日本はどの国よりも早く超高齢社会を迎えている。そのような中、「商人」の力で地域の問題を解決しようと、高齢者への生活支援事業を行うフランチャイズチェーン(FC)を展開するのがMIKAWAYA21(東京都荒川区)の青木慶哉社長だ。同社の理念に共感した不動産会社ユカリエ(宮城県仙台市)の永野健太社長は、FC加盟後、ジーバー(同)を設立し、高齢者が作るお弁当の宅配事業を開始。2人に超高齢社会の時流をどのように捉え、事業に取り組んでいるのかを聞いた。
シニア支援・活躍で街を変える
原点は感謝の声
―MIKAWAYA21は高齢者に向けてどのようなサービスを展開しているのでしょうか。
青木 「まごころサポート」は、コンシェルジュと呼ばれるスタッフが、高齢者の家事などの支援を行うサービスです。2024年12月末時点で230社の企業とFC契約を結んでいます。業種は不動産業や介護福祉事業所、ガソリンスタンドなど幅広く、地域に根差した経営を行う企業に加盟いただいています。
―まごころサポートを始めたきっかけは何ですか。
青木 私はもともと新聞販売店を経営しており、08年ごろに新聞の販売促進を目的として始めました。始めて驚いたのはそれまで顧客からかかってくる電話の多くはクレームだったのが一変し、感謝の声が届くようになったことです。その結果、社員たちの表情も明るくなり、仕事への意欲が高まりました。その時、地域に密着して商売を行う意義について考えさせられました。まごころサポートの運営を通じて、商人として本当に大切なのはお客さまに感謝されることだと改めて気付いたのです。その経験から、地域の社会問題の解決を目指してまごころサポート事業のFC展開を始めました。
―顧客に喜ばれ、社員が意欲的に働くというのは良い循環ですね。
青木 自分たちの顧客が高齢化しています。その中で、高齢化に関わる課題は自治体や国がなんとかするという発想が強いです。しかし「地元の商人がなんとかしようよ」と訴えかけたところ、共感してくださる人たちが多くいて、全国にパートナーが増えました。
―不動産事業を手がける永野社長もその思いに共感した一人ですね。
永野 当社は不動産の買い取り再販を主軸に不動産事業を展開していましたが、コロナ禍を機に「もし自分の会社がつぶれたとき、誰が悲しんでくれるのか。地域に必要とされる会社なのか」を真剣に考え始めたのです。その時、知人を通じて青木さんを紹介され、事業理念に強く共感しました。加盟後、「ジーバーFOOD(フード)」という事業を立ち上げました。高齢者が元気に働きながら地域に貢献できる場を提供しています。現在の高齢者スタッフの登録数は約100人。弁当作りや料理提供などに携わっています。
―不動産売買などの相談につなげることも目的の一つでしょうか。
永野 それはあまり考えていません。この事業の目的はあくまで、高齢者が社会とつながり、生きがいを得ること、そして地域の活性化につなげることです。たまたま不動産の相談につながったことも1件だけあります。ただそれは結果論として捉えています。
青木 私たちは顧客のニーズを理解して商品を開発する「マーケットイン」の考え方を徹底しています。そのため、加盟していただくにあたり、自社商品を売り込みたいという目的の企業とは考えが合わないかもしれません。
価値観を再定義
―不動産業は地域密着型のビジネスなので、高齢者支援と親和性が高いです。不動産会社が高齢者マーケットで事業を展開することで、どのような効果が生まれると考えますか。
青木 超高齢社会において地域活性化を図るためには、高齢者の住宅問題の解決が鍵となります。それによる効果は二つ。一つ目は、地域の不動産マーケットの流動性が高まることです。現在、多くのオーナーが高齢者の入居をリスクと捉え、貸し渋る傾向があります。賃貸事業者やオーナーが積極的に高齢者の受け入れを推進することで、地域の不動産マーケットの循環が促進されます。
―確かに不動産の流通が活性化します。
青木 二つ目は、高齢者の住環境整備による地域活性化です。当社では、地域の高齢者が住み慣れた住環境を大きく変えずに安心して住み続けられる賃貸住宅「まごころアパート」の開発を進めています。Wi-Fiセンシングを活用した見守りやコミュニティー建築などの特徴がありますが、こだわったのは、地域のコミュニティー拠点となるような仕組みづくり。オーナーや不動産会社が高齢者のソフト面の暮らし方の提案もしていければ、地域に新しい風を吹き込めると考えています。
―永野社長は不動産業と並行してシニア食堂事業も行っていますが、今後どのように連携していくかを教えてください。
永野 現在、宮城県富谷市との協定の下、高齢者世代が活躍する古民家食堂事業を運営しています。空き家となった古民家を改装し、運営を担うのはジーバーFOODのシニア世代スタッフです。高齢者の活躍の場としてだけでなく、地域の子どもたちの学校・家庭以外の居場所づくりにも役立っています。このモデルを、日本全国の空き家や高齢化問題の解決策の一つとして広めたいと考えています。
―不動産業界で働く人に伝えたいことをお願いします。
青木 商人が利益と効率化を追求することはもちろん大事です。ただ、世の中の変化にあわせて、自分たちのビジネスの意義を再定義することも必要だと思います。衣食住のうち大事な柱の一つである「住」を提供する不動産業界。そこで働く人たちが「家賃を回収して終わり」ではなく「地域の人の心の豊かさまでも設計するぞ」という気概で取り組むだけで、街の雰囲気が変わります。少しの工夫で、住む人も働く人も表情が変わってくるはずだと信じています。
永野 私も不動産会社の仕事の定義をアップデートすることが重要だと思います。DX(デジタルトランスフォーメンション)化により業務の効率化が進んだことで、今の私たちはもっと価値を生み出す余力があるはずです。不動産業界がもっと汗をかけば、街はもっと良くなるはずだと考えています。
MIKAWAYA21
東京都荒川区
青木慶哉社長(48)
社長プロフィール
1976年生まれ。大阪府枚方市出身。読売新聞販売店の経営を経験した後、本社直営店の代表に就任。その後、高齢者向け生活サポートのまごころサポートを開始。2012年に新聞販売会社を売却し、MIKAWAYA21を設立。
ジーバー
ユカリエ
宮城県仙台市
永野健太社長(35)
社長プロフィール
1989年生まれ、北海道恵庭市出身。2015年に宮城県で不動産会社ユカリエの立ち上げに参画。22年にまごころサポートのFCに加盟。同年、ジーバーを設立。シニアが手作りした総菜を届けるジーバーFOOD事業を開始。
(2025年1月6日33面に掲載)





