ALCと防音フローリングで
コストを抑えて建築できる木造アパートの弱点である、上下階の騒音問題を解決する工法が登場している。木造専用の防音床材の組み合わせ工法「SH-AON(シャーオン)」だ。これを採用しているのが、賃貸住宅の建築を手がけるウェルフリート・インターナショナル(兵庫県神戸市)。オーナーや入居者に防音性能に満足してもらいつつ、建築費用を軽量鉄骨造の3分の2ほどに抑える。
同社は2023年から、木造集合住宅の建築にSH-AONを採用している。SH-AONは、子どもの跳びはねなどの重量床衝撃音と、スプーンの落下音などの軽量床衝撃音の両方を抑える工法だ。建材メーカーの旭化成建材(東京都千代田区)のALC(軽量気泡コンクリート)薄型パネル「ユカテック」の上に、ノダ(東京都台東区)の直貼り防音フローリング「カナエルC防音45」を貼る。施工には、接着剤メーカーであるオーシカ(東京都板橋区)の接着剤「セレクティUR-145」を使用。重量床衝撃音をユカテックが、軽量床衝撃音をカナエルC防音45が抑える。
住宅メーカーの下請け工事を主に行っていたウェルフリート・インターナショナルは、22年から木造アパートの元請けを開始した。外観デザインや設備などは評価されたものの、上の部屋の足音が下の階に響くという課題が残った。
物件でも防音性能のテストを行った
同社の城戸口知学専務は防音対策を探し始め、ノダのショールームでSH-AONを見つけた。防音性能の実測値を公表している点が目に留まったという。建材試験施設での測定結果は、重量床衝撃音の遮音性能を示すLH値が55、軽量床衝撃音のLL値は55だ。
「LH-55やLL-55は、木造アパートとしてはなかなか出せない数値だ。木造建築の床の防音対策としては石こうボードの2枚重ねが主流だが、防音性能の実測値を公表しているメーカーは見当たらない」(城戸口専務)
23年6月、SH-AONを使った木造アパートを竣工した。建築費用は、通常仕様の木造建築に比べて1坪あたり5万円ほど高い。それでも軽量鉄骨造の3分の2ほどだ。
「完成検査に立ち会ったオーナーには、上の部屋の足音がほとんど聞こえなくなったことに満足してもらえた。入居者からも音のクレームは出ていない。低コストを追求するのではなく、防音のような付加価値を提供することで受注を増やしたい」(城戸口専務)
(2024年12月23日7面に掲載)