投資用シェアハウスのサブリース会社倒産を受け、不動産投資への疑念は強まった。事業性を顧みない金融機関の融資姿勢や、投資家自身の知識不足も一因となった。彼らが見誤ったのは不動産の将来価値だ。リーウェイズの巻口成憲社長は昨年6月、過去の膨大な不動産取引情報と人工知能を掛け合わせ、不動産の収益性を予測するシステムを発表した。「情報の透明化がマーケットを拡大する」という信念のもと、不動産業界の地位向上を図る。
勘・気合い・根性の3Kが根強い業界
巻口 本日はよろしくお願いします。
亀岡 顔写真付きの名刺とは珍しい。たくさんの人に会うので、覚えやすくて助かります。
巻口 よかったです。当社は不動産取引に役立つシステム開発を手掛けています。人工知能とビッグデータを使って、不動産の将来的な収益性を算出するものです。不動産業界はいまだに気合いと根性で成り立っている部分が大きく、取引においては営業マンの個人的な勘で物件を提案することも多いのが現状です。世間の不動産に対するイメージが悪い要因もここにあります。不動産の価値を正しく分析できれば、不動産取引に安心感と信用を生むことができます。
亀岡 しかし、その正しい分析が難しいのでは。
巻口 そのためには不動産情報の蓄積と活用がポイントだと考えました。WEB上の情報を自動的に集めてデータベース化するプログラムを作り、過去の賃貸募集や売り出し物件などの物件取引データを収集しました。これまでの10年間で約6000万件のデータを集めています。
亀岡 そのデータを使って将来の収益性を予測するのですね。
巻口 築年数や構造、最寄り駅からの距離、平米数などの属性から、相場賃料や将来的な賃料の下落率、表面利回りに与える影響を解析します。分析したい物件の情報を登録し、購入価格や設定賃料、ローン利用額や借入金利などの投資プランを入力すれば、特定の物件を簡単に分析できます。
亀岡 必要な情報さえ打ち込めば会社に入ったばかりの新人でも使えるということですか。
巻口 まさにそこがメリットになります。経験や勘に頼ることなく、不動産の価値を顧客に提示できます。『Gate.(ゲイト)』というサービスで、投資分析に必要なレポートを自動作成したり、投資物件サイトから条件の合う物件の情報を自動収集するプランなどを用意しています。『Gate.』を自社システムとして利用できるOEM提供も行っており、大手不動産会社や金融機関を中心に約60社の導入実績があります。個人の投資家向けにもサービスを提供していますが、「不動産投資でだまされないように」という思いがあります。信用が生まれれば不動産業界の地位が上げられると思っています。
リーウェイズ
巻口 成憲 社長
1971年8月13日生まれ。新潟市出身。不動産デベロッパーに入社して販売営業に携わったのち、財務経理業務の責任者として自社内の基幹システムを開発。その後コンサルティング会社勤務、MBA取得などを経て2005年、投資用マンション販売のリズム設立時に取締役CFOとして参画。2014年にリーウェイズを設立し代表取締役CEOに就任。趣味はサックス。
- リーウェイズ
- 本社所在地 : 東京都渋谷区渋谷2―6―12 ベルデ青山5階
- 設立 : 2014年 資本金 : 5億994万8000円
- 事業内容 : 海外不動産の売買、賃貸、管理およびその仲介ならびに保有、運用インターネットおよびコンピューターなどの情報処理端末機器を利用した情報処理サービス業務、インターネットなどのネットワークシステムを利用した通信販売業不動産、資産運用のコンサルティング業務
経済評論家 亀岡 大郎 氏
大正15年京城生まれ。新大阪新聞経済部長を経て、経済評論家となる。文藝春秋、サンデー毎日など一流紙で、経済・財界問題を中心に、精力的な活動を続ける一方で「自動車戦争」「ゲリラ商法」「IBMの人事管理」などベストセラー多数。