「インフレと同水準のベースアップを」という社会要請にいかにして応えるか。今回は、「一芸に秀でる」というポイントで解説する。
人気設備を導入 都市部では効果
この連載で述べてきたように、周辺の同じ築年の物件と比べて、明らかに「なにか」に秀でていないと、都心回帰で人口増加となっている1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)以外ではそう簡単に家賃が上がらない。しかし、世はインフレである。
家賃が上がらなければ、オーナーの可処分所得も上がらないし、家賃と連動している仲介手数料・管理料で成り立つ賃貸不動産会社のベースアップも難しい。
そこで、この環境下で家賃アップに成功している事例を研究したい。
基本的には、「設備強化」をすることで、ポータルサイトでの検索対象となるため、人気設備の追加が何より大事である。
下の表は、2022年と24年の、仙台駅から徒歩10分以内の単身物件の平均賃料である。ここで大切なことは、「インターネット無料」「バストイレ別」「温水洗浄便座」「防犯カメラ」「宅配ボックス」などといった人気設備が事前に付いている物件は平均賃料よりも高い家賃水準となっている。
こうした物件は仲介時にも「こちらの物件はネットが無料ですよ」などと勧めやすく、その分、強気の家賃設定で募集が可能なのだ。また、競争の激しい宮城県仙台市では、この2年間で人気設備の導入率が上がっており、結果的に全体の平均賃料も上がっている。
こうした事例を語っても、そもそも人口減少が激しいエリアでは家賃アップは難しい。「人気設備を導入して、ようやく埋まるが、家賃アップはとてもとても」というエリアも存在する。そのエリアにマッチした「一芸」が必要である。