人と人をつなぐことで、地域の活性化に尽力してきた人がいる。創業68年の老舗賃貸管理会社・北澤商事(東京都足立区)の北澤艶子会長だ。これまでの軌跡と共に、北澤会長が考える賃貸管理事業の在り方について聞いた。
創業70年機にトップ交代予定
受託数5700戸 安定成長続ける
「根差した地域に貢献し、地域を盛り上げること。地元の良さを伝えることが、賃貸管理事業のあるべき姿だと思っています」
こう話すのは、北澤商事の北澤会長だ。顧客からの信用を第一とし、地域に開かれた会社であることを信念とする。
同社は、北澤会長が1956年に創業した。東京都足立区を中心とした賃貸住宅の管理、仲介を行う。管理戸数は2000年ごろが3000〜3500戸程度、10年には4800戸、23年には5700戸と安定して成長を続ける。管理物件の平均入居率は95〜97%を維持している。
北澤会長は、「賃貸管理事業を営むうえで、大きく成長しようとか、たくさんもうけようとかを考えたことはありません。もちろん社業は重要ですが、人に貢献するということが大切です」と話す。
26年に迎える創業70周年を機に、社長交代を予定する。「孫であり、現取締役の北澤龍一が社長に就任する予定です。70年でやっと3代目。家主や入居者からの信用を第一に、今後も安定した経営を行います」(北澤会長)
創業期の商品企画 快適さ重視で人気
知人から「不動産事業をやってみたら」と誘われたことが、北澤会長の長い不動産人生の一歩目となった。「当時、不動産会社は『周旋屋』だとか『千三つ屋』だとか言われるような仕事でした。宅地建物取引士の免許制度もまだない時代でした」(北澤会長)
高度経済成長期で地方から東京都へ出稼ぎに来る人が多く、地主である農家らから「土地を売却しようと思っている」という相談を受けるようになった。土地活用として賃貸住宅の建築を提案し始めた。
住戸の一室を貸し出す貸間が主流だった中で、北澤会長は入居者の住みやすさに注目した商品を企画。トイレやキッチンを専有部内につくり、外廊下で各戸に玄関がある「貸家式アパート」を考案した。賃料は貸間1室とほとんど変わらない金額に設定し、新婚夫婦を中心に人気を博した。農地の利活用として、1棟12戸程度で企画。木造アパートの元祖となる物件を提案し始めた。