コロナ禍の影響は?エリアルポ~熊本編~

コスギ不動産, ミリーヴ, E-Life(イーライフ)不動産, トヨオカ地建, 中村不動産開発

データ|2021年10月12日

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 2016年4月の震災から5年がたち、住宅の建築やJR鹿児島本線「熊本」駅周辺の再開発も進む熊本県。震災からの復興は一段落しているようだが、新型コロナウイルス下でどのような影響を受けているのか。熊本県の賃貸市況をレポートする。

引っ越し控えで八代市では仲介2割減

≪熊本県の人口動態≫
政令指定都市の熊本市があり九州で2番目に人口が多い熊本県。人口は9月1日時点で172万6187人。178万6170人だった17年の国勢調査時から5万9983人減少。世帯数は9月1日時点で73万5063世帯と、70万4730世帯だった17年の国勢調査時から3万333世帯増加。

≪熊本市メモ≫
 熊本市は、9月1日時点で人口73万8089人。74万822人だった17年の国勢調査時から微減。世帯数は9月1日時点で33万3883世帯。31万5456世帯だった17年の国勢調査時と比べ1万8427世帯増加。再開発の動きとして、JR熊本駅に直結した9階建ての商業施設アミュプラザくまもとが4月にオープン。

コスギ不動産、Iターン契約ニーズ賃貸仲介1割増

 1万7000戸を管理するコスギ不動産(熊本市)は、新型コロナウイルス下で転勤の保留や住宅購入による住み替えが減り、20年の退去者が19年比で1割減った。賃貸仲介の年間件数に関しては、県外からIターンで転職する人の契約が伸び1割増えている。

 入居率は熊本地震直後で99%まで上昇。その後、みなし仮設住宅として貸していた管理物件の入居者が持ち家に住み替える動きがあり入居率は現在92%。震災前の91%に戻りつつある。

 外出自粛の影響により、インターネットで内見する物件を決める顧客が以前にも増して8割に上った。営業スタッフが自社管理物件の提案を行っても、受け入れる顧客は限定的であるため、成約件数のうち約2割が他社の管理物件だという。PM事業部の友野直寛次長は「賃貸物件の供給が足りなかった震災直後は、賃貸仲介のほとんどが自社管理物件への契約だった。当時と比べると、コロナ下では他社管理物件の客付け比率が増えてきている」と語る。

 管理物件の平均家賃は5万~6万円だ。単身者向けが6割と半数以上を占めており、20~40㎡のワンルームや1LDKが目立つ。賃貸住宅が飽和するエリアで物件の競争力を高めるために、21年からはリノベーション事業に注力し始めた。本腰を入れ始めて3カ月間で30件以上の改修案件を受注している。

ミリーヴ、12月に新店舗開設コロナ下に拠点増加

 グループで約2万5000戸を管理し、7628件を賃貸仲介するミリーヴ(熊本市)では、コロナ下で授業がリモートになり実家に戻る大学生の退去や、収入が減少した飲食店従業員が市内の中心部から離れた物件に住み替える動きもあったようだ。

 熊本大学などの学生ではオンライン授業を理由に退去した案件が20~30件ほどあったという。また、熊本中心部では収入減少で住み替えた案件が40~50件出てきた。

 同社のメーン商圏は熊本市内で、管理物件の7割が単身向けだ。家賃は25~30㎡のワンルームや1Kで4万5000円。40㎡の1LDKで6万5000円が相場となる。

 管理エリアでは新築の開発が進んでおり、差別化を図るべく同社では自社開発・販売する新築の細かな設備にこだわる。スマートフォンを置けるトイレットペーパーホルダー、ロボット掃除機を充電するクローゼットのコンセント、買い物袋をかけることができる玄関ドアのフックなどをしつらえて物件の競争力を高めている。

 4月には14店舗目となる仲介店舗「アパマンショップ熊本駅店」をオープン。12月には県内で15店舗目を出店する予定で、コロナ下でも店舗拡大を続けている。

アパマンショップ熊本駅店の外観写真

アミュプラザくまもとに入るアパマンショップ熊本駅店

E-Life不動産、入居率維持も家賃1割下落

 3882戸を管理するE-Life(イーライフ)不動産(熊本市)は、学生や外国人留学生の成約がコロナ下で例年の半数以下に減った。リモート授業の継続や入国制限により、これまでワンルームや1Kに入居していた学生の部屋探しの動きが鈍くなっている。

 管理物件の入居率はコロナ前と変わらず96%を維持している。ただ、賃貸住宅が飽和している熊本市で入居率を維持すべく一時的な対応として、コロナ下では管理物件の家賃を全体的に1割ほど下げた。賃貸営業部の北村陽一課長は「当社では2年間の定期借家契約を結んでいる。相場の賃料など様子を見ながら家賃設定を見直すタイミングを確保してある」と語る。

 同社の商圏は熊本市で、単身向けの管理が5割を占める。

 部屋探しの顧客が物件に求めるニーズの変化はさほどなかった。ただ、一部屋を仕事部屋にするリモートワーク需要もわずかにあったようだ。

 収益不動産に関しては、スルガ銀行問題の影響で、投資家への銀行の融資が厳しい状況がコロナ下でも続いている。「流通する物件が増える一方で、買い手がつかない印象だ」(北村課長)

 飲食店などのテナントは、賃料を下げるために、オフィスや飲食店が並ぶ同市中央区から東区に移転する動きもあった。コロナ下では外出自粛による客足の減少で、売り上げが落ち込むテナントの姿が目立ったようだ。

 

≪八代市メモ≫
 人口が県内第2位の都市である八代市。人口は8月末時点で12万4356人。12万7472人だった17年の国勢調査時から微減。世帯数は8月末時点で、5万6903世帯。4万7972世帯だった17年の国勢調査時から8931世帯増加。九州新幹線や九州自動車道が通り、交通の便が良い。

トヨオカ地建、実需向け取引2割増 被災者が持ち家購入

 1850戸を管理するトヨオカ地建(熊本県八代市)は、コロナ下で年間の賃貸仲介件数が20~30%減少している。外出自粛で結婚などのライフステージの変化による住み替えが減ったことが一因にあるようだ。その一方で、管理物件の退去が減ったこともあり、入居率はコロナ前と変わらず97.5%を維持している。

 管理物件の9割を占める八代市の物件では、コロナが拡大し始めた20年の春から夏にかけては退去が目立っていた。特に、工場勤務の派遣労働者が収入減少により実家に戻る動きが多かったという。

 また、入居者からのクレームは例年より2割多くなった。在宅時間の長期化で入居者が騒音を気にするようになったようだ。無料インターネットに関しては、管理物件の4割でリネクト(熊本市)が提供するサービスを導入しており、通信速度に関する相談はほとんどなかったという。

 同社は八代市で仲介店舗を2店舗展開する。市内の港沿いには、大手企業の工場が並ぶ。もともと田園風景が広がるエリアだが、10年ほど前から大手デベロッパーの賃貸住宅が建つようになった。八代店の西田陽平店長は「市内には似たような間取りの賃貸住宅が供給過多にある」と話す。

田畑の写真

田畑と住宅が広がる八代市

 管理物件は、ファミリー向けが7割、単身向けが3割。賃料は、30㎡前後の1Kで3万円ほど、新築の場合は4万円台後半だ。50~55㎡の2LDKや3DKで6万5000円前後となる。法人や学生の入居者はほとんどなく、部屋探しの顧客の大半は1人暮らしや結婚といったライフステージの変化による地元での住み替えだ。

 実需向け物件の取引に関しては、コロナ下で2割増えた。熊本地震や令和2年7月豪雨で被災し、みなし仮設に住んでいた人たちが自宅を購入する動きが一因として挙げられる。西田店長は「当社でも令和2年7月豪雨で約30世帯にみなし仮設として物件を提供した。被災者が持ち家に戻る時期にあるため、賃貸市況は厳しくなる」とみる。

 年間50戸の賃貸住宅を企画・開発する同社では、他社の物件と差別化を図りながら入居率を維持している。定番のタイプは木造2階建て、1棟あたり6~12戸。ロフト付きの1Kとなる。来春には3棟34戸が竣工を迎える予定だ。

 

≪宇土市メモ≫
 熊本県の中央部に位置する宇土市。有明海に面し、熊本平野の南部にある自然豊かな町。人口は9月30日時点で3万6659人。3万7026人だった17年の国勢調査時から微減。世帯数は9月30日時点で1万5579世帯。

中村不動産開発、戸建て入居率98% 子育て世帯に需要

 1200戸を管理する中村不動産開発(熊本県宇土市)は、管理する戸建て賃貸300戸の入居率がコロナ下で4~5%上昇し98%と好調だ。隣人に子どもの足音などが響いてしまうのを心配する子育て世帯を中心に戸建ての人気が高まっている。

 21年の繁忙期前に入居者を募集していた管理物件の平屋4戸は、すべて竣工前に成約。間取りは3DKで、地元で住み替えるファミリーが入居した。

 一方で、集合住宅は空室が続いている。5月に竣工した木造メゾネットタイプの管理物件3戸は、残り1戸を現在も募集している。繁忙期の募集を逃した点もあるが、「隣人と壁を挟むため、戸建てと比べて騒音を心配する人も少なくない」と中木潤主任は語る。自社サイトでは、閲覧された上位10戸を戸建てが独占するなど、コロナ下では集合住宅に比べ、戸建てや平屋の需要が高まっていることがうかがえる。

木造メゾネットタイプの外観写真

5月に竣工した木造メゾネットタイプ3戸

 外出自粛による在宅時間の長期化で、自宅に快適さを求める部屋探しの顧客が増えたようだ。これまで人気だった2LDKから、3LDK以上の賃貸にファミリーから問い合わせや契約が入るようになるなど、部屋数の多い物件のニーズが高まっている。

 同社の管理エリアは、宇土市と宇城市が中心だ。家賃相場は、40㎡前後の1LDKや2DKで4万5000円、50~60㎡の2LDKで5万5000~6万円。管理するのは、ファミリー向けが7割、単身向けが3割だ。2年ほど前から、農地が宅地に変わるなど、大手デベロッパーによる開発が進んでいるという。中木主任は「宇土市と宇城市は、新築が飽和状態にある」と語る。

 賃貸仲介に関しては、県外からの法人契約が減少するなど、コロナ下で年間10%ほど落ち込んだ。ただ、外出自粛に伴う引っ越し控えもあり、管理物件の退去も減少。入居率は例年並みの94%前後を推移している。

(10月11日8面に掲載)

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