エアコン不具合、7月に急増【設備故障に備える 保証・交換サービス】
CAPCO AGENCY(カプコエージェンシー),東京電力エナジーパートナー,TEPCOi(テプコ・アイ)-フロンティアズ,アレップス,東急リバブル,大問屋,KDサービス,ハートリビングサポート,Realize(リアライズ)
商品|2023年08月30日
暑い季節に増えるのが、エアコンの不調による入居者からの問い合わせだ。2020年4月の民法改正以降、住宅設備の不具合が家賃減額につながる可能性が出てきたことから、対策への関心は高まっている。ここでは設備トラブルの対策として役立つサービスを取り上げる。
在庫保有で復旧作業迅速に
交換前提で訪問 入居者の安全優先
間もなく8月が終わりを迎えるが、連日の真夏日にエアコンのフル稼働はしばらく続きそうだ。暑い時期に増えるのが設備トラブル、とりわけエアコンの不具合に関する相談である。
「例年6月以降、エアコンをはじめとした設備に関する問い合わせが急増する」と話すのは、設備保証サービスを手がけるCAPCO AGENCY(カプコエージェンシー:愛知県名古屋市)の佐藤稔三執行役員だ。4月に10件、5月に15件程度だった問い合わせが、6月になると30件、7月には80件に上った。「年度の変わり目に転居して初めて迎える夏に、エアコンの不調を訴える入電が増える」(佐藤執行役員)
同社では専有部の設備トラブルに備える「安心設備保証」を13年4月より提供しており、23年7月末時点で約1万9000件の利用がある。エアコンのほか、給湯器、換気扇、インターホンの不具合が発生した際に、部品・本体交換の手配および施工をワンストップで行い、動作保証をするサービスだ。1戸あたり月額1000円(税込み)で利用でき、オプションで温水洗浄便座や浴室乾燥機などの保証を付与することも可能となる。
特長は在庫の保有により実現する、交換工事を前提にしたスピード感のある対応だ。不具合の状況を現地で確認してから対応を検討していると時間がかかる。同社では訪問日程を調整したのち、エアコンの本体を持参して交換工事を実施。まずは設備を使える状態に戻すことで、入居者の健康上の安全確保や不満解消を優先する。
対応エリアは全国。「物価高の影響からか、23年度は保証サービスへの問い合わせが例年の4~5倍ほど入っている」(佐藤執行役員)
28種類のプラン 修理回数は無制限
東京電力エナジーパートナー(東京都中央区)の子会社であるTEPCOi(テプコ・アイ)-フロンティアズ(東京都千代田区)は、19年4月より「TEPCOi-フロンティアズ住宅設備機器保証」を提供している。
給湯器やエアコン、コンロ、温水洗浄暖房便座など計7種類の設備を組み合わせた28種類の基本プランを用意する。基本プランに加え、分譲住宅で多いビルトイン型の食器洗い乾燥機をオプションで追加できるサービスも23年7月からスタートした。
保証期間は最長20年。1設備あたり10万円(税込み)までに相当する修理・交換役務が範囲で、修理回数は無制限となる。管理会社と契約を結び、共同保証事業体としてオーナーにサービス提供を行う。
管理会社の要望に応じて、故障時のコールセンター業務や修理・交換業務などを請け負うことも可能だ。オーナーへの提案のフォローとして、管理会社にはサービスに関する研修会や営業資料の作成など、営業担当者のサポートも無料で行う。
これまでアレップス(同)や東急リバブル(東京都渋谷区)などでの導入実績がある。
江島健二執行役員は「設備保証サービスの提供の有無が管理委託の選定基準になる時代が近い将来やってくる。管理受託営業の武器として活用できるよう、付帯サービスの拡充も進めており、原状回復費用の補償サービスも1月から提供している」と語る。
全国に54店舗 給湯器の在庫豊富
給湯器の交換工事を手がける大問屋(東京都大田区)では、給湯器の在庫を豊富に抱えてトラブル時の交換需要に備えている。
民法改正による住宅設備トラブルへの関心の高まりに加え、新型コロナウイルス禍での生産拠点の閉鎖が重なり、ここ数年は住宅設備の不具合が発生しても早急に復旧できない状況が続いた。「そのような経験をした家主や管理会社から当社への問い合わせが増えている」と林翔吾副社長は話す。
給湯器の場合、10月から2月にかけて交換需要が伸びる傾向にある。商品や職人が確保できないと、春先まで交換工事が実施できないケースも出てくる。
そこで同社は給湯器の在庫を多く確保し、早急な工事に対応。全国主要エリアに54店舗を構え、22年度は年間で約2万9000件の工事を受注した。そのうちの2割が賃貸住宅だ。
賃貸住宅の場合、物件情報や設備の品番などを登録しておくことで、不具合発生時に部屋番号さえわかれば迅速な対応をすることが可能となる。各拠点の営業担当者が状況確認や見積もり提示、施工まで一貫して担うケースが多く、管理会社にとっては手離れがいい。「働き方改革を推進する大手企業からも引き合いが増えている」(林副社長)
150人の技術者在籍 施工に10年保証
住宅設備の販売と交換工事を併せて提供しているKDサービス(東京都渋谷区)では7月、エアコンの不具合に関する問い合わせが1000件に上った。そのうちの半数が賃貸住宅における案件だという。「夏はエアコン、冬は給湯器の在庫に余裕を持つようにして、入居者ができるだけ早く元の生活に戻れるように対応することを心がけている」と吉田正弘社長は話す。
同社は住宅設備の販売に加え、工事日程の調整から見積もり作成までインターネット上で完結するサービスモデルを特長とする。賃貸住宅の入居者向けに専用ダイヤルを用意し、状況の聞き取りから対応。管理会社は、KDサービスが見積もった復旧にかかる費用をオーナーに確認するだけだ。
22年10月からは、実施した工事と製品に対して10年間保証するサービスも開始しており、住宅設備のトラブルに関する迅速な対応と品質の担保を訴求している。23年7月度において、賃貸住宅に限定した工事実施件数は700件超だった。
特に交換工事の依頼件数が多く緊急性の高いエアコンと給湯器については、在庫の保有能力の強化に積極的だ。関東エリアの物流拠点としては、22年7月に神奈川県横浜市、23年3月に埼玉県川口市でそれぞれ施設の拡張移転を実施。6月には千葉県船橋市に新規開設を済ませた。各施設は営業所も兼ねており、約150人の多能工技術者が問い合わせ対応から施工までを一貫して手がけている。
ハートリビングサポート、3日以内を目安に対応
契約管理会社1000社超
住宅設備機器の修理・交換を手がけるハートリビングサポート(東京都大田区)は、賃貸住宅の給湯器・エアコンなど住宅設備機器の修理・交換を全国で行っている。サービス提供先の管理会社は1000社を超える。最も対応件数が多いのはエアコン交換で、2022年には全国で5000台以上を交換した。
修理・交換依頼は24時間365日受け付ける。受け付けから3日以内での対応を目安にしており、関東エリアでは22年に3日以内対応率95%を達成。ほかのエリアでも、おおむね3日以内での対応を行っている。
北海道から沖縄県まで、全国に13カ所の営業所を構え、エリアごとに専属の職人や協力事業者を抱えることで素早い修理・交換対応を実現。またエアコンや給湯器の在庫も豊富にストックしている。東京都には大型の物流センターを持ち、エアコンは約500台の在庫がある。給湯器交換の依頼が多い大阪営業所では、22年の給湯器不足の際に、代替機を一時的に提供するという柔軟な対応も行った。
協力事業者とのコミュニケーションにも気を配る。各エリアで年に1回以上は協力事業者との交流会である「業者会」を行っている。施工技術などの情報共有ができるため、協力事業者に好評だという。
22年2月には、女性の雇用促進や建物管理業務の研修などを行う関係会社Realize(リアライズ:神奈川県横浜市)も立ち上げた。同社との連携で、鍵交換や入居前点検といった賃貸住宅管理の周辺業務にも関わりを深める。ハートリビングサポートの中川雅文社長は「入居前点検などで建物管理と接点を増やすことで、設備故障の予防にもつなげていく」と話す。
ハートリビングサポート
東京都大田区
中川雅文社長(60)
(2023年8月28日8面に掲載)