愛媛県松山市とその近郊を商圏に1万700戸を管理する三福管理センター(愛媛県松山市)の社長に、星川俊一氏が4月に就任した。トップとして2026年までに管理戸数を1万5000戸に拡大することを目指し、社内改革に取り組む。
受託強化、専属スタッフ配置
売り上げ8億円 入居率95%超維持
星川社長は今後の経営にあたり「管理戸数増加」「入居率アップ」「従業員満足度の向上」「入居者満足度の向上」の四つの目標を設定した。この目標を達成するための施策を進める。
同社は不動産事業をはじめとし、教育・福祉事業やホテル・観光事業などを行う三福グループ内で賃貸管理事業を担う。
23年度の売り上げは8億円。そのうち賃貸管理事業が30%、事業者紹介料や更新事務手数料などの手数料収入が25%、家賃債務保証事業の収入が15%、テナントや土地も含めた自社保有物件からの賃料収入が10%だ。
同社は1970年に三福商事(現三福綜合不動産)として創業。2004年に三福管理センターとして分社化した。
管理事業においては分社化当初から3カ月以上の空室をゼロにすることを目標に掲げてきた。エリアの平均入居率80%程度に対して、常に年間平均95%以上の入居率を維持している。
一方で、「長期空室ゼロ」の目標を必ずしも達成できていなかったことが課題だった。星川社長は24年5月に新たに四つの目標を設定。26年までに管理戸数1万5000戸、入居率98%、従業員満足度3点以上、入居者からのクレームへの対応未完了30件以下をまずは目指す。
1カ月に1度、取り組みに対する効果測定を行い、予測したとおりの成果が出なかった場合はその都度修正。これにより、スピード感をもって目標を達成することを狙う。
星川社長は「社員に『ああしろ』『こうしろ』というのは簡単だが、社員の成長につながらない。ゴールを設けて、達成するためにやることを決めさせれば、自ら動くようになっていくと考えている」と話す。
業務委託を活用 社員の負担軽減
管理戸数の増加に関しては、受託営業を強化する。空室の有無と物件の現地確認を行う業務委託スタッフを2人採用。賃貸住宅所有者への飛び込み営業を担当する。そのヒアリングを基に、確度が高いオーナーに対しては管理受託専任の社員1人が対応する体制に変更した。
従来は、既存オーナー担当の管理部スタッフが兼任で新規受託営業を行っていたため、手が回り切っていなかった。専属スタッフを置いたことで24年7月には130戸ほど、管理獲得が見込める案件があり、少しずつ効果が出ているという。
入居率に対しては、3カ月以上空室が続いているすべての物件のオーナーに提案を行う計画を8月に立案。9〜10月の異動シーズンに合わせた条件変更を提案する。
従業員満足度については全社員の定時退社を目指す。三福グループ内では半期に1回、従業員に対して満足度アンケートを実施。各項目マイナス3点からプラス5点で従業員が採点している。現在の平均は0点台であるため、3点以上に押し上げることを目指す。
そのために、営業社員の1人あたりの担当戸数を、現在の平均2000戸から1500〜1600戸にまで減らす。さらに営業スタッフを4人から6人に増員し、各従業員の負担を軽減。定時退社を実現することで、従業員の満足度を上げる計画だ。
入居者満足度に関しては、クレームへの対応未完了の件数を減らすための対策を講じる。入居者からは、1カ月に900〜1000件の問い合わせがあるが、対応に時間がかかり月に約60件の催促があるという。そこで、毎月の対応未完了案件を30件にまで抑えることを目指す。
毎朝、前回の連絡から3日以上たった案件に関しては経過報告をするよう定めた。クレーム発生から1週間以上たっても解決していない案件に関しては、部長や星川社長が対応する。これにより、入居者からの催促や対応未完了案件を減らすことができる見込みだ。
星川社長は「従業員や入居者の満足度を測定することは難しいが、これらの取り組みで上げられると考えている」と話す。
事業の分社化推進 経営者5人輩出へ
星川社長は愛媛県四国中央市の出身だ。大学を退学し、消費者金融事業者に約12年務めた後、家賃債務保証会社のリプラスに転職。三福管理センターとは、取引先として関係があったという。しかし、8年にリプラスが倒産。三福ホールディングス(同)の中矢孝則社長に誘われ、同年三福管理センターに入社した。
入居者のサポートや建物の維持管理業務に従事し、9年に課長になった。そして、10年に取締役課長、20年に取締役部長に昇進した。今回の社長就任まで、入居者・オーナー対応を行う営業部門の管理職も兼任していた。
「中長期では30年までに管理戸数2万戸が目標。社内カンパニーをつくり、事業を分社化し、経営者を新たに5人輩出することを目指す」(星川社長)
(野中)
(2024年9月23日20面に掲載)