居住支援法人のあんど(千葉県船橋市)は、住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)向けの独自サービス「居住支援付き住宅」を提供する。同サービスは要配慮者の入居中に連絡や訪問などを行うものだ。物件付近の居住支援法人や福祉事業者と連携して、入居者を支える体制をつくり上げている。不動産会社向けに入居中の要配慮者に関する相談サービスも行う予定だ。
外部団体と連携、入居者支える
要配慮者の対応 賃料から費用徴収
あんどは、要配慮者への居住支援と集金代行によって、入居者とオーナー双方が安心できる賃貸住宅を提供する。同社が展開する居住支援付き住宅は、あんどがオーナーから「支援費」を受け取って物件の入居者への生活支援を行うものだ。
あんどが要配慮者から部屋探しの依頼を受けて、オーナーや管理会社に物件の提供を依頼。入居手続きから家賃回収、入居者の困り事の相談受け付けや緊急時の訪問などの生活支援、問い合わせ対応までを担当する。建物管理は管理会社に任せる。
支援費は、あんどが回収した賃料から差し引く形で受け取っている。金額は提供する生活支援の回数や内容により変えているが、最大で月額1万円だ。
あんどには、要配慮者からの入居相談が年間200〜300件入る。相談者の属性で最も多いのは、生活困窮者で25%だ。高齢者が20%、精神障がい者が14%と続く。要配慮者が自ら相談してくることもあれば、行政の福祉課や福祉施設、病院などから相談を受けることもある。
入居に至るのは相談の2割程度。支援なしで入居する人や同社のサブリース物件に入居する人もいるが、6割は居住支援付き住宅に入居する形になる。居住支援付き住宅は、10月20日時点で千葉県・神奈川県・愛知県に約200戸ある。
関係者と情報交換 多面的に見守り
あんどの生活支援の特徴は、入居者に関わる外部団体とチームをつくって対応する点だ。入居時には、入居者の身体や経済の状況、使っている福祉サービスなどをヒアリングした「アセスメントシート」を作成。同シートに記載された地域包括支援センターや介護施設、行政など入居者の生活支援に関わる人たちとあらかじめ連絡をとっておく。
入居中はあんどの社員が「LINE」やSMS(ショートメッセージサービス)、電話などで入居者と連絡をとるほか、関係機関とも情報共有を行う。入居者が利用するデイサービスや訪問介護、福祉作業所の運営事業者などとつながっておくことで、入居者の状況を多面的に把握することができる。
例えば精神障がいがある入居者が住む物件で騒音クレームがあった場合は、本人だけでなくその人が通う福祉作業所にも近況を聞く。ここ数日精神的につらそうにしていたならストレスで騒音を出してしまっている可能性がある一方、普段と変わりなく勤務しているようであれば騒音の原因はほかにあるかもしれないと考えるという。
西澤希和子共同代表は「入居者を支える機関とチームを組んで、入居者を見守っていく。当社から入居者への連絡も単なる安否確認ではなく、体調が悪い人にはその内容を、シングルマザーであれば子育ての悩みなどを聞く。居住支援付き住宅に付帯するのは、きちんと家賃を支払って住み続けてもらうための入居者への伴走支援だ」と話す。
緊急で入居者への訪問が必要になった場合は、物件の近隣エリアで活動する居住支援法人に訪問を依頼する。10月20日時点で10の居住支援法人と提携している。訪問が必要なケースは、入居者が「心身の不調により動けない」といった危険な状態になっている場合や、入居者と連絡がつかなくなってしまった場合などだ。オーナーから受け取る支援費は、あんどと提携居住支援法人とで案分する。
福祉・不動産の協働 BtoBに注力
あんどは、福祉と不動産双方のノウハウを持って居住支援サービスを展開してきた。代表は、障がい福祉サービス業に携わってきた友野剛行氏と、不動産事業を行ってきた西澤氏が共同で務める。部署も、居住支援部・家賃保証部・不動産部・福祉部と、福祉と不動産の両方をカバーする体制をとる。
西澤共同代表は福祉と不動産の連携について「例えば福祉系の居住支援法人が物件を借り上げるケースがある。そうした場合、建物や賃貸借契約に関する知識が不足していることから、知らないうちに法令に違反してしまう可能性もある。信頼できる不動産会社との連携は、居住支援法人がいま最もやるべきことだと思う」と語る。西澤共同代表は居住支援をビジネスとして継続することの重要性を強調する。居住支援を専門に行う法人としては珍しく、法人格も株式会社だ。「支援を継続するために、ビジネスとして成立させる必要がある。社員にも、対価を払ってサービスを受ける顧客に満足してもらうことを意識してもらっている」
今後は居住支援付き住宅をさらに増やすとともに、BtoBサービスの提供に注力していく。同社はすでに、家賃債務保証事業者向けの相談支援サービスを提供している。家賃債務保証の契約者が認知症を患ってトラブルを起こしたり、家賃を支払えなくなった場合に、あんどが入居者にコンタクト。家賃を支払っていく方法を一緒に考えたり、適切な福祉サービスへつないだりすることで、家賃滞納の問題を解決する。2026年中には、管理会社向けにも相談支援サービスを展開していく考えだ。
(2025年12月15日20面に掲載)




