賃貸不動産業界向けコールセンター運営が好調なラストワンマイル(東京都豊島区)は、経営の効率化と積極的なM&A(合併・買収)を推進。2025年8月期の売り上げを前期比31.8%増の155億1041万円とした。営業利益は同22.2%増の11億4974万円で、2期前と比較すると4.5倍に伸ばした。社長就任から3期でV字回復を達成した渡辺誠会長に、その要因と経営方針を聞いた。
就任3期で営業利益4.5倍
賃貸市場に注力 売り上げの6割強
渡辺氏が社長に就任したのは、22年11月だ(24年11月に二名代表制となり、渡辺氏は会長兼CEOに就任)。赤字決算となった22年8月期を終えた直後に経営を引き継いだ。就任初年度の23年度に黒字転換し、続く24、25年度と大幅な収益改善を成した。


主要な事業は三つある。一つ目は、賃貸不動産会社を主な提携先として、新規入居者に電気、ガス、インターネット、宅配水などのライフライン商材を提案・販売するアライアンス事業だ。入居契約の後で、ライフラインに関わる案内を電話で行い、成約に至った場合各サービス事業者から手数料を受け取る。同社の売り上げのうち、80%を占める。さらに、このうち7割が賃貸不動産会社との提携によるものだ。
二つ目は、集合住宅向け無料インターネット事業だ。家主を対象とする直販営業と、不動産会社を提携先とする紹介営業から、全戸一括インターネット設備を導入する。導入先の家主から毎月、あるいは導入時に利用料を受け取る。売り上げに占める比率は10%だ。
三つ目が、賃貸不動産会社、官公庁、飲食店などから問い合わせ対応業務の委託を受けるコンタクトセンター事業。賃貸不動産からは、入居者からの問い合わせ対応を受託し、委託費を受け取る。売り上げに占める比率は5%となる。
どの事業も、賃貸管理会社や賃貸住宅オーナーを主な顧客対象とする。賃貸市場から得る売り上げは6割を超える。
経済合理性で判断 全社員が基準共有
経営再建にあたり、会議、書類、経理、契約、営業トークなどあらゆる基準を再定義し、再現性のある仕組みづくりを徹底した。そのために「経営論」という冊子をつくり、全従業員に配布した。「やり方」ではなく「考え方」を伝え、全社員が経済合理性に基づく判断をす文化を醸成した。
社長就任時に全従業員に配布した「経営論」
例えば、コールセンターでは、従業員管理にベンダーと共同開発したシステムを導入し、管理マネージャーの数を抑制した。誰がいつ何をしているのか。例えば、通話中、後作業中、休憩中、何分以上離席しているかなどが、一目でわかるように表示される。規定以上の時間、席を空けると黒く表示される。「新しく入った従業員には『黒くしないように』と伝えるだけ。他社が10人に1人マネージャーを付けるところ、当社は100人に1人。それでも、10人を管理するより細かく管理できる」
営業では、個の営業力に依存しない体制を構築する。「提案書であれば、顧客が資料をめくるだけでクロージングできることが完成形。それを目指したものになっているかを伝えていく」
同社の企業理念は「全従業員が究極的に経済合理性のある判断をできる集団であり続ける」だ。「従業員には常々『中長期的に利益が出るのはどちらか』を判断基準とするよう意識づけをさせている。再現性のある仕組みが、属人化を排除した組織力の高さとなり、安定したサービス提供を支える」
過度な負担が加わらない体制の構築にも力を注いだ。コールセンターにおける離職要因の大半が、クレーム対応の心的ストレスに起因するからだ。電話対応において、一定水準を超えた理不尽な要求を受けた場合、電話を切ってよいことを現場に認めている。
東京本社のコールセンター執務エリア
この方針を、クライアントである賃貸管理会社にも共有する。「一次対応は、誠意ある対応を徹底する。しかし、どうにもならないことは2度言われても変わらない。理不尽な対応業務を続けていると、従業員は離職する。この基準を共有できる管理会社と契約をする。管理会社がコールセンターを選ぶように、われわれも管理会社を選ぶ。経験を蓄積した人材が育つ環境を維持するためだ」
印刷会社の買収 経営者として転機
若い頃から自分の力で稼ぐことへの思いがあったという。鹿児島工業高等専門学校時代に、人から物を買って売る、転売ビジネスを始めた。そこで営業感覚を身に付けた。
卒業後、建築土木の竹中土木(東京都江東区)に入社したが1年で退職。その足で携帯ショップに飛び込み、法人営業を受託する個人代理店契約を結んだ。4年続けると、販売代理店大手のティーガイア(東京都渋谷区)から声がかかり、全国で新店舗の立ち上げに関わった。
ティーガイアを退職後、健康食品の販売などいくつか事業を起こすものの収益が上らず、最も苦しい時期を過ごした。転機となったのは、倒産した印刷会社を100万円で買収したことだ。印刷業は未経験だったが、月商40万円の事業が1年で1億円、3年で3億円に拡大した。
「『印刷物ありませんか』と聞いて回り受注した。客先で『これできませんか』と聞かれたら、ほかの印刷会社を訪ねて『いくらでできますか』と尋ね、その額に1.5~2倍の見積もりを出して受注した。他社よりも高く受注できたのは、どこよりも早かったから。問い合わせがあればすぐに見積もりを出した。顧客は皆急いでいた」
渡辺会長は、重要な経営の要諦として、管理、マネジメント、ファイナンス、営業の4点を挙げる。
「私の場合、営業はできたが、それ以外のことは、印刷会社など経営者になってから身に付けた。管理の基本は業種、業態を問わず『うるさく、厳しく、細かく』。だがこれだけだと社員は辞めてしまう。対極にあるのがマネジメント。マネジメントが弱いと、管理も強くできない。ファイナンスが強い人は、営業、管理、マネジメントが強い人を雇えば良い」
ネット企業を取得 M&Aで成長加速
M&Aにも積極的だ。特に、無料インターネット事業については、同業の買収を相次いで行った。
22年に通信サービスのブロードバンドコネクション(札幌市)、23年にキャリア(北海道札幌市)、24年にコールセンターと通信サービスのベンダー(福岡市)、ホテル運営のHOTEL STUDIO(ホテルスタジオ:同)、通信サービスのCITV光(東京都豊島区)とSHC(愛知県名古屋市)、25年に通信サービスのテルベル(新潟市)。それぞれ全株取得し完全子会社化した(CITV光は25年に吸収合併)。
25年に開催した新年会の様子
無料インターネット事業は、現状ほぼ賃貸向けのみだが、今後、新築分譲マンション、戸建て分譲地に一括提案も始める。「既存顧客に加え、買収した子会社の案件も増える。事業部門ごとの伸び率でみた場合、無料インターネット事業がしばらくけん引すると考えている」
会社概要
東京本社:東京都豊島区東池袋4丁目21-1アウルタワー3F・4F
福岡本社:福岡県福岡市博多区博多駅東2丁目8-27博多駅東 パネスビル2F/6F 設立:2012年(Bestエフォート)
資本金:1億260万2500円(2025年8月末時点)円
社員数:223名(2025年5月末時点)
社長プロフィール
1974年生まれ、鹿児島工業高等専門学校卒業後、竹中土木へ入社し1年で退職。個人事業として携帯販売の法人営業に4年間携わり、その後、ティーガイアで4年間新店開発などんに関わる。独立後、買収した印刷会社の経営など複数の事業を経て、10年、コール&システム設立。22年、ラストワンマイル代表取締役就任。24年より現職。
ラストワンマイル
東京都豊島区
渡辺 誠 会長
(2026年1月5日48面に掲載)




