新型コロナウイルス禍で事業者の撤退が続いた民泊事業だが、国内外ともに需要が急増しているとの声が上がる。取材では、予約者の外国人比率の高まりやコロナ禍での国内の民泊需要の変化などが聞かれた。
入国制限緩和で外国人利用増
外国籍予約7割
政府の入国制限緩和で外国人の民泊予約が回復傾向にある。10月11日からのさらなる入国制限緩和では、コロナ感染が疑われる人を除いたすべての帰国・入国者に、原則入国時検査をしないこと、入国後の待機期間や公共交通機関不使用を求めないこととなった。
簡易宿泊所を含む民泊施設を約200戸運営する「faminect(ファミネクト)」を展開するファミリアリンク(神奈川県川崎市)の柏木祐介社長は「売り上げは2021年11月と比べて、22年の11月は18日間で196%と約2倍になっている」と話す。同社は首都圏を中心に事業を展開。
特に伸びているのが外国人観光客の予約だ。予約件数の割合は、22年の8~9月には、日本国籍85%に対し外国籍が15%ほどだったが、11月は50%にまで高まっている。
「12月の予約は11月18日時点で日本国籍30%、外国籍70%と逆転した。一概には言えないが、10月の入国制限緩和をきっかけに外国人観光客の割合が増加傾向にあると感じる」(柏木社長)
外国人利用者の国籍の割合にもコロナ禍前との変化がみられる。
11月には、予約件数全体の10%を米国が占めた。そのあとにシンガポール、韓国と続く。以前は予約の20~30%を占めていた中国人の予約は0.5%とまだ少ない。
非接触で国内の需要伸長
コロナ禍前は運営する物件の予約件数のうち8割強は外国籍だったが、今後は以前よりも日本人の比率が高まると考えられる。特にコロナ禍では基本的に無人施設であり人と接触しない点が注目され、日本人からの需要が高まった。
ファミリアリンク
神奈川県川崎市
柏木祐介社長(37)
補助金が後押し
東京23区を中心に225戸の民泊を運営するUnito(ユニット:東京都千代田区)の近藤佑太朗社長は「『全国旅行支援』と10月の入国制限緩和の影響で、予約件数は、9月と比べ11月は2割上昇している」と話す。
同社の運営する民泊物件の所在地は7割を東京都が占める。特に、渋谷区、新宿区、港区、墨田区、千代田区、台東区に集中している。
都内に立地する物件の22年10月の稼働率は8割を超えた。22年3月と比べ、2割高まった。
国内からの利用者は全国旅行支援の影響を受け、予約件数が22年9月に比べ11月では15%上昇した。
稼働率が上昇し、1室あたりの単価上昇につながっている。
「2、3月ごろには1泊9000円だったのが10月には1万5000円となった。国内からの予約は、9月後半から一気に予約が入った」(近藤社長)
全国旅行支援を使った国内旅行者は、東京近隣の関東圏からが中心だ。20~40代前半の利用者が多く、人数は2人利用が最多となっている。
現在の国内利用者の属性は出張で利用するビジネス顧客が3割、旅行利用が3割、旅行外利用が2割、その他が1割だ。
「今後も物件は政令指定都市などの都心7割、観光エリア3割の比率で増やしていく。23年の7月までに370戸、25年末までに1500戸まで戸数拡大する計画だ」(近藤社長)
高級路線に注力
宿泊費が1泊3~4万円と通常の5倍ほどの高級民泊の運営に引き続き力を入れていく。現在は国内出張の宿泊先として管理職クラスのビジネスマンなどの利用が多いが、今後は特に海外富裕層からの長期休暇での利用増加を狙いたい。
Unito(ユニット)
東京都千代田区
近藤佑太朗社長(28)
(舘野)
(2022年12月12日20面に掲載)