【進む不動産DX】導入事例5社から学ぶ、現場の効果

プロパティワコー,ワークデザイン,ニーリー,リブライフマーケティング,アセットコミュニケーションズ,ジョイフルマネージメント,WealthPark(ウェルスパーク),アセットリード,スマサポ

管理・仲介業|2022年09月27日

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 不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールが、賃貸管理や仲介の現場で使われる事例が増えている。業務管理だけでなく入居者やオーナーとのコミュニケーションなど、多岐にわたる業務をカバーできるさまざまな商品が存在する。本特集ではDXツールを導入した不動産会社の事例を五つ紹介する。

案件可視化、部署間連携を円滑に

サービス特徴1

サービス特徴2

進捗状況を共有 確認作業削減

 約2000戸を管理するプロパティワコー(大分市)は、不動産会社向けシステム開発を手がけるワークデザイン(鳥取県米子市)が提供する基幹システム「カクシンクラウド」を2021年10月より利用している。

 導入の目的は、部署間で業務の進捗(しんちょく)や売り上げを統合管理することだ。導入前は部署ごとに業務の管理方法が異なり、売り上げの認識に食い違いがあった。進捗の確認作業も電話やメールで行うため業務時間を圧迫。部署問わず同じ仕組みで管理する必要があった。

 そこでカクシンクラウドの「kanban(カンバン)」機能を活用した。案件ごとのタスクを付箋に記すようにシステム上で可視化する。業務の状況に合わせて付箋を移動することで、状況の共有が容易になるほか、滞っている課題にも気付きやすくなる。プロパティワコーではシステム導入の結果、部署間の情報共有にかかる時間を大幅に削減することができた。カクシンクラウドが、実務経験豊富な不動産会社が開発したシステムであることも大きな導入理由だった。

kanban機能のイメージ画像

kanban機能のイメージ画像(ワークデザイン)

 業務時間に余裕が生まれたため、営業活動に注力できたことも効果の一つだ。オーナーへの提案を増やし、工事費売り上げは21年比156%。プロパティワコーの齋藤正浩社長は「導入後は社員が先を見越した行動を取るようになり、売り上げを伸ばすことに成功した。今後は10年以内に管理戸数5000戸を目指す」と語る。

駐車場業務9割減 最短1日で契約

 第一不動産(静岡市)はニーリー(東京都中央区)が提供する月極駐車場オンラインサービスの「Park Direct(パークダイレクト)」を、21年6月から利用している。駐車場管理業務を9割削減可能なサービスだ。

 第一不動産は、静岡市内で3店の仲介店舗を運営。約3000戸の物件管理、駐車場は一般媒介を含めると7000車室を取り扱っている。

 月極駐車場の平均単価は月額1万円。物件と併せて駐車場も借りる入居者が多く、営業社員が駐車場の契約も行っていた。駐車場は問い合わせから契約完了まで平均1週間程度かかるなど、手間の割に収益性が低いことが課題だった。

 第一不動産がPark Directで募集している駐車場は311拠点。現地の募集看板に印字したQRコードをスマートフォンで読み取ると、空車状況を確認し契約手続きを行える。

Park Direct募集看板のイメージ

現地に設置される募集看板のイメージ(ニーリー)

 サービス導入により契約まで最短1日で完了するので、駐車場に関する業務をITスタッフが担当できるように変更した。

 21年度は20年度比で駐車場の稼働率が11.2ポイント向上した。稼働率が上がった理由として、次の要因が挙げられる。月間300万PV(閲覧ページ数)以上のポータルサイトからの集客や、オンライン契約に抵抗のない20~30代の利用者が増えた点。空き待ち予約で次の契約者をすぐに見つけることができる点。解約日が決まっている場合には、解約日前でも先行して契約することも可能な点。現在、250件の空き待ち予約があるという。

 第一不動産の中島敦社長は、「単価が安いため、これまで駐車場は不動産会社が扱う仕事ではないという認識が強かった。将来、土地の売却案件につながるなど地主との接点を持つのに最適なサービスだと思っている」と話す。

300戸を1人で管理 外注化で手間削減

 収益不動産売買や賃貸管理を営むリブライフマーケティング(東京都渋谷区)では、約300戸の賃貸管理業務を1人で担っている。活用するのは、不動産会社向けシステム開発を行うアセットコミュニケーションズ(東京都中央区)の建物管理システム「BM(ビーエム)クラウド」だ。

 リブライフマーケティングは、管理手数料0円で賃貸物件を管理受託する。売買した物件を管理してオーナーとの関係を保ち、次の不動産取引につなげることが目的だ。

 建物管理業務の手間を削減するため、BMクラウドで退去立ち会いや鍵の交換、日常清掃などの業務をすべてシステム上で発注している。作業報告書もクラウド上で確認し蓄積。また、同じシステムからオーナーへ報告書の共有も行っている。リブライフマーケティングでは、今後物件が1000戸程度に増えても1人で業務をこなせる見込みだという。

BMクラウドから鍵交換を発注する画面

BMクラウドから鍵交換を発注する画面(アセットコミュニケーションズ)

 同社の渡辺敏一社長は「当社で売買した物件の管理が多かったが、今後は管理から収益不動産の売買につなげるパターンも増やしたい」と話す。

 アセットコミュニケーションズでは建物管理の実務を担う全国の会社95社と提携。今後もBMクラウドで扱う商材の幅を広げていく予定だ。

報告・連絡を円滑化 半数のオーナー利用

 HIROTA(ヒロタ)ホールディングス(福岡県北九州市)グループで、約6800戸を管理するジョイフルマネージメント(同)は、21年8月より、WealthPark(ウェルスパーク:東京都渋谷区)のオーナーコミュニケーションアプリ「WealthParkビジネス」を利用している。

 グループ会社や部門の垣根を越えて、不動産の売買提案などオーナーの資産価値拡大のための提案を行うことが目的となる。普段の管理業務においても、オーナーへの迅速な情報提供やこまやかなコミュニケーションが必要不可欠になるため、WealthParkビジネスを積極的に活用している。

ワークフロー機能のイメージ

WealthParkビジネスにおけるワークフロー機能のイメージ

 具体的には、退去通知の報告や募集条件の確認、入居者からのクレームや巡回状況の報告、明細書の送付などの場面で利用する。条件確認などに関しては機能の一つである「アクティビティ」を使い、オーナーがワンクリックで可否を判断できるよう運用。導入時に業務の棚卸しをWealthParkと共同で行い、アクティビティにおける定型文を作成した。

 同アプリの運用に合わせて明細書発行の自動化も図り、精算グループ3人の業務時間を年間188時間削減している。

 9月時点でジョイフルマネージメントが管理を受託している800人以上のオーナーの54%が同アプリに登録し、半数以上が毎月利用。費用対効果を高め、より効果的な提案につなげるためにも、直近の目標値として65%の登録率を目指す。

 ジョイフルマネージメント・資産管理部の東裕介部長は「導入自体が目的に置き換わってしまうことが往々にしてあるが、ゴールはその先にある。毎月のWealthParkとの定例会議では、必ず導入目的と成果定義を確認し、効果的な活用方法を常に模索している」と語る。

1次窓口設置 問い合わせ数減少

 投資用不動産売買や、プロパティマネジメント事業を手がけるアセットリード(東京都新宿区)は、21年8月よりスマサポ(東京都中央区)が提供する入居者向けアプリ「totono(トトノ)」を活用している。

 導入のきっかけは入居者からの問い合わせが管理業務の負担となっていたことだ。アセットリードは自社ブランドとなる投資用マンション「ARKMARK(アークマーク)」シリーズを販売している。管理戸数を年間200戸ほど伸ばし、22年9月時点で約3400件を管理する。入居率は90%。管理戸数が増えたことで、入居者からの問い合わせも多い月で70件ほど増加したため、1次対応の窓口としてtotonoを導入した。

 重宝しているのは「よくある質問」機能だ。設備機器の故障をはじめとした問い合わせ内容を、Q&A形式で約350項目に分けて掲載する。入居者の自己解決を促し、管理会社への問い合わせを減らすという狙いで設けられた機能だ。アプリ導入後、アセットリードでは問い合わせが20件以下まで減少。社員が直接対応する問い合わせは設備交換とクレームのみとなった。

利用画面の写真

利用画面のイメージ。よくある質問で問い合わせに対応する(スマサポ)

 入居者への対応の負担が軽減されたため、現在はアプリを活用した入居者満足度の向上に取り組んでいる。「野球やサッカーの観戦チケットのプレゼント企画を行っており、入居者からの反響もいい」とアセットリードの業務管理部の竹井二郎課長は話す。アプリのダウンロード率は、新規入居者が25%、既存入居者が45~50%だ。利用促進のため、契約時に案内を行うほか、ポスティングや電話対応時にアプリの導入を勧めている。

(2022年9月26日8・9面に掲載)

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