レオパレス21(以下、レオパレス:東京都中野区)がマスターリースする賃貸住宅の借り上げ家賃減額が問題化している。同意をしていないのにもかかわらず、レオパレス側の提示した減額賃料が一方的に振り込まれたケースに対し、オーナーが集団の訴訟や交渉を起こす動きも出てきた。
団体で訴訟を起こす家主も
「1月末から2月の半ばまでにレオパレスから、オーナーに対して借り上げ家賃の減額を求める調停の申し立てが10件出ている」と話すのは、サブリース被害対策弁護団(神戸市)の団長を務める三浦直樹弁護士だ。
レオパレスは、2021年4月以降の特定賃貸借契約の更新分を対象に、借り上げ家賃の減額に関する通知をオーナーに送付。減額に応じないオーナーに対しては、レオパレスが調停に持ち込もうとしている。ただ、この話には前日譚がある。
同弁護団は、21年11月4日に大阪地方裁判所にて、レオパレスを提訴した。オーナーが同意していない減額家賃を一方的に振り込んできているのは不当だとして、原告であるオーナー25人分の未払い家賃など約1400万円分の支払いをレオパレスに求めた。
第一回の裁判が21年12月20日に行われる予定だったが、11月30日にレオパレスから、請求額を全額支払うので裁判を取り下げてほしいとの連絡が来たため応じた。
12月15日には、オーナーに減額前の家賃額が振り込まれ、未払い分に遅延損害金と訴訟費用等を加えた請求額全額の入金もあり、事件は解決したかに見えた。
だが、冒頭で調停を申し立てられたオーナーは、この原告25人のうちの10人だ。減額は不当だ、という裁判を起こされ、要求を認めた相手に対し、レオパレスが個別に調停を申し立てている。三浦弁護士は「裁判で判決が出ることを避けつつ、個別の調停でかかる費用や手間を考えさせ、オーナーにレオパレスの要望を飲ませるのが狙いでは」と話す。
22年1月7日には別の案件で、レオパレスと特定賃貸借契約を結ぶオーナーの1人が、同社に対する民事訴訟を起こした。オーナーの了解を得ないまま、同社が独自の査定によって引き下げたサブリース賃料を振り込み続けていることに関して、21年8~12月分の従前の賃料との差分322万円と年3%の遅延損害金と訴訟費用の支払い、22年1月分から従来の借り上げ家賃を支払うように求めた。訴えを起こしたオーナーは「市況的に家賃を30%も減額すべき根拠はないし、減額後の家賃の一方的な振り込みについても法的な根拠はない。このまま泣き寝入りするわけにはいかない」と語る。
相次ぐ賃料査定の依頼
個別交渉を行うための賃料査定の依頼がオーナーから相次いでいるのは、不動産鑑定を行うさくら不動産鑑定(大阪市)だ。レオパレスからの大幅な借り上げ家賃減額に困っているという相談が21年8月頃から来ており、これまでに35件ほどの相談が寄せられた。そのうち22件が正式な依頼となり、18件は当初レオパレス側が提示した借り上げ家賃よりも減額幅を抑えて合意に至った。
同社の飛松智志代表によると、レオパレスの提示額が更新前の借り上げ家賃と比べ平均で24%程度の減額になっていたのが、交渉後は減額が更新前比8%ほどで合意に至っているという。
交渉の流れとしては、同社で、依頼主の所有する物件の賃料査定レポートを作成。オーナーは、レオパレスの担当者に対し合意書への署名を拒否したうえで、レポートを提出し、交渉を行う。1回目の交渉では、1~2週間で当初より半分から3分の1ほどの減額幅で再打診されるケースが多いようだ。2回目、3回目と交渉を続けるうち、更新前と比較し減額幅が10%を切る数値を提示してくる傾向にある。21年11月から相談の件数は落ち着いてきたものの、オーナーが交渉中の案件があり、まだ問題は収束しないと見る。
問題の争点の一つは、レオパレスの提示する減額した借り上げ家賃が適正かどうかだ。
不動産鑑定士の飛松代表は「レオパレス側の鑑定では相場賃料が新規契約の場合になっている。契約更新のため、通常であれば継続家賃として、相場と現家賃の差を縮めた額を提示するのが一般的。周辺の競合物件比較では、安い賃料の物件を集めているケースも見受けられる」と話す。
近隣相場に「一括借上比率」と称する80%を乗じた金額が適正賃料であるとしている点に関しても疑問の声が上がる。三浦弁護士は「当初の契約時に借り上げ賃料の計算式として規定しているわけでもないのに、根拠のない数式と数値を用いており、合理性がない」と言う。
レオパレスは「賃料適正化協議につきましては、順次オーナーさまと協議させていただいております。詳細な戸数や進捗(しんちょく)状況については公表しておりません」と回答。訴訟や調停に関しての方向性については非開示としている。
(2022年2月21日1面に掲載)