泉佐野市、空き店舗利活用 4年で17軒【リノベ商店街】

大阪府泉佐野市,一般社団法人バリュー・リノベーションズ・さの

その他|2025年11月13日

SHARE BASE つむぎや

 大阪府泉佐野市は、2019年から空き家を使ったエリアリノベーションに取り組み、これまでに、17軒の空き家を利活用に導いた。中心的役割を果たしたのは、行政と民間をつなぐ中間支援組織、一般社団法人バリュー・リノベーションズ・さの(以下、VRS:泉佐野市)だ。VRSを立ち上げ、23年6月から泉佐野市の副市長を務める西納久仁明氏に話を聞いた。

行政と民間の中間組織が活動

人通りを取り戻す

 泉佐野市は、関西国際空港の対岸に位置し、大阪市の中心部まで電車で30分という立地を武器に、ベットタウンとして発展した。人口は9万9000人(25年8月末時点)、5万世帯が暮らす。

大阪府

 まちの衰退が目立つのは、中心市街地の南海電鉄南海線の泉佐野駅の海側周辺だ。人口減少こそ緩やかだが、空き家や空き店舗が増え、夜となれば人通りも少ない。関西国際空港が開港した1994年ごろは宅地造成が盛んだったが、バブル崩壊後、開発が停滞した。

南海電鉄泉佐野駅西口 駅前通り

南海電鉄泉佐野駅西口から伸びる駅前通り

 2019年当時、泉佐野市まち活性課で事業者の支援を行っていた西納氏は、地域の衰退を食い止めるため、新規店を呼び込む施策を打ち出した。市内で開業する新規事業者に、家賃や借入金を補助する内容だ。だが、事業者はなかなか集まらなかった。

 まちに活気を取り戻すにはどうすればよいか、西納氏は全国の先進的な商店街を視察して回った。そんな折、宮崎県日南市の油津商店街で、空き店舗をIT企業のオフィスや宿泊施設など、従来店舗とは異なる方法で利活用する実例を見た。「まちに入り、まちの人の声を聞き、地域に合わせた施策を実行しなければならないことを実感した」(西納氏)

市が主導した動き

 西納氏は19年5月、市と地域の架け橋の役割を担う、中間支援組織VRSを設立した。最初の課題は、VRSが地域住民の信用を得ることだった。事務所を駅前商店街の入り口に構えた。

 組織をつくって最初に実施したのは、まちづくりの先駆者による講演会だ。会場には104人が集まり、そのうち、地域住民が7割を占めた。「衰退するまちを変えたいという熱量が住民にあるとわかった。まちづくりをどうやって進めるのかという話に、熱心に耳を傾けていた」(西納氏)

 講演会が終わるとすぐに「空き家になった築200年の古民家を、つぶさずに残す方法はないか」という相談が、持ち主ではない住民から持ち込まれた。VRSは古民家を活用したい人を募り、ワークショップを開催。参加者はその最終日に家主に活用方法をプレゼンテーションした。その後無事に家主の了承を得ると、プレゼンの参加者らが意気投合し、家守会社を結成した。家守会社が空き家を借り上げ、事業者に転貸する仕組みができた。

駅前物件に目星

 活動を始めたばかりのVRSには、遊休不動産の活用実績がなかった。西納氏は、VRSが自ら建物を借りて活用する実績をつくり、住民に対して機運を盛り上げる必要性を感じていた。着目したのは、泉佐野駅前で20年以上放置されていた、築50年の木造連棟長屋だ。市民の目に留まりやすく、新規事業を始めるのにうってつけだった。その場所を、商売を始めたい人が期間限定の店舗を営む「チャレンジショップ」として活用することを決めた。

 最初は家主に貸し渋られたが、説得を重ねて了承を得た。改修費用の見積もりではシロアリの被害もあり、最低限の耐震補強と改修工事に1300万円かかることがわかった。市の補正予算から800万円を拠出し、民間のクラウドファンディングで413万9000円を集めた。

テナント開業支援

 建物の改修を終えた21年4月、VRSが自ら管理運営する「SHAREBASE(シェアベース)つむぎや」としてオープンした。家賃は、約40㎡のスペースを週1回利用する場合、月額2万4167円~(水道料金などを含む共益費込み)。スモールビジネスを始めるテナントが、初期投資とランニングコストを抑えられるような立て付けにした。子育て中の人でも営業しやすいよう週1日から利用可能とし、出店のハードルを下げた。テナントを掘り起こすために、実践型ワークショップも開催した。起業の一歩を踏み出す人のためのワークショップ「なりわいテーブル」には、30~40代の女性が多く参加した。VRSは専門機関と連携して、事業計画の作成や資金調達を支援した。その後、近隣の商店街で駄菓子屋を開業する人も現れた。「地域には何かをやりたいという人がいる。チャレンジの場を創出する土壌をつくることを目指した」(西納氏)

 廃業になった銭湯を借り上げてレンタルルームにしたり、タオル工場だった建物をエステティックサロンなどの複合施設にしたり、VRSは空き家の新しい活用方法に取り組んできた。25年までの4年間で、VRSの遊休不動産の利活用実績は17軒になった。ワークショップを機に、開業・出店した人は45人に上る。

COZY ROOM

閉店した銭湯を改修し女湯だったスペースを
レンタルスペース「COZY ROOM"ASAHI"(コージールームアサヒ)遊」として運営。
(右)男湯には市役所の文化財保護課が入る

家主に協力意識広がる

 泉佐野市では、30年前のバブル期に1店舗の家賃が、月額20万~30万円に達した。空き家や空き店舗が何十年も放置されている理由の一つとして、その当時の記憶から抜け出せない家主も多い。

 曽祖父の代からこの地に住んでいる道下喜之氏はSHARE BASEつむぎやを含む、駅前の連棟長屋を所有する。VRSに長屋を貸すと決断したのは、当時所有していた先代だ。敷地は再建築不可だったため、20年以上、空き家のまま放置されていた。「長屋の一つをVRSに貸すと決めた時、父は『地域にいる私たちがまちの衰退を一番感じている。VRSはそれを食い止めようとしている』と話し、利活用に期待していた」(道下氏)

 遊休不動産を活用し、新規事業者らのチャレンジショップとして話題になると、VRSには、他の家主からも「空き家をどうしたいいかわからへん」「うちのも活用してくれへんか」と相談が持ち込まれるようになった。

 その後、VRSは運営するシェアスペースをもう1店増やした。2店合わせ、24年の1年間で8000人が来店した。24年時点で泉佐野駅周辺の路線価は、19年に比べ15%上昇している。23年6月、西納氏は副市長に就任。以降のVRSの運営は、マネージャーの石井博子氏に引き継がれている。「泉佐野市が人口を増やすことは難しい。事業の場と就労の場をつくり、関係人口を増やす。その先に、職住近接で暮らしやすいまちを目指す」(西納氏)

法人概要

大阪府泉佐野市 西納久仁明副市長

大阪府泉佐野市
西納久仁明副市長

(2025年11月10日13面に掲載)

おすすめ記事▶『福知山市・駅正面通り商店街、人口減少下で 24店舗を誘致』

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