コロナ禍で補助金を利用しIT投資をした会社は少なくないと思います。CPM®の交流の中で、考え方が参考になる様子があり、本記事を寄稿します。
当社は兵庫県芦屋市にある創業25年の地場不動産会社です。私は父の経営する当社に他業界より2013年に参画しました。
このコロナ禍前後で業務改革が進み、直近では完全週休2日の定時退社、月次会計も翌月2日締めとなりました。しかし、入社当初は高額なシステムを入れて、2年後にやめるという失敗もしています。
①不動産売り上げをつくるIT投資は存在しない
不動産経営者の方は営業力が高い人が多いです。そのためか、IT投資判断において図1の「もうかりそう」な売り上げシステムを優先導入しがちです。
そして、システムに業務を合わせるように現場に要求します。この考え方での失敗事例は多く、私も顧客管理システム導入して、大失敗しました。
見落としているのは、「不動産業」は「人」を介さずに売り上げが上がることが無い業態です。楽天(東京都世田谷区)やアマゾン(東京都目黒区)のようにクリック全自動で売り上げは上がりません。
そのため、不動産の売り上げ訴求システムはあくまで「集客」や「顧客管理」の営業補佐にほぼ分類が可能です。
②業務プロセス改善は3パターンしかない
さて、IT投資で実現すべき成果は「売り上げ増と人員増が比例しない効率化」です。
費用対効果は売り上げ増より無駄の削減に視点を変えましょう。部下よりIT投資を提案された場合、図2の3パターンのうち、どれに当たるのか、そしてどの組み合わせなのか、それを確認することで失敗を防ぐことが可能です。
例えば当社ではチャットソフトを導入しています。管理業では「確認」のやりとりの数が桁違いです。これがメールだと毎回「何々さま」と「よろしくお願いします」と書き、相手が読んでいないと思っていたら「確認しましたか?」とフォローの電話。メールでは必須の作業もチャットでの「既読」機能で解消でき、頭書き不要で要件を記載できます。
結果、プロセス短縮化と、確認作業という滞留時間がなくなり、プロセスが1個になっています。
③滞留時間を減らせ
図2の三つのうち、実はもっとも効果があるのは「滞留時間の削減」です。直近ではオーナーへもチャットソフトの参加を推進しています。今まではオーナーには電話、見積書はメール送付、確認の電話の流れだったのが、クレーム写真を携帯で即時送信、見積書をPDFで送る。そして何より、管理担当者よりオーナーへの電話がつながるまで何度も折り返しを待たなくてよくなりました。
もちろん重要なことは電話連絡しますが、既読がついたら電話フォローとすることで忙しいオーナーは翌日連絡として折り返しを待たず帰ることが可能となります。
また社内情報共有時間ロスも見直す必要があります。当社はクラウド型共有システムを導入し、クレーム案件の社内報告時間をなくしました。
「売り上げ」より「無駄時間削減」を優先した結果、営業時間の増加が実現できたのです。
このコロナ禍で変わらないと生き残れない世の中になったと感じます。反面チャンスだとも感じます。金ばかりかかると考えず、果敢に決断し、失敗させる度量をもって臨んでいただければと願います。
【執筆者】
アシスト芦屋
新谷有宏代表取締役
CCIM® 2020年会長、IREM 本部理事・西日本支部副支部長
2013年に父の経営するアシスト芦屋に入社。17年CPM®取得、18年CCIM®取得。21年よりアシスト芦屋代表取締役に就任。
(2021年1月25日15面に掲載)