旅行会社 賃貸市場に活路
その他|2016年03月25日
郊外観光業の発展見据えて連携
旅行会社が不動産会社と提携する動きが増えている。
国内の宿泊施設不足は、旅行会社にとって悩みの種だ。
ホテル・旅館がなければ、ツアーを組むことすらできない。
解決の糸口となるのが、マンションや戸建ての空き部屋を利用した民泊だ。
不動産会社と連携し、安定的に民泊物件を調達する仕組み作りの動きをまとめた。
旅行見積もり比較サイトを運営するイー・旅ネット・ドット・コム(東京都港区)は9日、ハウスドゥ(東京都千代田区)と民泊事業で業務提携する方針を固めた。
2020年東京オリンピック時の宿泊施設不足に備え、ハウスドゥが空き家や空き部屋を転用して行う民泊物件を、旅行客に提供するための仕組み作りを進める。
主要顧客である外国人旅行者は、外資系シティホテルを求めるアジアの中間層のため、今の時点で宿泊施設の手配に困ることはない。
しかし、五輪期間はホテルのランクに関係なく、すべての宿泊施設が不足する事態が予想される。
「4年後を見据え、今の段階からシティホテル、ビジネスホテルに次ぐ新たな宿泊施設を調達できる仕組み作りを整えていく必要がある」と、福田隆明社長はいう。
同社は、収益不動産開発のシノケングループ(福岡市)との業務提携も準備を進めている。
不動産会社との提携は、一時的な五輪特需に備えるためだけではない。
準備を進めているのが、神社や仏閣、古民家などを利用した体験型民泊だ。
日本の文化や宗教に直接触れられ、郷土料理も味わえるプランを開発し、旅行客を地方にまで分散させ、郊外の観光業を発展させる狙いがある。
不動産会社との連携は、地方の魅力的な不動産を発掘・活用する上でも重要だと捉えている。
アドベンチャー(東京都港区)は2月に、民泊事業参入を表明しているアンビショングループ(東京都渋谷区)との提携を発表した。
格安航空チケット販売が主力事業の同社が見込むのは、大規模なイベント開催に伴う国内旅行者の需要だ。
人気アイドルグループのコンサートには、全国から多くのファンが詰めかける。
中には数万人を動員するものもあり、開催地では瞬間的に宿泊施設が不足する。
民泊を利用すれば、地方からの旅行客の受け入れが容易になり、商機につながるというのが同社の考えだ。
一方で、慎重な意見もある。
一般社団法人日本旅行業協会(東京都千代田区)は、「フロント機能のない賃貸住宅は、緊急時の対応に時間がかかる」として、安心かつ安全な宿泊環境を提供するための仕組み作りが不可欠だという。
少しでも多くの旅行客を呼び込みたい旅行会社と、民泊という新しい不動産活用法で事業領域を広げたい不動産会社の思惑は一致する。
深刻化する国内の宿泊施設不足を背景に、今後も両者の連携は増えていくと予想される。