大阪府泉佐野市は、2019年から空き家を使ったエリアリノベーションに取り組み、これまでに、17軒の空き家を利活用に導いた。中心的役割を果たしたのは、行政と民間をつなぐ中間支援組織、一般社団法人バリュー・リノベーションズ・さの(以下、VRS:泉佐野市)だ。VRSを立ち上げ、23年6月から泉佐野市の副市長を務める西納久仁明氏に話を聞いた。
行政と民間の中間組織が活動
人通りを取り戻す
泉佐野市は、関西国際空港の対岸に位置し、大阪市の中心部まで電車で30分という立地を武器に、ベットタウンとして発展した。人口は9万9000人(25年8月末時点)、5万世帯が暮らす。
まちの衰退が目立つのは、中心市街地の南海電鉄南海線の泉佐野駅の海側周辺だ。人口減少こそ緩やかだが、空き家や空き店舗が増え、夜となれば人通りも少ない。関西国際空港が開港した1994年ごろは宅地造成が盛んだったが、バブル崩壊後、開発が停滞した。
南海電鉄泉佐野駅西口から伸びる駅前通り
2019年当時、泉佐野市まち活性課で事業者の支援を行っていた西納氏は、地域の衰退を食い止めるため、新規店を呼び込む施策を打ち出した。市内で開業する新規事業者に、家賃や借入金を補助する内容だ。だが、事業者はなかなか集まらなかった。
まちに活気を取り戻すにはどうすればよいか、西納氏は全国の先進的な商店街を視察して回った。そんな折、宮崎県日南市の油津商店街で、空き店舗をIT企業のオフィスや宿泊施設など、従来店舗とは異なる方法で利活用する実例を見た。「まちに入り、まちの人の声を聞き、地域に合わせた施策を実行しなければならないことを実感した」(西納氏)
市が主導した動き
西納氏は19年5月、市と地域の架け橋の役割を担う、中間支援組織VRSを設立した。最初の課題は、VRSが地域住民の信用を得ることだった。事務所を駅前商店街の入り口に構えた。
組織をつくって最初に実施したのは、まちづくりの先駆者による講演会だ。会場には104人が集まり、そのうち、地域住民が7割を占めた。「衰退するまちを変えたいという熱量が住民にあるとわかった。まちづくりをどうやって進めるのかという話に、熱心に耳を傾けていた」(西納氏)
講演会が終わるとすぐに「空き家になった築200年の古民家を、つぶさずに残す方法はないか」という相談が、持ち主ではない住民から持ち込まれた。VRSは古民家を活用したい人を募り、ワークショップを開催。参加者はその最終日に家主に活用方法をプレゼンテーションした。その後無事に家主の了承を得ると、プレゼンの参加者らが意気投合し、家守会社を結成した。家守会社が空き家を借り上げ、事業者に転貸する仕組みができた。




