賃貸業界の記者が選ぶ2021年の10大ニュース、1位はやはりあのニュース!?業法施行で賃貸業界の歴史に残る年に~7位~10位・番外編~

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その他|2021年12月27日

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 2021年の賃貸業界に大きな影響を与えたニュースを編集部がランキング形式で紹介する。新型コロナウイルス禍の長期化で住まいに対する顧客ニーズの多様化や、従業員の働き方という面でも、業界全体にスピード感のある変化が起きた年だ。法律・制度、事件、トレンドなどのカテゴリーから印象深いニュースを振り返る。

7 コロナ禍で多拠点居住サービス需要増

 第7位はコロナ禍で多様化した働き方に合致した多拠点居住サービスの登場だ。テレワークが可能になった会社員からのニーズの増加が顕著になっている。

 多拠点居住サービスとは、料金プランの中で賃貸住宅や別荘、民宿など好きな拠点を選び移動しながら暮らす生活を送ることが可能になるサービスを指す。

 同サービスをけん引するアドレス(東京都千代田区)の「ADDress(アドレス)」と、KabuK Style(カブクスタイル:長崎市)が提供する「HafH(ハフ)」では、共にコロナ禍のテレワーク需要によりサービス利用者が増加したと発表している。

ハフの施設の内観写真

HafHで利用可能な施設の共用部

 ADDressの利用者は20年比で3〜4倍に増加。またHafHの利用者も20年の1年間で19年比8倍となっている。HafHの顧客属性は会社員が45%を占め、19年比で12%増という結果になった。

 コロナ収束以降もテレワークという選択肢を残す企業は少なくないだろう。ライフスタイルに合わせた住まいのニーズの変化は、引き続き目が離せない。

8 残置物処理、委任契約モデル発表

 第8位は残置物処理に関する委任契約モデルの記事だ。新たな制度として業界の関心を集めた。

 国土交通省と法務省が6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表した。高齢入居者が亡くなった際に残置物問題を解決するためのモデル契約条項だ。

 これまで残置物の処分問題に関しては、相続人がいない場合の明確な対応の指針がなかったが、法務省と国土交通省がモデル契約を策定したことで、残置物への対応の方法について業界でも道筋がついたといえる。国としては、モデル契約の活用により、高齢者の賃貸住宅への入居の受け入れを進める狙いがある。

残置物を処理している写真

福島県双葉群双葉町のとある物件にて、残置物を処理する様子

 今回のモデル契約条項を適正に運用することで、訴訟問題にならず、死後の残置物処理を迅速に行える。オーナー、管理会社双方にとって活用のメリットは大きい。

9 火災保険利用の修繕、不正申請で逮捕者

 第9位は、11月掲載のニュースとして記憶が新しい事件記事だ。火災保険を不正利用した賃貸住宅の修繕が問題化し、10月には逮捕者まで出る事態となった。

 同事件は、不動産会社の社長、リフォーム会社の社長と社員の3人が弁護士法違反で警視庁に逮捕された。逮捕の理由は、19年1月16〜28日にかけて、18年の台風24号による災害を原因とする賃貸住宅の修繕のために、保険金申請を3回にわたり家主に代わって行い、報酬を受け取ったことだ。被害レポートの作成といった資料作成には資格は不要だが、代理申請は法律業務に当たるので、弁護士法に抵触したという容疑がかけられている。

国民生活センターに寄せられた火災保険を利用した修繕に関する相談件数の推移グラフ

 家主向けに保険に関するコンサルティングを行う保険ヴィレッジ(東京都豊島区)の斎藤慎治社長は「以前は被害発生から30日以内に保険会社に報告するという暗黙のルールがあったが、5年ごろに起こった保険金不払い問題を機に、時効期限である3年以内であれば、事故の受け付けおよび保険金の請求を容認する方針に保険会社が舵を切ったことが原因の一つ」と指摘する。

 保険金の不正受給は犯罪であることを家主が改めて認識することが重要だ。今後は代理申請だけでなく、虚偽の申請による詐欺容疑で逮捕者が出てくる可能性が高まっている。適正に利用することは賃貸経営の一助になるが、誤用すると、犯罪者になりかねない。家主、管理会社共に正しい知識を持つ必要がある。

10 テレワーク対応物件続々

 第10位は、テレワーク対応物件の開設だ。第7位で触れた多拠点居住ニーズと同様、コロナ禍で働き方の選択肢が広がり、住まいの供給側にも影響を及ぼしている。

 テレワークに対応した物件は、一般賃貸住宅からシェアハウス、民泊まで幅広い。本紙でも、大京(東京都渋谷区)や大成有楽不動産(東京都中央区)など、仕事可能な共有ラウンジを併設した新築物件を竣工するニュースを取り扱った。

 また、MDI(エムディアイ:東京都中央区)では、民泊施設内の個室に、パソコン用デスクやオフィスチェア、ノートパソコン用スタンドなどのテレワークに関する設備を追加。企業から社員のテレワーク利用を前提とした問い合わせも複数寄せられたとした。

 さらに、コミュニティー型の賃貸住宅を展開するグローバルエージェンツ(東京都渋谷区)やシェアハウスを運営する共立メンテナンス(東京都千代田区)でも、共有部とは別でワークスペースを確保した物件を続々展開している。ワークスペースに求める設備は人によって異なるため、個室タイプやミーティングテーブルタイプなど各利用者が仕事や作業に集中しやすい差別化も図っているようだ。

 今後、テレワーカーたちの部屋探しの条件に、ワークスペースが定番化する日は遅くないだろう。

グローバルエージェンツのシェアスペースの写真

グローバルエージェンツの物件。仕事可能なシェアスペース

 

番外編

「専任の宅建士」テレワーク広がる

 宅地建物取引業法における「専任の宅地建物取引士(以下、宅建士)」の要件緩和が7月に完全適用されたことにより、宅建士の働き方の幅が広がった。インターネット環境さえ整えれば、テレワークの勤務も可能になる。

 規制緩和の内容は、事務所以外においての通常勤務が認められたというものだ。従来は事務所への常勤が必須だった。

 22年5月までに予定されている宅建業法改正による電子交付が可能になれば、不動産業界の働き方はさらに広がり、多様な人材の活用も見込めるようになる。

ケネディクス、日本初の不動産STO公募

 不動産運用大手のケネディクス(東京都千代田区)は8月に日本で初の、デジタル証券を発行して資金調達を行う不動産STOの公募を行った。ブロックチェーン技術を活用した新たな不動産投資手法としての可能性を秘める。

 「STO」とは、「セキュリティートークン(ST)」を発行し、資金調達を行う手法。その中でも不動産STOは、セキュリティートークンの裏付け資産を不動産やその権利とする。

 ケネディクスは不動産STOの市場を30年に2兆5000億円にまで広げられるとみており、ゆくゆくは、海外の収益不動産を含む多様な不動産STOも視野に入れる。

高速インターネットニーズ高まる

 本紙が毎年企画する、賃貸住宅における人気設備ランキングでは、興味深いニーズの変化が起きた。

 本紙アンケート結果によると、「コロナ下でニーズが増えた設備」の第2位に高速インターネットがランクイン。1位はインターネット無料、3位は宅配ボックスという結果になった。同結果は社会人のテレワークや学生のオンライン授業の導入によるニーズの変化を受けたもの。

 新潟県に拠点を置く管理会社の信濃土地(新潟市)では、コロナ下で高速インターネットに関する要望が増えたとコメントした。加えて、インターネット無料で入居を決めたものの、実際に使ってみたら速度が遅い、といった入居者からのクレームが寄せられる頻度も増加傾向にあるという。「特に在宅ワークを行う人はインターネットの速度と安定性を気にしているようで、具体的な数値までは問われないものの、6~7割ほどからインターネット環境について聞かれる」(新潟駅南店齋藤聖史店長)と話した。

 デジタル社会において、賃貸住宅に求められるニーズはどう変化していくのか、業界関係者は注視していきたいところだ。

(2021年12月27日4面・5面に掲載)

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