「関西クリーンサービス」の屋号で遺品整理および特殊清掃事業を手がけるA‐LIFE(エーライフ:奈良市)は、事故物件を中心に年間40件の不動産を買い取り、再生している。孤独死や自殺、事件が起こった住宅の遺品整理、特殊清掃、買い取り、リフォームを内製化している点が特徴だ。亀澤範行社長は「遺品整理会社と不動産会社が連携することによって、心理的瑕疵による空き家を一軒でも減らしたい」と語る。
4000件の遺品整理現場で仕入れ
特殊清掃や改修 一気通貫で対応
A‐LIFEは、事故物件の遺品整理から特殊清掃、買い取り、リフォームを一気通貫で行っている。内製化によって、比較的低いコストで物件を再生できる点が強みだ。主力の遺品整理事業は、関西エリアを中心に年間4000件を受注する。そのうち約1割が事故物件だ。
不動産事業は、所有者や遺族から遺品整理とセットで不動産の売却について相談を受け、買い取りに至るケースが多い。そのため、物件の仕入れに伴う広告料や手数料がかからない。さらに、改修や解体の工事もグループで手がけている。リフォームは、デザイン設計や施工管理を自社で行い、職人への分離発注によって低コストを実現する。
ほかに、特殊清掃、リユースショップの運営、不用品の買い取り、産業廃棄物の運搬・処分業などもグループ会社で展開。回収した遺品の処分一つとっても、外部に託すよりコストを抑えることができる。亀澤社長は「遺族にとって、遺品整理や特殊清掃、不動産の売却などをワンストップで依頼できることは、利便性が高い。複数の事業者を探す手間を省くだけでなく、費用を軽減することにもつながる」と話す。
遺品整理の現場が賃貸不動産であるケースは、全体の6割ほど。貸主から依頼が来るケースも多いという。
遺品整理、特殊清掃、リフォームによって再生した事故物件
住宅として再販 相場の7割で売却
亀澤社長は「将来的には100億円企業を目指したい。売り上げ拡大をけん引するのは不動産事業だ」と話す。2025年7月期のグループ売上高は、約18億円。売り上げの70%が遺品整理で、次いで15%が不動産の販売と賃料収入だ。同期は遺品整理経由で40件を購入し、35件を売却した。購入した40件のうち、戸建ての個人住宅が32件、分譲マンションの住戸が8件だった。
1件あたりの買い取り価格は平均500万円程度だが、物件の立地や規模、事件性などによって大きく異なる。買い取る基準は、個人住宅としての再販が見込める立地や規模であること。自社所有する場合は、買い取りと改修の費用を7〜8年で回収できること、などを挙げる。仕入れた物件の7〜8割は個人住宅として再販する。価格は相場の7割程度になることが多い。売却の営業活動は、地域の不動産会社に任せている。
年間4000件の遺品整理を、さらに不動産の買い取り再販事業につなげていきたいと考える。そのためには、自社での買い取りや再生を拡大するだけでなく、地域の不動産会社との連携を目指す。連携によって、これまで買い取りが難しかった遠方の不動産を取り扱えるようになる。同社が地域の不動産会社への売買仲介を行い、購入した不動産会社には再生ノウハウを提供することで、流通をサポートする仕組みだ。
事故物件だけでなく、高齢居住者の他界や施設入居などによって空き家になってしまう現場に居合わせる遺品整理会社には、不動産に関する相談が多く寄せられる。「遺品整理は不動産流通の入口にいる存在。単に室内の片づけを行うのでなく、不動産が再び市場に流通する仕組みをつくっていきたい」
供養で不安払拭 真言宗の僧侶に
事故物件を再生するには、次にその不動産を使う人が安心できる要素が必要だ。リフォームによって建物の外装や内装を改修し、見た目のイメージや、住まいの機能を改善することも重要だが、同社ではその家で亡くなった人を供養することも大事にしている。
亀澤社長は得度という修行をし、24年7月に真言宗の僧侶となった。そのため自ら、亡くなった人の供養や、仏具の魂抜きと呼ばれる儀式を執り行うことができる。魂抜きとは、仏壇、位牌を処分する前に、お経を唱え、宿っている魂を抜く仏教の儀式だ。これらは、遺品整理や特殊清掃の工程として創業時から行ってきた。儀式の様子や記録を適切に管理・開示することで、遺族や、次にその場所を使う人の不安を払拭するためだ。
亀澤社長が僧侶になる前は、提携するお寺に依頼していたが、自身で行うことで顧客の金銭的負担や手間を軽減することにもつながるという。「遺品整理や特殊清掃の現場は人の死に直面することが多い。物理的な整理だけではなく、遺族の心の整理をサポートしたいと思い、仏教の教えを学んだ」
遺品整理の現場
自殺ビルを寺院に 社会的価値の再興
3月には、僧侶となった亀澤社長が住職を務める寺院が完成。故人の供養を行うだけでなく、講話や説法、写経などの行事を企画し、地域住民が気軽に立ち寄れる場所にしていく。名称は翠緑山禅祥院で、事故物件のビルを改装した。個人事業主が自殺したビルだ。
こうした事故物件の再生はほかにもある。同社は、大阪市に立つ強盗殺人事件が起ったビルの1階で子ども食堂を運営する。「資産的価値を大きく失ってしまった事故物件を、人が集う場として再生することで、新たな社会的価値を持たせたかった。ネガティブな印象を払拭し、地域にとって価値がある場所になってほしい」
(平田)
(2026年4月6日20面に掲載)





