全国賃貸住宅新聞社が主催する「賃貸住宅フェア2023」の注目セミナーをピックアップ。今回は、高齢入居者の受け入れをテーマにした座談会に、モデレーターやパネリストとして登壇する3社の取り組みを紹介する。
管理規模別の先進事例
65歳超専門に支援
ポータルサイト「R65不動産」を運営するR65(東京都杉並区)は、65歳以上の部屋探しを専門に支援する。
R65不動産へ物件情報の掲載を行う不動産会社は、全国に40社(6月末時点)。32年までには全国の不動産会社6000社との提携を目指す。
同社は、ポータルサイトの運営のほか、19年からは電気使用量を計測することで高齢者を見守るサービス「R65あんしん見守りパック」の提供を開始。高齢入居者の孤独死防止のサービスとして、提供開始から約4年で利用実績は約500件に上る。
同社は65歳以上の部屋探し専門の不動産会社として16年に設立。山本遼社長は、新卒で入社した大手不動産会社時代に、80代の顧客の部屋探しを行った経験を持つ。その際に感じた課題意識が独立の背景にある。山本社長は「最終的には、R65不動産がなくとも、高齢者があたり前に部屋を借りることができる状況をつくっていきたい」とコメントした。
R65
東京都杉並区
山本遼社長(33)
孤独死を未然防止
愛知県の地場大手管理会社のニッショー(愛知県名古屋市)は、14年から高齢者の入居受け入れに取り組む。管理物件での孤独死の未然防止を目的に、高齢者向け見守りサービス「シニアライフサポート」を提供し、加入を入居の条件に定める。利用実績は累計720件に上る。
シニアライフサポートの導入対象となる物件は、管理物件および専任媒介契約を結ぶ物件が中心。2月末時点で、同サービスの対象としてオーナーに承諾が取れている管理物件は3000棟にまで増えた。
同サービスは、電話を活用して日々の見守りを行う。毎日決まった時間に、高齢入居者宅に電話連絡をし、体調に関する質問を自動音声で流す仕組みだ。電話での安否確認後、高齢入居者の親族の元にメールで通知が届く流れとなる。
高齢入居希望者は、家賃と別で同サービスの契約を行うが、65歳以上は任意、70歳以上は必須条件に定め、高齢者の部屋探しの円滑化に努める。
ニッショー
愛知県名古屋市
佐々木靖也 営業本部副本部長(54)
食堂利用に反響
管理戸数1800戸の東郊住宅社(神奈川県相模原市)では、運営する入居者向け食堂が高齢者からも反響を呼び、入居に至っている。管理物件における60歳以上の入居者は16.5%を占める(3月末時点)
同社は、JR横浜線淵野辺駅を中心に半径5km圏内を管理エリアとする、地域密着型の不動産会社だ。空室対策として、15年から入居者向け食堂「トーコーキッチン」を運営し、差別化を図る。同食堂は淵野辺駅から徒歩2分に立ち、入居者は徒歩や自転車で訪れることができる。
「食事付き」が付加価値となり、単身暮らしのアクティブシニア層を中心とした高齢入居者を獲得している。
東郊住宅社
神奈川県相模原市
池田峰社長(50)
7月19日(水)13時10分~14時10分
東京ビッグサイト 西1・2ホール Z-5会場にて
(2023年7月17日20面に掲載)