空き家リノベにいち早く着手

ルーヴィス

管理・仲介業|2024年11月16日

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ルーヴィス 神奈川県横浜市 福井信行社長(49)

反響は年間200件超

 日本におけるリノベーションの黎明(れいめい)期から住宅のリノベ事業に注力してきたルーヴィス(神奈川県横浜市)。築古の空き家を借り上げて行うリノベにも積極的に取り組み、実績を重ねる。

累計3000件手がける 年商10億円

 「既存物件のいいところを生かすことで『懐かしい新しさ』をつくり出すことができる」

 ルーヴィスの福井信行社長は同社のリノベについて、こう語る。同社はリノベの設計・施工を主軸事業に、年間10億円を売り上げる。

 売り上げの9割をリノベの請負施工が占める。1割が築30年以上で1年以上空き家となっている物件を借り上げてリノベを行う「カリアゲ」事業となっている。工事請負の約8割は一戸建てがメインの木造住宅で、そのほか、店舗やオフィスのリノベも手がけている。これまでの累計リノベ件数は住宅・非住宅を含め、約3000件。

 年間の問い合わせ件数はリノベ事業で200件、カリアゲ事業で30件程度となっている。

 福井社長はリノベを主力にした仕事をしたいと2005年、同社を創業した。

ルーヴィスの1件目の事例

新宿御苑作図

ベランダ側から撮影。梁にガラスを貼り奥行感を演出

玄関側はSOHOでの活用を想定

玄関側はSOHOでの活用を想定

 1件目のリノベは、05年に行った東京都新宿区の区分マンション。債権回収事業を行っていた知人から紹介され、1700万円で購入。背の高い人であればぶつかりそうな高さまである天井の梁が特徴的な物件だった。

 場所柄もあり、SOHOでの利用を想定。窓側から見た梁の上部には鏡を設置することで奥行き感を演出。SOHOで使用する玄関側と、居住空間となるベランダ側を緩やかに分割した。

事例集

 08年のリーマン・ショックを機に、リノベの実績を伸ばしていった。

 リーマン・ショックのあおりを受けた買い取り再販事業者は、物件の在庫を多く抱えてしまった。早期で売却したいものの、不動産価格は下落、買い手も減少した。そのまま再販したとしても赤字になってしまう。福井社長は不良在庫になっていた物件の付加価値向上を再販事業者に提案し、同社が請け負いでリノベの設計・施工を実施。複数件手がけているうちに雑誌に掲載され、エンドユーザーからの問い合わせも増加していった。

 現在同社では、木造のリノベが主軸となっている。「木造が増えたのは意図的ではなかった」と福井社長は振り返る。同社による木造アパートのリノベ事例も雑誌に掲載されたことで、木造アパートのオーナーから依頼が来るようになった。少しずつ木造の案件が増加していったのだという。

 その後、時代の流れとともにリノベ事業者も増加。だがリスクが高いとされる木造のリノベを行わない会社も多かったことから、結果的に同社は木造の案件が増えていき、差別化にもつながった。

白金台アパート ビフォー③外廊下

白金台アパートアフター③1階

木造アパートのコンバージョンビフォーアフター。2階建て6戸のアパートを1棟貸しのオフィスにコンバージョンした。

賃料の42カ月上限 施工費用を負担

 木造のリノベ実績を早くから積み上げたことで、空き家リノベの事業化にもいち早く着手。14年からは空き家の再生事業、カリアゲを始めた。これまでに約100件、同事業で再生している。

ロゴ

 カリアゲは、リノベ費用を同社が負担する代わりに、設定した期間、同社が無料で借り上げる。設定期間後は、オーナーに返還。売却するケース、改めて借り上げ・管理を同社に依頼するケース、自己使用するケースなどさまざまだという。

 物件により異なるが、借り上げ期間は8年程度。同社が負担するリノベ費用は、賃料の42カ月分を上限としている。3年間で負担した費用を回収し、残りの契約期間で利益を得るビジネスモデルだ。

 相談の8割が相続した実家に関するもの。そのほか、借地権で貸していて本来更地にして返還する契約だったが、建物が立ったまま何件も返ってきてしまった、という地主からの相談もあったとそうだ。

 リノベ後の入居者の集客は同社のホームページからがほとんどだ。会員登録者が1000人で、空室が掲載されると会員にメールが送られる。配信後、2週間以内に入居が決まることが多い。

サイト画像

ホームページの新規募集一覧

 新規の問い合わせ経路はSNSと同社ホームページで、おおよそ半分ずつ。入居者層は20代後半から30代までの夫婦やカップルが多く、個人事業主など自分で仕事をする人や、服飾・デザイン系の仕事に就く人が多い傾向にある。2年の定期借家契約を更新し、4~6年と長期入居になる入居者が多いという。

 築古戸建て物件でありながら若い世代の入居者が多い。その理由は「昭和レトロ感」にあるとみる。

紙面ビフォーアフター

東京都荒川区の170㎡もある元店舗兼住宅のビフォーアフター。10年間空き家状態だったという

 カリアゲの事業モデル上、リノベ費用は潤沢とはいえない。そのため、まずは改修が必須の箇所を優先して施工する。「カリアゲの事業開始当初からレトロ路線を狙ったわけではない。『嫌なイメージを持ってしまう部分』をまず直すことを優先した結果、『古さを懐かしい新しさに』という当社の理念を体現するものになった」(福井社長)

 例えば水回りで、汚れが目立つ部分はまず修繕し、残りの費用でできることを模索する。間取り変更は、リビングを広げるなど小規模にとどめる。その結果、既存の和室や梁、浴室タイル、ガラス窓などはそのまま活用することで、レトロな雰囲気に仕上がっていく。

荒川ビフォー②

白金台アパート アフター②2階

元々の建具の良さを最大限生かす。二階住居部分のビフォーアフター

荒川ビフォー 外観

荒川アフター 外観

外観のビフォーアフター

築古なぜ不人気?答え探して独立

 福井社長が創業に至ったのは「実家が営む不動産会社では当時、リノベへの理解を得られなかったから」と振り返る。福井社長の実家は、地元・横浜市で60年続く不動産会社を経営している。

 創業前は家業の会社に勤務し、賃貸管理や仲介事業を手がけていた。その空室対策として、ブルースタジオ(東京都中央区)のリノベに関する本を手に取った。20代前半、インテリアの会社で中古輸入家具を取り扱っていた福井社長は、リノベの面白さに魅了されていたという。「1万5000円ほどで仕入れた輸入中古家具を手入れして、20万円程度で販売することもあった。不動産では、築30~40年たつと値引きしても入居者が付かないのはなぜだろうとずっと疑問だった。本を読んで、不動産も修繕すれば値が付くはずだと考えた」(福井社長)

インスタトップページ

同社のインスタグラム。登録者は6万人を超す

 当時はリノベという言葉自体の認知度が低い時代だった。そのため、古い物件に何百万円というコストをかけて直すことに「オーナーの理解を得らえないのではないか」と賛同を得られず、ルーヴィスの創業に至ったという。

 「不動産価格が高騰しており、一次取得者が買いにくい状況になっている。その分、より良い賃貸物件を選びたいというニーズは増えると考えており、カリアゲ事業が伸びていくのではないかとみている。だが、数字的な部分ではなくリノベした物件の面白さ、ワクワク感というところこそ世に伝えていきたい」(福井社長)

(2024年11月18日20面に掲載)

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