管理士資格取得に向けた地場大手の取り組みを紹介していく。有資格者への手当ての支給や専門学校の講座を受けやすくするなど、各社とも資格取得者を増やすための工夫を凝らしているようだ。
専門学校の斡旋し取得を促進
桂不動産、宅建士との取得支援体制に差
管理戸数1万7261戸の桂不動産(茨城県つくば市)では、管理士資格の取得を推奨しているが、資格取得のサポート体制は国家資格である宅建士よりも扱いは劣る。20年度の管理士資格取得の合格率は、同社の目標である5割に届かなった。
管理業に携わる従業員139人のうち、32人と23%が管理士資格を取得。一方、宅建士取得者数は41人と29%だ。
資格取得のサポート体制も管理士と宅建士では大きく異なる。管理士は初回の受験料と合格後の登録費を会社が全額負担するのみ。宅建士は先の全額負担に加え、資格取得のための専門学校へ通わせるほか、取得時には毎月1~2万円の手当てを支給している。
管理士、宅建士共に賃貸業において必要な資格だが、サポート体制に差がある理由を「必要になる場面の多さの違い」と渡辺宗明社長は説明する。「管理士は物件の管理を受託する時くらいしか必要な場面が思いつかない」(渡辺社長)という。対して、宅建士は日々の重説時など多くの場面で資格の有無が問われる。そのため、宅建士資格取得体制の方により注力しているという。
しかし、国家資格化に伴って管理士の資格が必須となる場面が増えてくることを見据え、サポート体制をより整えていく。具体的には5千円ほどの手当ての支給、専門学校の斡旋など。足元では管理業に携わる社員の資格取得率5割を目指す。
桂不動産
茨城県つくば市
渡辺宗明社長(46)
武蔵コーポレーション、受験費用と祝い金3万円を支給
約1万7000戸を管理する武蔵コーポレーション(東京都千代田区)は、19年から管理士の取得に力を入れている。賃貸住宅管理業の登録制度が義務付けされることに伴い、現場での管理士の需要が高まると考えたからだ。
現在、同社で管理業に関わる従業員90人のうち、10%にあたる9人が管理士の資格を保有している。
資格取得の支援策は、社員からのヒアリング結果を踏まえて決定した。具体的には、試験に合格した際に受験費用と併せて祝い金3万円を会社から支給。管理士の取得を促すだけでなく、業務に関係のある資格を支援の対象とすることで、仕事に主体的に取り組んでもらうという狙いもある。
実際、20年の資格試験では6人が合格し、管理士の保有者が大幅に増えた。
管理士を保有することの効果については、「管理を受託する際の重要事項説明を有資格者が行うことによって、オーナーからの信頼度が増すと考えられる。国家資格化が実現すれば、対外的な信頼度はより一層高まるはず」と大谷義武社長は話す。
武蔵コーポレーション
東京都千代田区
大谷義武社長(45)
エステートトーワ、新規受託の部署に絞って取得促進
管理戸数約1万6000戸のエステートトーワ(大阪市)は、管理士資格を強くは重視していない。実際に業務を行ううえで、資格が必要になる場面が多くないためだ。
同社では管理業に携わる社員107人中、マネージメント事業部に所属する11人が管理士資格を取得している。
管理士資格は新規の管理受託契約の際に発生する重要事項説明時に、説明者の名前を明示する際にのみ必要になるため、その専門部署である同部に絞り込んで取得を促進している。
同部でオーナーから管理を新規受託した後の対応は、別部署に引き継いでいる。新規の受託契約ならびに重説は月10件ほど発生している。
また、資格取得後の毎月の手当ても同部のみに適用しているという。他の部署では資格を生かしきれないためだ。手当ては3000円で、16年から支給を始めている。同年から、重要事項説明の際に資格と名前の明示が必須となったためだ。
「国家資格化後は手当てを1万円にまで引き上げることも検討している。取得へのモチベーションを上げてもらいたい」(野崎常務取締役)
(4月26日・5月3日2面に掲載)
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