東急東横線「都立大学」駅から徒歩15分の場所にある『目黒八雲の長屋(東京都目黒区)』は、壁式鉄筋コンクリート造、地下1階・地上3階の長屋形式の集合住宅だ。幅広い層に支持され、満室稼働の物件である。
入居者同士が交流しやすくなる設計、半透明の間仕切りで明るさを維持
『目黒八雲の長屋』の立つ周辺は高級マンションや広い区画の邸宅などが見られる閑静な住宅街だ。設計した高池葉子建築設計事務所(東京都渋谷区)の高池葉子代表取締役によると、「周辺環境になじむ建物としつつ、住戸数をできるだけ増やし、さらに空間の豊かさを描くにはどうすれば良いかを考えて設計した」という。
周辺住宅とのスケール感に合わせるため地上は3棟構成とした。地下は、三つに分割せずに一つの建物として連結させて設計。そうすることで、地上では通路の部分も地下では住戸の一部として活用できる。より広く住戸面積を確保しつつも、周辺住宅に配慮した建物づくりを可能としたのだ。
さらに専用面積25・60~34・38㎡という居住空間をより広く感じてもらうために、地下と1階、2階と3階をメゾネット(2住戸除く)とし、縦方向の動線をつくりつつ空間に広がりを持たせている。各棟の玄関を向かい合うように設計し、入居者同士が自然とあいさつをする関係性が生まれやすくした。
各住戸のリビングや居室はフローリング敷きとし、周りにライトグレーのビニルタイルの床材や吹き抜けなどを採用したスペースを設けた。
「あえて床材を変え、屋外のような雰囲気を目指した」(同氏)というこの空間は、より住まいを広く感じてもらうため、構造に工夫を施すことで生まれたという。例えばリビングや居室の天井高は約2300㎜だが、同空間は約2300から3200㎜となっている。住戸によっては隣家の美しい緑を借景として楽しめるつくりだ。さらにリビングや居室との境目には壁はつくらず、半透明のパネル状カーテンで仕切った。カーテンを開けば屋外の雰囲気が感じられ、来客が訪れた際などには閉めることでプライバシーが確保できる。