経済産業省資源エネルギー庁は、液化石油(LP)ガスにおける過大な営業行為の取り締まりについて、不動産業界に目を光らせる。7月2日に施行された改正省令の規定対象はLPガス事業者だが、設備の無償貸与を求めるオーナーや、オーナーへの利益供与を目的に過大な営業行為をあっせんする不動産会社を、事実上違法行為のほう助に等しいと見なす。同庁は、該当事業者への事実確認を速やかに実施する。
不動産関係者へ罰則求める声
―7月2日、「過大な営業行為」の改正省令が施行された。その後、営業行為に変化は。
違法行為に関わる情報提供は、省令改正後も集まっている。情報収集の経路は、2023年12月1日にウェブに設置した「通報フォーム」や、個別の相談によるものだ。その中には、不動産会社や不動産オーナーから利益供与を求められているLPガス事業者がいる実態も、把握している。
―不動産業界に対して、改正省令の順守をどのように求めていくのか。
経産省として、事実確認にすぐ動く。対処方法を検討することに時間をかけるつもりはない。利益供与を求めている不動産会社やオーナーの情報は、国土交通省と定期的に共有している。今後、両省で協力して個別に事実確認を実施するなど、現場レベルでの取り組みを強化していく。不動産関係者への罰則適用については、経産省審議会のみならず、消費者委員会の有識者からも指摘を受けており、何らかの対応が求められると考えている。
―LPガスの商慣行の是正に対して、強い意志を感じるが、その理由は。
改革を実施するのは今回で2度目となる。LPガス料金の不透明さについて、消費者から訴えが起こり、17年に省令改正を実施した。内容は、三部料金制の徹底だ。ガスの利用料金の中に含まれていた、関係のない設備費を分けて、明細を利用者に提示することを定めた。だが当時は、例外を認めていたこともあり、実効性が乏しかった。設備を無償貸与する商慣行の抜本的な改革が再度必要だという認識を持っていた。
―そもそも、LPガス取引に関する商慣行に注目したきっかけは。
LPガスの普及率が高い北海道において、北海道大学の学生の部屋探しを行う北海道生活協同組合連合会(北海道生協連:北海道札幌市)から、LPガス料金の不透明さについて国に調査結果が提出されたのが始まりだ。北海道生協連が調査を始めたのは、仲介した入居者の親から、LPガス料金が高いという指摘が入ったことがきっかけだったという。実際に調査すると、物件単位、あるいは同じ建物でも、部屋によってLPガスの利用料金にばらつきがあることがわかった。16〜22年に北海道生協連が実施した調査結果が報告され、これを基に、経産省として商慣行の改革検討に着手した。
―25年4月2日から、改正省令として、三部料金制の徹底も施行される。
先にも述べたように、三部料金制の徹底は2回目。今回は、例外を認めない。25年4月2日以降、LPガス料金を利用者に請求する場合は、新規契約であろうと、既存契約であろうと、設備料金をガス使用料と分けて表記しなければならない。具体的には、基本料金、使用料を表す従量料金、設備料金の3項目に分けて利用者に提示することを義務化する。設備料金の項目を「0円」「該当なし」と記載して、実際は設備費を従量料金から回収するケースも考えられる。そのため、今後も並行して通報フォームなどから情報を収集し、疑いのある事業者に対しては、提示している利用料金の説明を求めていく。
資源エネルギー庁
資源・燃料部 燃料流通政策室
日置 純子 室長
資源エネルギー庁
資源・燃料部 燃料流通政策室
目黒 満雄 課長補佐
(齋藤)
(2024年8月19日5面に掲載)