住宅リノベーションの草分けであるアートアンドクラフト(大阪市)は近年、オフィスや店舗、宿泊施設など非住宅分野にも事業領域を広げ、既存ストックを生かした不動産再生を推進している。同社が目指すのは、不動産の潜在価値を引き出し、街に新たな魅力を生み出すリノベだ。
用途提案で需要をつかむ
マーケット感覚 企画に生かす
事例の一つが、大阪市城東区にある大阪メトロ長堀鶴見緑地線今福鶴見駅近くで手がけた長屋の再生プロジェクトだ。相続を機に建物を引き継いだオーナーは、大手ハウスメーカーから建て替えを提案されていたが、建築費は1億円を超え、投資回収に現実味を持てずにいた。そこでアートアンドクラフトへ相談し、建て替えではなくリノベによる再生を検討した。
同社はまず建物の状態を確認し、後から増築した部分は撤去したほうが合理的と判断。そのうえで「店舗兼住宅」をそのまま再生するのではなく、「この立地ならどんな用途が最も価値を生むのか」という視点から計画を立て直した。
西川純司社長は「住居にするとキッチンや浴室など住宅設備が必要になり、コストが高くなる。一方で、駅に近いこの立地なら店舗や事務所の需要があると考えた」と振り返る。
そこで不動産仲介事業「大阪R不動産」で培ったエリアのマーケット感覚を生かしながら企画。住宅設備を設けず、スケルトン仕様の事業用賃貸として再生した結果、竣工後約3カ月でヨガスタジオ、サンドイッチ店、美容室が入居し満室となった。改修費は設計・施工を含め約4000万円で、投資回収期間は約7年を想定する。
西川社長は「過剰な設計はせずともデザインとして成立し、コンセプトも体現できることを大切にしている」と話す。単に建物を改修するのではなく、用途の設定から事業性まで見据えて提案する姿勢が、同社が手がけるリノベの特長となっている。
入居したヨガスタジオ。2階でレッスンを行っている





