『神楽坂薫木荘』は、老舗材木問屋である大和木材(東京都杉並区)が、建築家や庭園美術家と共につくった集合住宅だ。2017年1月に竣工後、約1カ月で満室となった。その後も好評で、新築時よりも賃料が5000円ほどアップした住戸もあるという人気物件である。
室内外に木材を多用して温かみを演出、手すりなど細部まで配慮したデザイン
全戸メゾネットタイプの『神楽坂薫木荘』は、竿の長い旗のような形状の土地「旗竿地」にあり、建物までのアプローチが35mほどある。この立地をプラスに捉え、「神楽坂の路地裏にたたずむ料亭のようなアパートをイメージした」と語るのは、大和木材(東京都杉並区)の石塚匡史代表取締役だ。
玄関までのアプローチ部分には樹木を植え、足元にはあえて大きさや色の違う石を敷いた。これにより敷き石間の段差などで多少の歩きづらさを感じ目線が下がり、庭の様子が楽しめるような造りにしたのだ。庭を進むと焼き杉の外壁と大きな窓が印象的な建物の外観が見える。
建物付近の植物の一部をあえて石畳側に出るように植栽計画することで、建物内から緑がさりげなく見えるように工夫されている。外観だけではなく、建物内から見える風景にも気を配った。入り口の扉を開けた際に見える階段のスチールの手すりは、あえて扉を開けると、正面に見える位置につくり、手すりの先端を丸めた。手すりとしての機能を備えつつ、第一印象を左右する見た目の美しさにも配慮したのだ。手すりだけではなく、エアコンは木材で隠して見えにくくした。
1階の床はタイル貼りとし、上階は光が当たると木目が映える黒いフローリングとした。キッチンも既製品は使わず、住まいの雰囲気に合わせてデザインしている。
玄関脇の木の階段部分には、靴の収納スペースを設けた住まいも用意。寝室はあえて壁を作らず、カーテンで仕切れるようにしている。空間に広がりを持たせるとともに、来客時のプライバシーにも配慮してのことだ。