女性専用シェアハウス『かぼちゃの馬車』の販売や、スルガ銀行の不正融資で社会問題化した不動産詐欺事件。問題を追及し続ける加藤博太郎弁護士に、スルガ問題被害者の現状と、新たな手法で今なお起こり続けるトラブルについて話を聞いた。
同様手口のトラブル 今も続く
―スルガ問題への訴訟の発端から教えてください。
2018年3月SS(スルガ銀行・スマートデイズ被害)弁護団が発足しました。これによってオーナー達の訴訟が始まります。18年5月にはスルガ銀行を相手どって刑事告発が行われました。10月には、金融庁がスルガ銀行に対して行政処分を実行すると。ここから借り入れ元本を巡る攻防が始まります。この行政処分が行われたときに投資用ローンが止められるということで、オーナー側と銀行側との間で、スルガ銀行が貸した元本、これを返すのか返さないのかというような駆け引きがその後ずっと続いていくということになりました。
―不動産を売ったスマートデイズの詐欺を立証できないのでしょうか。
私はスマートデイズも含めて、関係会社を詐欺的行為ということで追及してきました。その裁判については全体的解決の中でいろいろ収縮はしましたが、私としては詐欺的行為を立証できると思っていて、そういう立証できたので解決できたと思っています。
―スルガ銀行とSS弁護団の間で最初の解決として3月25日に代物弁済の決済が実行された。要するに、1200人以上いらっしゃるオーナーの中の257人の家主の方々、343棟分の借金が帳消しになったということですね。
端的に言うとそういうことですね。借り入れ元本を巡る攻防、長い時間をかけて実現となりました。これは大変な長い交渉で。本当に長い年月をかけて何人もの方が闘っていったのかなと。だいたい長くなってくるとみんな自己破産したりとかになっていくことが多いんですけど、最後まで闘った。だからここまでの解決になった。国も動きましたし、それが法改正につながっていく部分もあると思います。
―第2陣が20年8月に債務解消を求める裁判を起こしました。160人194棟のオーナーが民事調停を申し立てて、その結果3月に成立しました。この続きというところにいくと、第3回ということですか?
そうですね。これ実は、スルガ銀行の『かぼちゃの馬車』だけじゃないんですね。他のことも元本割賦の話っていうのはいろいろ進んでまして。1棟アパートとか、そういったところにも飛び火しています。いわゆる「アパマン問題」っていわれるやつですね。そこも、今回『かぼちゃの馬車』は相場の2倍くらいの価格で売りつけられまして。家賃保証をつけてとばされるとか、詐欺的なことで物件の価格をつりあげて、うそをつかれたりとか。
―スマートデイズが販売した『かぼちゃの馬車』以外の保有不動産も対象になるということ。対象になるというよりむしろ、次が最後になるということですか?
そうですね。スルガ銀行の「かぼちゃの馬車」というより、シェアハウス問題。スルガ銀行の場合、代物弁済というスキームは『かぼちゃの馬車』だけでなくて、ゴールデンゲインとか、シェアハウス問題に関しては代物弁済という方法に柔軟に持っていくようにしています。アパマン問題につきましても、元本カットというのはありえる問題でして。同じように改ざんされて、いわゆる普通の1棟アパートでもかなり問題になっているわけですね。私のところに相談に来る方でも、1億円くらいのアパートを嘘つかれて4億円くらいで売られてしまった方とかいます。
―先ほど1258人の方が購入したけれどまだ542人の方しか対象となってない。残る700人強の方とか、今話に出ていたこの『かぼちゃの馬車』以外の不動産で被害に遭った方々というのは、知らないから参加していないんでしょうか?
まずはもう諦めてしまった方。破産した方というのも2年間かかりましたので、相当数いたのかなと思います。他には、今回スルガ銀行からの不動産投資に関わっている方には大変著名な方も複数いらっしゃいました。結局、融資はどこかに抜け穴があって、業者はそれを見つけていくのがとてもうまいので、いくらでも同じようなスキームがあるのかなと思います。投資初心者の方が狙われている。コロナ下の不動産詐欺はまだ続いていると注意喚起が必要ですね。
加藤・浅川法律事務所
東京都港区
加藤博太郎弁護士
(4月26日・5月3日22面に掲載)
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