商機見出す空き家活用ビジネス ~後編~

ジェクトワン, matsuri technologies(マツリテクノロジーズ), 一般社団法人移住・住みかえ支援機構

企業|2021年12月22日

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 空き家が深刻化し社会的な問題となっている中、SDGsの視点からも空き家を活用したビジネスが注目を集め始めている。空き家活用にビジネスチャンスはあるのか。実際に携わっているトップランナーにビジネスモデルや採算性について聞いた。

利活用で問い合わせが9倍の企業も

ジェクトワン、全国ネットワークを展開

21年の引き合いは992件に

 不動産賃貸業や、リノベーション事業を行うジェクトワン(東京都渋谷区)では16年より空き家活用事業「アキサポ」=図2参照=を開始。21年の実績は12月1日現在で43件。問い合わせ件数は992件と20年度比870%増となり、空き家問題への関心の高まり感じている。21年6月にはアキサポの空き家活用のノウハウを全国の加盟企業に提供するサービス「アキサポネット」を開始し、地方の空き家再生ビジネスにも乗り出した。現時点で9府県12社が加盟している。

 アキサポは首都圏の空き家を対象に、同社が所有者から5〜15年間、物件を借り上げ、地域のニーズに合わせてリノベーションを行い、転貸する事業だ。

 賃貸住宅としてだけでなく、シェアキッチンや店舗、宿泊施設などにも活用されている。空き家所有者にとっては、改修などの費用負担はなく、貸し出し中は家賃を受け取れる。また、一定期間後にはリノベーションが施され、資産価値の向上した物件が手元に残り、賃貸物件として再利用しやすくなるメリットがある。

 同社は所有者より固定資産税程度の家賃で借り上げ、工事費負担額を考慮した転貸料収入と差額収益で初期投資費用を数年かけて回収する。例えば空き家を5万円で7年間借り上げし、500万円のリノベーションを施したうえで、賃料15万円で転貸すれば同社は4年目で初期投資は回収でき、残りの3年で利益を回収することが可能だ。

アキサポ物件の内観写真

アキサポの改修例のアフター(写真上)とビフォー(同下)

 ただし、すべての物件が再生できるわけでなく、実際に同社にて活用できるのは相談された物件の45%程度だという。活用できない物件については売却や解体後、駐車場に運営することを提案している。時には管理を委託されることもある。

 6月から開始したアキサポネットでは同社のアキサポのノウハウを加盟店に提供。現在は首都圏に次いで問い合わせが多い関西エリアを増やすことを目標に戦略的に関西エリアでの加盟店獲得を目指している。現在の加盟店のうちの半数が関西圏の事業者だ。まだ、実際に活用まで至ったのは1件のみだが、工事は5件受注済みだ。

 「まだ、売り上げは全体からすると小さいが、今後の成長性に期待している。空き家活用事業からさまざまなビジネスに発展させられることも考えられるので、今後は10億円、30億円の収益を目指していきたい」と同社の大河幹男社長はコメントした。

ジェクトワン 大河幹男社長の写真

ジェクトワン
東京都渋谷区
大河幹男社長(56)

 

 

matsuri technologies、別荘を民泊で貸し出し 表面利回り10%を確保

利用頻度が少なく、半ば空き家と化している別荘の活用も空き家問題の一つだ。利用されなくなって、廃墟と化している別荘も少なくはない。

 民泊関連の事業を展開するmatsuri technologies(マツリテクノロジーズ:東京都新宿区)は、住宅宿泊事業のライセンスを利用して別荘を活用するサービス「S-villa(エスビラ)」=図5参照=を1月に開始した。

図5 エスビラのビジネスモデル

 S-villaは、既存の別荘をリフォームしたうえで、700室の民泊を運営する同社のノウハウとシステムを利用して貸し出すというもの。ウェブで集客を行い、無人で運営するため、運用コストを抑えることができる点が特徴だ。現在、栃木県那須塩原市で12棟を運営しており、表面利回りは10%超えをキープしている。オーナーにとっては、利用していない期間に賃料収入が得られることに加え、リフォームによって売却時の価格を高められるというメリットがある。

 現在利用中の物件の平均築年数は10〜15年。ウッドデッキや外装の回収が必要なケースも多く、リフォーム費用は500〜700万円がボリュームゾーンとなっている。初期費用を抑えて利用しやすくするために、リフォーム費用を同社が一度負担し、貸し出した賃料の一部から回収する「ゼロ円リノベ」というサービスも用意している。その他、同社が一度買い取り、リフォームしたうえで再度販売するといったケースにも対応している。

S-villa物件の内観写真

S-villaの事例のアフター(写真上)とビフォー(同下)

 宿泊利用者の層は、友人同士で集まりたい20〜30代から小学生以下の子どもを持つ複数のファミリー、家族3世代まで幅広い。平日にはワーケーションでの利用も目立つという。コロナ下にもかかわらず年間稼働率は30〜50%と、住宅宿泊事業には年間180日の利用制限があることを踏まえれば、高い数字になっている。

 21年中には運営数が25棟となる見込み。22年中には100棟を目指す。既に地銀などから引き合いがあり、今後は那須塩原市だけでなく、さまざまなエリアに展開していく計画だ。

 吉田圭汰社長は、「住宅や宿泊施設のトレンドは一定周期で変化するもの。空き家問題を解決するには、さまざまな用途に利用できるフレキシブルな物件と運用体制を整えていくことが重要」と話す。

matsuri technologies 吉田圭汰社長の写真

matsuri technologies
東京都新宿区
吉田圭汰社長(28)

 

 

移住・住みかえ支援機構、活用実績は累計850件

他事業とのシナジー狙う

 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(東京都千代田区)は、「マイホーム借り上げ制度」=図3参照=で、累計で約1500件の利用実績があり、現在は約850件が利用中だ。高齢者の住み替えを促す同制度により、既存住宅の活用を進め、空き家の増加抑制に一役買っている。

図3 マイホーム借り上げ制度のビジネスモデル

 マイホーム借り上げ制度とは、50歳以上のシニアを対象として、家賃保証付きで自宅を借上げ、転貸するというもの。改修費用は家主負担だが、50万円以下で済むケースが42%、50万〜100万円かかるケースが50%と、賃料収入から早急に回収できる範囲に収まるケースが多い。

 家賃保証も付いていることから、1人目の入居者が決定すれば、空室が発生しても、家主は既定の賃料収入が得られる。金額は査定賃料下限の85%が目安で、相場の8〜9割ほど。3年ごとに解約の自由も与えられている。

 一方、入居者は敷金が必要ないうえに、壁紙など自ら一定の改修が可能。また、制度利用時に同機構が耐震性能を審査。十分な性能を担保できる物件のみが対象となっているので、安心して住むことができる。

 利用物件のエリアの分布は首都圏が48%と約半数を占めるが、近畿15%、東海・中部10%、東北・北海道と、中国・四国、九州・沖縄が各5%と、地方での利用も多い。

 95%は戸建て住宅で、平均延べ床面積は114㎡。残り5%のマンションは平均延べ床面積が71㎡とファミリー向け物件が中心。入居率は97〜98%。平均賃料は10万円ほどで、ボリュームゾーンは8万〜15万円となっている。マイホーム借り上げ制度の平均利用年数は6年。

戸建て物件の外観写真

対象物件の95%は戸建て

 利用者の平均年齢は60歳ほどで、50〜60歳未満が36%、60〜70歳未満が33%を占める。70歳以上は、荷物の整理などを自身で行うことが難しいため、15%ほどにとどまっている。また、相続が行われた物件や、後で紹介する「かせるストック」も対象としており、残りの15%ほどは50歳以下が占めている。

 08年からは空き家の発生を未然に防ぐべく、マイホーム借り上げ制度の利用を促進する、かせるストック(正式名称は「移住・住みかえ支援適合住宅」)も用意。これは、同制度に適合する住宅に対して、50歳未満の所有者の制度利用や申請手続きの簡略化といった優遇措置を与えるというもの。条件は耐久・耐震性基準を満たし、長期にわたるメンテナンス体制を備えた新築住宅であること。累計約12万3000件の適合証明書を発行済み。直近1年間では1万7000件を発行しており、利用者は年々増加している。

 大垣専務は「マイホーム借り上げ制度は利用空の物件が1500件ほどあってようやく採算分岐点超える。空き家ビジネスは単体で採算を取ることは難しいが、売却の仲介や会社のブランディングにつながるというシナジー効果を期待できるので、経営的にも十分な価値がある」と話す。

(2021年12月20日5面に掲載)

関連記事▶商機見出す空き家活用ビジネス【[前編][後編]】

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