法改正、不動産業界を注視
経済産業省資源エネルギー庁は、液化石油(LP)ガスの営業行為において、不動産業界への取り締まりを強化する。
同省は4月、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令」を公布。2段階に分け改正省令を施行する。
これまで、LPガス事業者と賃貸住宅のオーナーの間では、エアコンやモニター付きインターホンなどの設備を無償貸与する代わりに、LPガスを契約する依存関係が常習化していた。無償貸与された設備の費用は、入居者のLPガス使用料に通知なく上乗せされ、不透明な料金体系の温床となってきた。この商慣行にメスが入った。
同庁は、「過大な営業行為」を禁止する改正省令を7月2日に施行した(作図参照)。違反者に対しては罰則規定を設ける。罰則の対象は、LPガス事業者。
一方で同庁は、不動産オーナーや不動産会社が、LPガス事業者に対して利益供与を求めることを、事実上違法行為のほう助に等しいものとみなして目を光らせる。
2023年12月1日、ウェブ上に設置した違反行為者の「通報フォーム」には、省令改正前の24年7月1日時点で1200件超の通報が寄せられた。7月2日以降、同フォームおよび個別提供情報も併せて通報内容を精査し、必要に応じて通報者へのヒアリングや、該当者への事実確認を進めている。
通報内容の中には、「ガス会社の切り替えを利用し、エアコンを無料で取り換え」などとうたったオーナー向けのチラシを受託営業ツールに使用している不動産会社の情報も寄せられた。
これらの実態を把握したうえで、5月17日付けで「LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しの周知について」と題した通知文書を、国土交通省を通じて不動産業界団体へ周知した。
同文書のさらなる周知を目的に、経産省資源エネルギー庁が6月中旬にフランチャイズチェーン(FC)展開をしている大手不動産会社に要請を行うなど、LPガス取引の現場に関わる事業者への理解浸透に取り組んでいる。
同庁資源・燃料部、燃料流通政策室の日置純子室長は「違法行為を把握した後の、アクションの速さを重視している。対処方法を検討することに時間をかけるつもりはない。該当企業には、速やかに事実確認を実施していく」とコメントした。
(2024年8月19日1面に掲載)