンパネルが特徴的だ。
一方、男性向きの9号室では、京都・河原町にある人気のカフェを参考にしたという、青と白のマス目がチェス盤のように並ぶ床や、オーナーがネットで仕入れたレトロな街灯が印象的だ。
リノベーションの結果、狙い通り8号室には北海道から大学進学で京都に来た大学生が、9号室には30代の男性看護師が入居した。
こうして、高齢者ばかりが入居していた「垣ノ内荘」は、名を改め、若者が集まる「カキノウチアパートメント」へと再生した。
同物件管理を担当しオーナーとともにプランニングに関わったアムネッツ(京都府京都市)の滝本昌幸氏によると、入居の決め手となったのは、部屋のデザイン性とロフトの存在だという。
「最近、7号室に30代のホテル勤務の方の入居が決まりました。その部屋は、近未来をテーマにしたロフトの無いリノベーション物件だったのですが、本当はロフト付きの8号室への入居を希望していました」という。
実際、ロフト付きとロフト無しの物件では空室期間にも差があり、人気のあるロフト付きの部屋は繁忙期であるにもかかわらず3カ月未満で入居が決まったという。
「実は、当初、浴室を取り付けるリフォームだけをして、入居募集を行ったこともありました。しかしそれでは、1年以上も入居が決まらず、追加投資をし、大規模リノベーションに踏み切ることになりました」(滝本氏)
ターゲットを鮮明にしなければ、部屋の改修も有効に働くわけではないことを象徴するエピソードだ。