1面で紹介した本邦初の公募型不動産STOにブロックチェーン基盤Progmatを提供した三菱UFJ信託銀行(東京都千代田区)は、サービスの普及に期待を寄せる。経営企画部デジタル企画室の西村通芳シニアプロダクトマネジャーは「Progmatを活用した不動産STOの取扱高を3年後に1000億円にまで増やしていく」と話す。すでに不動産会社数社からの相談も受ける。
3年で1000億円の案件目指す
不動産STOが実現した背景に、法改正により明確な法制度下で行える環境ができたことが挙げられる。20年5月の改正金融商品取引法により、セキュリティートークンが「電子記録移転有価証券表示権利等」と定義された。日本国内で不動産STOを行う際、第一項有価証券として第一種金融商品取引業者である証券会社が投資家に販売する方式が定められた。
証券会社側で取り扱い内容の変更手続きが必要なため、現在、不動産STOの取り扱いができるのはSBI証券と野村証券の2社だが、三菱UFJ信託銀行には大手証券会社から「不動産STOに興味がある」との問い合わせが来ている。引き受けができる証券会社の数が増えると、膨大な証券会社の顧客に不動産投資商品としてリーチできるようになる。「不動産会社にとっては、資金調達の新たな手法となり、アセットマネジメントの収入を得られる。また、手放したくない不動産に関しては、不動産STOの運用期間中はオフバランス(会計上資産から外すこと)ができる面もある」(西村シニアプロダクトマネジャー)
今後は、地方創生につながるような地方不動産の商品化や、不動産の利用権のトークンにより配当以外で投資家向けの特典をつけるなど、対象不動産のファンづくりができる案件も不動産会社とともに検討していく。
≪不動産STOとは≫
不動産STOの「STO」とは、Security Token Offering(セキュリティートークンオファリング)の略。ブロックチェーン技術により権利移転などを行うデジタル証券「セキュリティートークン」を発行し、投資家から資金調達を行う。その中でも不動産STOは、セキュリティートークンの裏付け資産を不動産やその権利とする。1棟単位で証券化ができる新たな不動産投資の手法。
(9月6日2面に掲載)