学生向けマンションの管理・運営を行う学生情報センター(京都市)の新社長に吉野一樹氏が4月1日付で就任した。新体制の下、社内体制の刷新や、学校法人の課題を解決するコンサルティングなど事業領域の拡大を図る。「学校との関係強化や、社員のモチベーション向上を重視していくことで、当社はさらに成長できる」と断言する吉野社長に、成長戦略について取材した。
理事長と対談も、課題解決狙う
新卒で東急不入社 シニア事業出身
学生情報センターは新体制の下、大学との関係構築に力を入れていく。同社は東急不動産ホールディングス(東京都渋谷区)のグループ会社で、5万5700戸の学生マンションや学生寮の運営を行う。
今回、新社長に抜てきされた吉野一樹氏は、新卒で東急不動産(東京都渋谷区)に入社してから学生情報センターに異動するまで、その大半をシニア・リゾート関連の事業に従事してきた。
これまでに、東急不動産シニアライフ事業本部の統括部長や、有料老人ホームの運営を行う東急イーライフデザイン(同)の社長を歴任。直近では東急不動産のウェルネス事業ユニットにおいて本部長を務めた。
2023年に学生情報センターの専務に着任し、24年4月より社長に就いた。
学校訪問数を増加 グループ間で連携
吉野社長が意欲を示すのは大きく二つ。一つは営業訪問数の増加だ。学校へ訪問する件数を増やし、関係強化に注力する。閑散期における営業を強化し、24年度以降の提携校からの学生紹介数増加を目指す。24年4月時点の提携学校数は693校だ。
訪問の目的は案件の獲得だけではなく、学校が抱える課題や要望のヒアリングも狙いの一つだ。東急不動産不動産ホールディングスのグループと連携しながら、課題解決の提案を行う。
7月には協力関係にある大学の理事長と対談。そこで理事長から就業を目指す学生向けのインターンシップの受け入れを依頼され、それを同グループ内で共有した。現在はインターンシップの実施に向け調整を行っている。
このほかにも、さまざまな学校関連事業の相談があると想定しており、東急不動産ホールディングス全体での対応を行うことができると考えている。
学生情報センターが企画・管理している学生マンション
ベアの実施に意欲 キャリア計画明示
意欲的に推進することの二つ目は、社員の働きやすさの向上だ。主に、全社員の給与のベースアップを行っていく。そのために欠かせないのが、売り上げの拡大だ。
営業を強化することで、25年度は成約数増加を見込んでいる。吉野社長は「中期経営計画として、ベアの実施を目標としている。頑張った分、自分たちの給与に反映されるのだと社員に伝え、モチベーションの向上につなげる」と話す。
そのほか、社員一人一人のキャリアプランを明示していく。例えば異動の場面でも、なぜ異動辞令が出たのか、異動後の部署にはおよそ何年ほど配置する予定なのか、会社はどういったキャリアを歩んでほしいと思っているのか、人事部を通して伝えるという。
「異動の理由やキャリアプランについてきちんと会社が考えていることを社員に共有し、『会社に必要とされている』という実感を得ながら働いてもらう」(吉野社長)
人事異動は今後より活発化させていく方針だ。さまざまな業務に従事することで、広い視野を持って働くことができるようになると期待する。
女性従業員が活躍できる環境も整備する。女性管理職の割合を現在の15%から20%へ引き上げ、産休・育休後の復帰支援にも着手する。
「学生情報センターはまだまだ伸びしろのある会社。今後は管理戸数のみに依存しない、大学とのつながりを生かした事業を積極展開していく。一般的な管理事業とは異なるポジションを確立したい」(吉野社長)
(國吉)
(2024年8月26日20面に掲載)