LIFULL、国内に事業集約 過去最高益

LIFULL(ライフル)

管理・仲介業|2026年01月16日

LIFULL 東京都千代田区 伊東 祐司 社長

 不動産ポータルサイト(以下、ポータル)を運営するLIFULL(ライフル:東京都千代田区)の伊東祐司社長がトップに就任して2年。「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ:以下、HOME'S)」の全国展開をけん引してきた現場叩き上げの経営者が、同社を大きく変えようとしている。海外事業からの撤退を断行。国内事業にシフト。ポータル事業で得た情報資産を基に、AI(人工知能)サービスの開発にも積極姿勢を見せる。

独自のAIサービス開発

海外撤退を断行 成長分野へ投資

 LIFULLの伊東社長がトップとして最初に着手したのは、業績の悪化が続いていた海外事業の整理だった。

 新型コロナウイルス禍以降、海外部門は収益を圧迫し、株式市場からも厳しい視線が向けられていた。

 伊東社長は「5年間で2度の大型減損を経験し、投資家からは『また減損が出るのではないか』と懸念の声が上がっていた」と振り返る。

 就任後、約1年〜1年半でリストラクチャリング(事業の再構築)を終えた。のれんによる減損は99億円。アーンアウト(成果連動報酬)の41億円の支払い義務も消滅。財務上のリスクを大きく減らした。現在は55%の議決権を持たない種類株式を保有するのみで、海外事業は連結対象から外れている。

 海外事業の非連結化を機に、経営資源を国内事業へと集約。HOME'S、不動産投資情報サイト「健美家」、高齢者向けサービス「LIFULL介護」、売却査定、空き家・遊休不動産など、住領域の主要サービスへの投資を強化。利益構造の再設計を進めた。「国内に集中して再成長させる。AIなど新技術で新たな伸びしろがつくれる好機だった」

 今回の構造改革は、単なる不採算部門の切り離しではなく、国内成長戦略への転換点とした。

中古流通、堅調 健美家グループ化

 同社の業績は好調だ。2025年9月期の売上高は前期比6.9%増の281億2700万円。営業利益は同26.1%増の38億1500万円と増収増益となった。

 HOME'S関連事業の売り上げは255億円となり、前年から6.3%増加した。セグメント利益は43億円で同61.7%の大幅増となり、利益率は11.1%から16.9%へと5.8ポイント向上した。

売り上げ・営業利益・営業利益率の推移

 広告宣伝費の最適化やAI活用による業務効率化が寄与した。

 成長の柱の一つである不動産会社の店舗数は、12カ月平均で3万3245店舗となり、前期比1.6%増となった。伊東社長は「これまでHOME'Sに加盟していなかった売買流通企業の新規加盟が増えている」と説明する。

 新規加盟が増加した背景として、中古物件への需要流入がある。「新築価格の上昇を受け、売買流通の反響が増えた。物件を掲載したいという相談が急増した」

 12カ月平均ARPA(1店舗あたり月間売り上げ)は6万3997円で、前年比3.7%増。特に売却査定サービスが顧客単価上昇にとって重要な役割を果たしている。

 伊東社長は「売却査定は15〜16年間続けてきた。他社が注目しない時期もあったが、一定のリソースを張り続けた」と語る。売却査定は不動産会社の仕入れ課題を解決する有力なリード獲得手段となる。「売却査定サービスを使いたいから会員になる。そして仕入れた物件をHOME'Sに掲載する。両方でサービスを利用できるため、加盟が増えている」

 20年7月に子会社化した健美家の急成長も業績好調の要因の一つだ。健美家の売上高は前期比16.6%増。掲載物件数は8万件を超え、統合前の約2倍に拡大した。

 23年4月にHOME'S不動産投資と健美家のデータベースを統合した。

 「大規模なシステム工事だったが、健美家に掲載すればHOME'S不動産投資にも掲載される形にした。双方の物件数が増え、相乗効果が生まれた」

 25年10月には、HOME'Sで部長を務めていた人物を健美家の社長に起用。連携体制をさらに強化する方針だ。

 HOME'Sに掲載している実需物件を、ワンクリックで健美家にも掲載できる新機能の開発が進む。「実需だけではなく、投資用としても掲載することで、今まで訴求できなかったユーザーにも物件を見ていただくことができる。これは当社ならではの仕組みだ」と自信を見せる。

売却査定サービス

売却査定サービスが好調だ

「アフターポータル」模索

賃貸市場は二極化 都心、スピード競争

 伊東社長が注目するのは、賃貸市場で進む二極化だ。特に東京都心部では、物件が公開された直後に申し込みが入るケースが増え、スピード競争が激しさを増しているという。「掲載した瞬間に決まる。以前のように反響を待つのではなく、いかに早くポータルへ掲載できるかが勝負になっている」

 これを受け、新着通知機能を強化。基幹システム会社との提携によるデータ連携、物件情報の高速変換を進めていく。一方で郊外や地方の需要は弱く、都心部との格差が広がっている。「売買市場と同様に、都心とそれ以外で二極化が進んでいる」

 この地域格差に対し、LIFULLは「選択肢の横断提示」に力を入れる方針だ。伊東社長は「月10万円の予算で、新築、中古、賃貸、売買といった多様な選択肢を全国規模で提示する。全国のデータを持つポータルだからこそ提供できる気づきがある」と話す。

新サービスに挑戦 横断的視点を重視

 「僕らが思っているのは、ポータルが5年後、10年後にどれぐらい使われているのかということ。全然違うゲームになっている気がする。そうなったときに、われわれ自身もどんどん新しいことにチャレンジしていく。既存のサービス以外で、顧客の役に立てるところにもっと出ていかなければいけない」

 伊東社長は「アフターポータル」を模索する。ポータルに代わる統合型AIエージェントとして「LIFULLAI」を開発。住まい探しの情報収集を従来の「自ら条件を指定して探す」スタイルから、AIが個人の文脈や潜在的な望みを理解し、パーソナライズされた最適解を「受け取る」スタイルに変えていく。第1弾の機能として12月にリリースしたのが不動産・住宅情報領域に限定した「AIホームズくん」だ。

 自然言語による曖昧な相談から、ユーザーの希望をくみ取り、膨大な物件情報やエリアなどの周辺情報を参照。パーソナライズされた提案を行う。今後は介護領域や不動産投資といった領域も含めて、順次拡張していく予定だ。

 「私自身の引っ越しの際、子どもの学区を前提に、月々の支払い水準で戸建て・マンション・賃貸のすべてを比較したかったが、ユーザーにとっては横断検索の仕方がわかりづらいと感じた。こうしたAI活用は特定の層に刺さるはず」

 社内向けAIの活用も進む。従業員の9割以上がAIや生成AIを利用し、半年間で3万1600時間の業務時間を創出した。

 2年間で1人あたり売上収益は14.2%増加。1人あたり営業利益は約2倍となった。

AIエージェント

AIエージェントの提供を開始

現場目線を徹底 中期計画400億円へ

 LIFULLが策定した26〜28年の中期経営計画では、売り上げ収益350億〜400億円、営業利益55億〜60億円、営業利益率15%超を目標に掲げる。主要事業である住まい領域の継続成長、グループシナジーの最大化、AI活用による非連続成長の3点を成長軸とする。

 伊東社長は徹底して「現場」目線を重視する。AI、構造改革、プラットフォーム戦略といった取り組みの根底には、不動産会社や利用者から得られる現場の声がある。

 第二創業期を迎えたLIFULLは、住まい探しの常識を再定義する局面にある。AIと人の視点を組み合わせ、住まい・地域・働き方を横断する「生活のプラットフォーム」構築に向けて歩みを進める。

(河内)
(2026年1月12日20面に掲載)

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