『玉川台のアパートメント』は、4月末に竣工した全21戸、RC造のワンルーム賃貸住宅だ。建物に独創性を持たせながらも周辺住宅との調和を考慮してつくられた同物件は、竣工前に全戸成約となった。
昔ながらの小道のような曲線的なアプローチ
『玉川台のアパートメント』が建てられた地域は、古くは農地だったが大正時代に宅地として開発された。100坪を超える敷地に広い庭や一軒家などが見られたが、時代とともに土地は分割されていった。同物件は、そのような「土地の履歴」をコンセプトに、昔ながらの緑地や戸建てのような雰囲気をいかに残すかを考慮してMMAAA(エムエムエーエーエー:東京都世田谷区)によりつくられた。
同物件の敷地面積は約360㎡あるため一棟構成にすると、周囲に圧迫感を与えてしまう。そこで分棟構成とし、1階の半層を地下に設けた4階建てとした。さらに高度斜線・日影規制対策として切り妻型の屋根を採用している。周辺住宅と屋根の大きさが同等になるように意識した。
各戸へは全て中庭を経由する配置とした。玄関前にはロードバイクなどをいじれるような余白を生むことで、豊かな暮らしが送れるような環境を提供している。また中庭の歩道はあえて直線的なラインにはせずに、昔の小道のような緩やかで自然な流れを意識した。そのため中庭の歩道はアスファルト敷きとし、脇にはきれいな花を咲かせる雑草「ワイルドフラワー」を植えている。花壇などのつくられた雰囲気ではなく、物件周辺にある路地の延長線上から自宅へ戻るようなイメージを大切にした。
ドアは最小限に抑え壁で空間仕切り奥行き創出
2棟ともベランダ側がセットバックしているため、テラスや軒下空間が生まれるプランや、切り妻屋根を生かしたプラン、ロフト昇降用のハシゴを壁にオブジェのように備え付けたプラン、キッチンの壁を天井まで設けず窓からの光が感じられるプランなど、16のプランを用意した。住戸には必要以上の扉は設けず、壁で空間を仕切ることで奥行きを持たせている。
さらに床を塩化ビニールシート、モルタル金ゴテ仕上げのうえコンクリートステインを施した床、そしてフローリングなどを使い、空間に変化を持たせた。1、2階の玄関扉はガラスの開き戸、3、4階は引き違い戸を採用し、カーテンレールを設けている。