競合ひしめく札幌市で、後発ながら管理を3500戸にまで成長させた企業がある。問題解決に向き合う体制で受託を伸ばしているのがタフト(北海道札幌市)だ。会社としての強みの源泉は、離職率の低さとボトムアップ型の組織風土にある。現在の組織体制を構築した酒井和之社長は、まちづくりにまで事業領域を広げていく。
離職率2% 受託増の源泉
ボトムアップの風土つくる
タフトの特徴の一つが、離職率の低さだ。かつては40%だったという離職率を、2025年度には2.8%まで縮小。退職者は進学のため他県に転居したアルバイト1人のみだった。
従業員が定着すると、オーナー対応を行う窓口が変わらず、担当者の経験やスキルが蓄積される。結果として業務の質を向上させながら安定したサービスを提供できるようになり、オーナーの満足度が高まる好循環を生んでいる。
10年に設立された同社は、賃貸仲介業でスタートした。当時の管理戸数は39戸。大台の1000戸を突破したのが18年。創業メンバーで取締役だった酒井社長が、トップに就任した年だった。以降、7年間で管理戸数は3500戸を突破。ここ数年は、年間300戸前後のペースで純増する。
酒井社長が仕掛けたのは、組織改革だった。「社員に仕事をお願いをするのであれば、まず会社が規則を守るべき」という考えの下、社長に就任した18年以降、労働環境の改善に注力してきた。完全週休2日制を導入し、最低年間休日数は120日と定めた。勤続2年目以降は最大年132日の休日取得が可能だ。2年に1度は就業規則の改定も行う。
働きやすい環境づくりに加え、酒井社長はチームビルディングに力を入れてきた。チームで業務を推進していく際には、社員の意見を取り入れ、合意を得てから進む形をとるという。「離職が多かった時代は、無意識的にトップダウンの風土をつくってしまっていた。従うしかない案件になると、現場の活力は失われてくる。人が辞めてしまうのは、取り組んでいることに対し興味を失う時。合意を得て進む方針をとれば、チームが主体性を持って動いてくれる」
同社の事業内容は多岐にわたり、民泊や学生寮の運営代行から、リゾート地・ニセコ町の区分ホテルのアセットマネジメント、海外顧客向けの不動産取引対応を行う国際事業まで展開する。このうち民泊や学生寮運営、国際事業は、いずれも社員の発案で立ち上げた事業だ。
計数管理強みに家主に伴走
「受託獲得の経路は、ほとんどがオーナー間の紹介」と語る酒井社長。他社で解決できなかった問題を抱えるオーナーに、解決策を提案できることが受託につながっている。これには、人材の定着による安定したサービス提供のほか、同社が計数管理を得意とする点も寄与している。酒井社長は、19年にCPM(米国公認不動産経営管理士)、23年にはCCIM(米国不動産投資顧問)の資格を取得した。空室率と稼働率の最適化を図る指標「空室90日ポリシー」などの数値管理を通して、客観的なデータに基づくアドバイスを行う。
酒井社長は「管理が増えているのも、オーナーの『何とかしてほしい』という声に応えてきた結果。当社では、問題の解決につながるか否かが、行動指針になる。問題解決型の会社として、ありとあらゆる課題に対応できる体制を整えてきた」と語る。
25年6月期の売り上げは2億4333万円。26年6月期は、2億7000万円の着地見込みだ。
人口7万人都市でオフィス需要創出
新しい商圏で地域の活性化に乗り出した。
23年から、札幌市のベッドタウン岩見沢市に出店。酒井社長と10年来の付き合いのある地主から、長年空室だったオフィスビルの運営を依頼されたのが、岩見沢市進出のきっかけとなった。人口は7万人ほどで、炭鉱都市として栄えていたが、近年は年間約1300人ペースで人口が減少。これまで地元の不動産会社では、オフィスビルの需要は見込めないと判断されてきたという。
同社は、岩見沢市に高速道路や鉄道が通っていることに注目。旭川市と札幌市をつなぐハブ拠点としての機能にまちのポテンシャルを感じ、マーケティングを推進した。結果、管理を受託したオフィスビルは満室経営を実現している。
ビルテナントとして入居したのは、支社を多く持つ大手企業だ。これまで需要がないと判断されてきたのは、個人や中小企業を相手にアプローチをかけてきたことが要因であると同社はみる。
オフィスビルの満室化を機に、同じ地主から追加で新築するビルのテナント集客および管理を受託した。同エリア内ではオフィスの空室が目立つ中、全6戸を募集開始1年半で満室にした。岩見沢市に新築のオフィスビルが立ったのは、約15年ぶりだったという。
酒井社長は「これを機に、同地域で管理受託の依頼が増加しており、26年度中には100戸の受託を見込んでいる」と話す。市からも、地域全体の不動産における問題について提言を求められるなど「まちづくりの中心に入り込めてきている実感がある」と話した。
岩見沢市でまちづくりの知見を蓄積し、将来的には北海道内のほかの地域にも展開していく構想だ。
【会社データ】
設 立:2010年6月
本社所在地:札幌市北区北20条西5丁目2番50号 クロスポイント1F
事業内容:不動産管理、賃貸・売買仲介、民泊や学生寮の運営など
拠点数:3拠点
従業員数:38人
【社長プロフィール】 1982年3月11日生まれ、埼玉県出身。調理師専門学校を卒業後、調理師として東京都内の外資系ホテルに勤務。その後異業種への転職を経て、北海道札幌市に拠点を移し、2010年に業界未経験で仲間と共にタフトを設立。18年に代表取締役に就任した。19年にCPM、23年にCCIMを取得。
(齋藤)
(2026年4月6日11面に掲載)





