トグルホールディングス(東京都港区)は、自社で生み出した高度なAI(人工知能)サービスを不動産開発・投資事業に生かす。挑むのはテクノロジーを用いた「収益不動産開発から売却までの自動化」だ。
「ユニコーン企業つくりたい」 設立4年で売上99億円
年2倍で成長
「ユニコーン(企業)をつくりたいと思った」トグルホールディングスの伊藤嘉盛社長が同社を起業したきっかけについて語った言葉だ。ユニコーン企業とは、評価額が10億ドル(約1500億円)以上で非上場の大型ベンチャー企業を指す。
伊藤社長は、不動産賃貸領域のSaaS(サース)を提供するイタンジを創業後、2018年に同社をGA technologies(ジーエーテクノロジーズ)へ売却。4度目の起業として20年にトグルホールディングスを設立した。
同社は不動産開発・投資事業などを行うつくる地所(同)と、AIサービス事業を展開するつくるAI(同)を傘下に置く持ち株会社。連結売上高は23年9月期に51億円、24年9月期は約99億円と約2倍で成長。連結営業利益は24年9月期に5億4800万円だった。売上高の構成比は、つくる地所による不動産の実業をメインとするデジタルインフラ事業が9割以上を占める。
そもそもトグルホールディングスは伊藤社長が資産管理会社として設立した会社だった。
「夢でもあったので、大きい会社もう一度つくりたいと考えていたが、なかなかアイデアが降りてこなかった」と伊藤社長は振り返る。
ゴルフに打ち込む日々を送っていたある日のこと。「土地の仕入れから売却までの投資商品にして、売却するまでの過程を完全に自動化すれば、株の機械トレードと同じようになる。全自動の資産運用サービス『ウェルスナビ』みたいな事業をつくれないか」。そんなアイデアが、ふと湧いた。ウェルスナビの評価額が当時1000億円近くになっていた。「これを不動産版でやれば、(10億ドルに)いくんじゃないか」
個人で手がけてきたホテルやシェアハウスの開発事業の経験と照らし合わせたとき、企業が行う不動産取引のアナログな工程に違和感を抱いていた。そこで「不動産開発の入り口から出口までのすべてをAIで自動化する」という着想に至り、AIサービスの開発に乗り出した。