YKGホールディングス、みなし仮設制度に課題
平成最悪の豪雨災害となった西日本豪雨。2018年7月の発生から今年で2年が経過した。被害の大きかった岡山県内では、賃貸物件の空室を県が借り上げ、被災者に無償提供するみなし仮設住宅の制度が今年で期限を迎えた。約3400戸の管理物件のうち600戸をみなし仮設住宅として提供したYKGホールディングス(岡山県倉敷市)では、被災者の一部は制度の延長により依然として入居を続けているものの、徐々に通常の生活を取り戻しつつある。
一連の災害対応から同社が得た教訓は2つ。被害直後に入居者に提供するみなし仮設住宅を事前に把握しておくこと。次に、引っ越し先の物件で生活する上での注意点を整理しておくことだ。「この2年間を振り返ると、災害発生前の平時に決めておくべき事項が多いと実感した」と澤井栄二取締役は話す。
例えば今回のみなし仮設住宅でも、県からの要請が入ってから提供する物件の確保に動いたため、被災者が入居し始めたのは災害発生時から3週間後だった。緊急時に提供する物件を事前に指定していれば、最短1週間ほどで入居ができていたという。
また、契約後に入居者から物件に関するクレームや、近隣住民との騒音問題に発展することも多く見られた。みなし仮設住宅は主に空室を提供しているため、築古の物件もある。これまで持ち家に住んでいた被災者にとって、物件の質の低さがストレスとなるケースも多々あった。契約の段階で入居者に対して物件の注意説明を徹底していれば、対応件数を大幅に削減できた問題だ。
「今回経験した西日本豪雨のように、大規模の災害が発生した際に起こりえる事態に対応するための事前策の制定が今後は必要になる」と澤井取締役。管理会社単体でできることは限られているものの、各不動産業者が加盟する協会などで話し合い、非常時の動きを共有していくことで、迅速な対応が可能となる。
ケイアイホーム、入居者の防災意識高める
契約時に被災状況の説明徹底
岡山県・広島県を中心に賃貸事業を行うケイアイホーム(広島市)では、災害発生直後、管理物件287戸をみなし仮設住宅として提供した。現在でも、16世帯が入居を続けている。
未曾有の災害を経験し、同社が最も注力したのが、被害状況を詳しく知らずに新たに流入してくる新規入居者に対し、地域の災害リスクを伝えることだ。それにより、災害に対する意識を高めてもらうことが狙いだ。
「豪雨で被害のあった物件に関しては、入居者への重要事項説明の際に被害状況を詳しく伝えるようにしている」と渡邊晃司部長は話す。岡山県外からの転勤で来る入居者は、当時の被害について詳しく知らないケースも多い。そのため、入居する物件が、床上何㎝程度浸水したなどの災害における説明を徹底している。また、豪雨により被害のあったエリアに関係なく、同社で部屋探しをする場合は、ハザードマップで危険エリアを共有しながら物件の提案を行っているという。
こうした取り組みを徹底することで住民に対しての風化防止に加えて、社内でも経験を引き継げるような体制にしている。いつ来るとも知れない自然災害を、発生直後の短期的な措置だけではなく、長期の視点で対応できるようにしている。