コンテナボックスやトランクルームの運営を行うエリアリンク(東京都千代田区)の社長に、3月に就任したのが鈴木貴佳氏だ。社内に蓄積したデータを生かした出店の拡大を進め、2026年度に運営物件数14万室を目指す。
小型物件の展開を加速
売上高208億円 経常利益率18%
3月28日にトップに就任した鈴木社長は「データが命。そのためにお金も手間も時間もかけていく。運営する拠点の情報を集約して分析し、勝率100%に近い物件展開を進めていきたい」と話す。
エリアリンクはコンテナボックスやトランクルームといった収納スペースを全国で9万8581室運営する(22年12月末時点)。
22年12月期の売上高は208億7804万円と、1.5%の増収。経常利益は24.9%増の37億5860万円だった。経常利益率は21年12月期の14.6%から、3.4ポイント上昇し、18%となった。
同社の主軸事業は全体の売り上げの約78%を占める、コンテナボックスやトランクルーム運営・販売の「ストレージ事業」だ。
利益増の要因として鈴木社長は「既存物件の稼働率が高まっていることが大きい。3月末時点で平均90.4%になっている」と話す。運営物件の稼働率は、22年12月末時点で過去最高の89.36%となった。21年12月末と比較し、1年で3.5ポイント上昇した。23年に入ってからも高稼働を維持する。
利益率を高めるための施策として、21年ごろから、1拠点30室以内の小規模な物件企画を軸にした。小型の物件を広いエリアにたくさん出店していく方針に変えた。それ以前は100室以上の規模の物件も手がけ、新規拠点の平均室数は40室ほどだった。直近の3年間の新規出店分は、平均室数が29室ほどになった。
「物件の規模を小さくしたことにより、満室にするまでの期間短縮につなげた。従来は大規模な物件だと安定稼働までに2〜3年ほどかかっていたのが、小規模物件では、稼働率80〜90%までにいくのに10〜11カ月ほど。出店後、損益分岐点を超えるのが半年ほどになった」(鈴木社長)
物件の小規模化で満室稼働までにかかる時間を短縮。早期の収益化を行うことで、物件の開拓を並行しても経営の負荷にならないようにした。
地方都市に商機 自社所有を拡大
同社の事業モデルは、地主から土地を借り、その上にコンテナボックスやトランクルームを建て運営を行う。運営物件のうち、コンテナボックスが80%、トランクルームが20%となる。全体の運営数のうち、建物部分を自社所有するのが45%、投資家に販売するのが45%、地主の土地活用案件が10%程度だという。
エリアリンクの運営するコンテナボックス
現在の新規出店分は、コンテナ部分の自社所有・自社運営スキームのみだ。20年に従来「器具・備品」扱いだったコンテナを「建物」扱いにするよう当局からの見解が示された。この見解は同社と異なるもので、商品を購入する投資家側の課税の繰延におけるメリットが失われることから、投資家への販売から自社所有へとシフトした。
新規出店数は、22年度実績が2915室だったが、23年度に4700室、24年度に1万400室を計画する。「地方に拡大の余地がある。普及の進んでいない関西エリアや、札幌市、仙台市、福岡市といった地方の大都市での開設を進める。稼働率の高い東京でも物件を増やしていきたい」(鈴木社長)
矢野経済研究所の調査によると、国内のコンテナボックスやトランクルームの市場規模は60万室ほどで、人口に対する利用率は1%ほどだという。対して、米国の利用率は20%。人口が減少する局面にあっても、需要の掘り起こしによって、マーケットを広げていけると鈴木社長は見る。
利用者の7割は個人だ。新型コロナウイルス下で在宅ワークになり、荷物を家の外に置きたいという需要が出てきた。加えて、住宅価格の高騰で購入できず、現在の自宅に住み続けるため、家を広く使いたいと利用する層が目立つという。
社内データ整備 入社12年でトップ
鈴木社長は、東京理科大学理工学部土木工学科を卒業後、創業者の林尚道会長との同窓の縁もあり、エリアリンクへの入社を決めた。
入社後はリーシングを担当する部署に配属となった。大学を2年留年し、「2年遅れ」という焦りと「早く力を付け、結果を出したい」という思いのあった鈴木社長は、がむしゃらに働き、結果を出した。新しい取り組みを考え、社内改善を行ってきたという。特に力を入れたのが情報管理だった。当時は、ホームページの物件情報に不足があるような状態で、データもばらばらに管理されていた。
「これからはウェブマーケティングの時代」そう考えていた鈴木社長は、ウェブに掲載する物件情報をひたすら整備した。その後、リスティング広告やSEOなどにも注力するなどし、募集施策もウェブを中心に行うようにした。専任のチームを作って、情報を集約・整理し、データ活用のための素地を作ってきた。
社内で蓄積した情報は、リーシングだけでなく、物件の出店の際にも活用。新規エリアへの出店の際には、傾向が類似したエリアの情報や、人口・世帯収入、運営物件の賃料などのデータを分析し、それを基に事業化を判断する。
「昔はスタッフの感覚で出店を決めており、勝率は4割ほどだった。現在は、データのおかげでスタッフの主観が入らない。新規出店の9割は想定通りの事業ができている」(鈴木社長)
こういった業務改善の取り組みなどで実績を上げ、入社5年で取締役に就任。常務、専務を経て、入社12年、37歳の若さで社長に就任した。
15年からはセールスフォースを導入。コンサルティング企業にも入ってもらい、さらにデータ活用の精度を高めていく。
「トップダウンでは限界がある。人によって、いいところと悪いところがあることを踏まえ、そのひとが最大限のパワーを発揮するにはどうしたらいいかを考えること。それが、会社の成長につながると考えている」(鈴木社長)
収納スペースの運営数は23年に10万室、29年に20万室を目指す。
(河内)
(2023年6月5日7面に掲載)





