大手が共用部充実の賃貸開発

野村不動産,野村不動産パートナーズ,三井不動産レジデンシャル,Hmlet Japan(ハムレットジャパン),三菱地所,グローバルエージェンツ

物件紹介|2025年03月07日

 大手デベロッパーが共用部付き賃貸住宅の開発を進める。賃料の高騰で選択肢が狭まる住まいに対し、新たな付加価値を提供する。

都心の家賃高騰に対応も

内覧数全戸の148% 100戸超の大型展開

 新たな賃貸住宅ブランドを立ち上げたのは、野村不動産(東京都新宿区)だ。その第1弾が、職住一体型のコリビング賃貸レジデンス「TOMORE(トモア)品川中延」。都営地下鉄浅草線中延駅から徒歩1分に立つ、全135戸の物件。3月からの入居開始を前に、200件超(2月18日時点)の内覧申し込みを獲得。好スタートを切った。

TOMORE品川中延の外観

TOMORE品川中延の外観

 特徴は、最大約100㎡の共用部。コリビングとコワーキングの2種類を併設した。専有部は12㎡から。

TOMORE品川中延 リビングスペース

TOMORE品川中延は、100㎡ほどのリビングスペースを完備する

 同事業の企画背景についてTOMORE事業責任者の黒田翔太氏は「東京都内の特に20㎡程度の単身者向け物件の家賃上昇が顕著だ。一方で、家賃を抑えられるシェア型の賃貸住宅の供給属性を見ると、築20年超・定員30人未満といった築年数のたった小規模な物件が多い。需要に対して住宅商品が不足している点に課題を感じ同事業を立ち上げた」と語る。

TTOMORE品川中延のコワーキングスペース

TOMORE品川中延のコワーキングスペース。専用のスタッフを配置し、入居者コミュニティーの醸成を支援する

 デベロッパーとしての強みを生かし、新築を基本とした100戸以上を条件に開発していく。物件は野村不動産が保有し、グループの野村不動産パートナーズ(同)が管理を担う。

 ターゲットは20~30代の単身者。反響のボリュームゾーンはターゲット通りだが、セカンドハウス利用を目的とした40~50代からの問い合わせもあった。

TOMORE品川中延の共用キッチン

TOMORE品川中延の共用キッチン

 すでに、第2号物件の建設が進行中。中期的には、年間5棟ペースでの開発を目指す。

趣味嗜好に焦点 単身女性が対象

 三井不動産レジデンシャル(東京都中央区)は、共用部を併設したコミュニティー賃貸「SOCOHAUS(ソコハウス)」シリーズを展開している。家賃が高騰し、画一的な間取りが多い単身者向け物件は、部屋探しの選択肢が限定的である点に課題を感じたのが企画の背景にある。

 24年3月に入居を開始した1号物件「SOCOHAUS KORAKUEN(コウラクエン)」は、同年内に全76戸が満室となった。入居者属性は、20~30代の女性。職種は会社員が中心で、一部がフリーランスだ。1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)での1K・ワンルーム暮らしからの転居や実家からの独立が目立ったという。物件は、グループの社宅をリノベーションした。事業主は三井不動産レジデンシャル。

SOCO HAUS KORAKUENの共用キッチン

SOCO HAUS KORAKUENの共用キッチン。2口コンロを4セット備えた

 「都会の身軽でゆたかな暮らし」をコンセプトに、専有部にあえてキッチンやバスタブを備えず、共用部にグレードを高めた設備などを設置する。15.9㎡からの専有部に対し、共用施設としてライブラリーやシアタールームなどを併設。高品質な調理器具・家電を備えたシェアキッチンや全自動ドラム型洗濯乾燥機を導入したランドリールームなどを設置した。

SOCO HAUSの共用ライブラリー

SOCO HAUSの共用ライブラリー

 1号物件は単身女性を入居対象とした。趣味嗜好(しこう)に焦点を当てることで、細分化された入居者ニーズを獲得する狙いだ。

 事業創造部事業室の藤原圭佑主事は「手応えを感じている。2号案件以降も、リノベや新築を選択肢に持ちながら、都心を中心に展開していきたい」とコメントした。

共用部付き賃貸住宅の概要

外国人入居75% 駐在員からニーズ

 日本に滞在する年収帯が比較的高い外国人をターゲットに、コリビング型住宅を展開するのは、三菱地所(東京都千代田区)グループのHmlet Japan(ハムレットジャパン:同)だ。東京都内で55拠点1170室を運営する。

家具付きのHmletの専有部

家具付きのHmletの専有部

 「Hmlet」シリーズは、家具・家電付きの専有部のほか、一部物件では入居者向けの共用部としてコワーキングスペースを確保。入居から退去に関わる手続きをデジタル化しており、外国人駐在員のほか、場所や時間にとらわれずに働く「ノマドワーカー」をターゲットに据える。

Hmletの専有部

Hmletの専有部

 入居者のうち75%を外国人が占め、メインは日本を訪れる駐在員。年収帯は1000万円台が30%以上と最も多く、家賃は半年以上の入居で月額20万円から。ホテルやサービスアパートメントと比較した際に選択しやすい価格帯として、ニーズを獲得している。

 24年の年間平均入居率は85~87%。メイン顧客の駐在員は、平均1~2年入居する。

 佐々木謙一社長は「新型コロナウイルス禍による渡航制限が解除され、日本に訪れる外国人は増加傾向にあることから、需要は拡大していくだろう。25年5月には、大阪府への進出を予定。今後、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、福岡県などの主要都市への展開を計画する」と語った。

Hmletの共用部

Hmletの共用部

3000室が空室ゼロ 物件間交流を促進

 グローバルエージェンツ(東京都渋谷区)は、ワークスペースやシアタールームなどの共用部を併設した賃貸住宅「ソーシャルアパートメント」事業が、26年に20年目を迎える。関東圏を中心に46棟約3000室を供給し、2月25日時点で空室ゼロを達成。同数値は、原状回復工事中の部屋にも、申し込みが入った状態を定義する。

 広報を担当する吉田主恵氏は「専有部を持ちプライバシーを確保できる状態で、共用部での交流を求めるニーズを獲得してきた。今後も、3000室のスケールメリットを生かし、物件内だけではなく物件間交流を促すことや、多様化する交流の在り方を提案していく」と話す。

グローバルエージェンツ ネイバーズ江坂

150㎡の共用ラウンジを確保したグローバルエージェンツの「ネイバーズ江坂」

 入居者属性は20~30代の男女。家賃は、2年間入居することで相場と同等か少し安価になるよう設定する。交流目的での入居が多く、肌感覚で一般賃貸から転居してくる属性がメインだという。

 同社は年間2~3棟ペースで物件数を拡大。3月時点では25年内に1棟のオープンを控える。

 顧客の上限家賃に対し、立地や設備しか検討材料がなかった部屋探しに、新たな選択肢が生まれつつある。

(齋藤)
(2025年3月10日1面に掲載)

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