収益物件をバリューアップし再販、売上358億円

エー・ディー・ワークス

インタビュー|2024年06月03日

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エー・ディー・ワークス 東京都千代田区 鈴木俊也社長(59)

鈴木俊也社長「成長と安定の両輪目指す」

 ADワークスグループ(東京都千代田区)で収益不動産の再販を強みとするエー・ディー・ワークス(同)のトップに、鈴木俊也氏が就任した。経営の成長と安定、両輪の実現をテーマに掲げ、ボトムアップ型の会社づくりを推進する。

営利1.8倍に伸長、販売事業が9割

 エー・ディー・ワークスは、主軸事業とする収益不動産再販事業に成長の余地を見出す。並行し、保有物件を増やし、ストック型の収入の確保による経営の安定化も進めていく。

 2023年12月期の売り上げは358億円で、前期の207億円から、1.73倍と大幅に伸ばした。営業利益も前期比1.83倍の13億9373万円と好調だ。

 収益不動産の再販と開発を含めた不動産販売事業が全体の95.4%を占め、残りの4.6%が賃料収入。23年12月期の販売実績は再販が25棟。そのうちレジデンスが5割ほどを占める。

 同社が最大の強みとするのが、経年劣化や市場とのミスマッチにより価値が下がってしまった不動産の商品力を高める再販だ。取得後、必ずバリューアップを行い、数億円の投資をすることもある。取得から販売するまでの平均期間は9~12カ月。価値向上により、大幅な投資をしたにもかかわらず、利回りを変えずに売却できた物件もあるという。違法で世の中に流通しない物件を遵法化することで、市場取引の俎上(そじょう)に載るようにすることもある。

 1月に就任した鈴木社長は、「どちらかというと当社は小さな会社なので、成長一本やりが続いてきた。23年度は、従業員の皆さんに頑張ってもらい、周りのステークホルダーにも支援いただいた関係もあり、今までにないような業績を達成できた。成長一本から、成長と安定との両輪で求めていけるような状況もできてきた」と話す。

仕入れ単価4倍、都心物件増やす

 成長のため、既存事業においては収益不動産の再販の取扱高を増やしていく。

 この5年ほどで、再販物件の1棟あたりの仕入れ単価は約4倍と大型化している。19年3月期では2億7574万円だったのが、23年12月期には10億8939万円になった。それにより、1件あたりの生産性が非常に高くなったという。

 物件の立地を郊外型から都心型にシフト。取り扱うアセットの種類も住宅が中心から、住宅に加え、商業施設、オフィスと幅を広げてきた。

 販売先は、国内外の富裕層や国内の機関投資家。REIT(リート:不動産投資信託)による取得も活況だ。新築価格の高騰とSDGsの観点から、築古物件を購入する動きも出てきた。「再販物件の大型化により顧客層が安定してきた。まだまだ物件を大きくしていく余地がある」(鈴木社長)

 もう一つの成長の柱と考えるのは不動産小口化事業だ。不動産特定共同事業(以下、不特法事業)に基づき任意組合型を組成する。「ARISTO(アリスト)」のシリーズで11件を運用する。23年12月期は50億円分を販売、24年12月期は80億円の販売を見込む。再販事業とは異なる層の個人の投資家に提供する。顧客の間口の広がりにより、成長路線にも寄与すると期待を寄せる。一般社団法人不動産特定共同事業者協議会(東京都千代田区)の活動を通じて、小口化商品のマーケット拡大も併せて目指していく。

ARISTO広尾の外観

小口化商品として提供するARISTO広尾

 事業の安定化においては、中長期で自社運用し、賃料収入を得るストック型事業の比率を高めていく。「金利の上昇局面において、不動産マーケットがどうなるかについて決して楽観視してはいない。厳しい局面を迎えた際の体制づくりをしていく。対策として、しっかり賃料を稼げる賃貸事業やノンアセット事業としてのアセットマネジメントを考えている」(鈴木社長)

新規事業を推進「賃貸の知識糧に」

 鈴木社長は、同社の成長を後押しした大型案件の仕入れや不動産小口化商品を提供する不特法事業をつくり上げた立役者だ。

 日本大学法学部の新聞学科を卒業後、1989年にデベロッパーの旧リクルートコスモスに入社した。入社後3年間は賃貸事業に従事。収益の源泉となる賃料の考え方、賃貸の仕組み、リーシングついて学んだ。「非常に基礎力がついた。当社の賃貸部門の若手にも、賃貸事業を基礎から深く理解することがとても大切と話している」(鈴木社長)

 その後、仲介部門で法人向け、個人向けの双方を担当。並行して取り組んだのが、新規事業だった。コスモスイニシアで不特法事業や不動産投資事業を立ち上げた。

 2015年に、エー・ディー・ワークスに入社した際、新規事業創出の担当部署である事業企画室の室長を任された。といっても同室に在籍するのは鈴木社長1人のみ。そこで、不特法事業や「みんなの投資online(オンライン)」という名のサイト立ち上げ、自然エネルギー事業など、数年で新事業を次々と生み出した。消えた事業もあるが、その中で一番大きく開いたのが不特法事業だった。

 新規事業をつくりつつ、収益を上げることも求められた。リソースが少なくとも利益を出せる比較的大型の物件を新たに取り扱ったことが、現在の仕入れ物件の大型化にもつながった。

会社のあるべき姿を若手社員らが議論

 鈴木社長が会社づくりにおいて重視しているのが「心に灯をともす企業であること」と「全体最適」だ。

 一つ目の「心に灯をともす企業であること」について鈴木社長は「多様性の時代であり、価値観は人それぞれでいいと思っている。そんな中でも自分の大切な価値観のために、一生懸命心に火をともしながら頑張って進んでいけるような集団を目指していきたい」と話す。

 これから10年の会社の姿を描くために23年7月からスタートしたのが「北極星プロジェクト」だ。

 最初に若手から中堅までの社員15人を挙手で集め、10年後、社会的に存在価値のある企業になっていられるか、ステークホルダーとのエンゲージメントをいかに高めていけるかを中心に議論を進めてきた。

 パーパスを定め、現在はミッション・バリューを策定しているところだ。これから社内への浸透やプロジェクトで定めた内容について、特に経営陣がコミットメントしていくよう訴求する。「従業員が、自分たちがどういう会社になりたいか、どういう役割を果たしたいかということをボトムアップで考えていく方式を取った」(鈴木社長)

社内の体制刷新、賃料25%上昇も

 二つ目の「全体最適」については、同社が重視する商品づくりの体制を刷新した。従来は、物件を仕入れた担当者が、商品化の企画から売却までを1人で担当し、属人化していた。鈴木社長が19年に投資不動産事業部の本部長に就任してから、体制を大きく変更。仕入れ部隊、商品部隊、営業部隊の3部門に分けた。

 商品化にあたっては、グループで賃貸管理を行うエー・ディー・パートナーズ(同)の担当者も加えた4部門で集まり、どういう商品にしていくか、どういう販売戦略をとるかを、話し合いで決めるようにした。

 同社の手がけた再販物件の平均の賃料上昇率は、22年度で4.9%、23年度は2.4%。当初計画以上の賃料増額を実現している。22年2月に再生した東京都渋谷区代官山のオフィスは、家賃の坪単価が2万4000円から3万円と25%アップした。

資産運用を支援、デジタル商品検討

 今後の経営目標は単体ではなく、ADワークスグループの策定した中期経営計画の達成に向け、グループ間のシナジーを出していくことだ。

 同社の新たなサービスの方向性としては「資産運用の支援」を視野に入れる。

 不動産クラウドファンディングや不動産のデジタル証券である不動産STO(セキュリティー・トークン・オファリング)などを検討する。事業企画室を復活させ、主力人材を投入。新規事業を模索していく。

 「将来に不安を抱えなくても済む世の中になるような、資産形成を応援できる商品やサービスをわれわれがつくり出していきたい」(鈴木社長)

(2024年6月3日20面に掲載)

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