ケネディクス、日本初の不動産STO公募

ケネディクス, 三菱UFJ信託銀行, SBI証券, 野村証券, TMI(ティーエムアイ)総合法律事務所

ニュース|2021年09月03日

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 不動産運用大手のケネディクス(東京都千代田区)は8月12日に、デジタル証券を発行して資金調達を行う不動産STOを実行した。日本では初の公募となる。ブロックチェーン技術を活用した新たな不動産投資手法としての可能性を秘める。一方、現状においては商品組成のコスト高の課題もある。

2030年に2.5兆円の市場創出目指す

 不動産STOの「STO」とは、Security Token Offering(セキュリティートークンオファリング)の略だ。ブロックチェーン技術により権利移転などを行うデジタル証券「セキュリティートークン(ST)」を発行し、資金調達を行う手法。その中でも不動産STOは、セキュリティートークンの裏付け資産を不動産やその権利とする。

 今回、日本で初めて実行された公募型不動産STOは、ケネディクスが保有する東京都渋谷区に立つ鑑定価格27億4000万円、全37戸の賃貸マンションが対象。同物件の受益証券をデジタル証券化し、1口100万円2口以上、期中予想配当利回り3.5%で投資家の出資を募った。7月9日に公募を発表し、公募金額の14億5300万円を大きく超える申し込みがあった。8月12日に投資家へセキュリティートークンを発行し、実行が完了した。

 仕組みとしては、ケネディクスが対象不動産のファンドを組成し、同ファンドが三菱UFJ信託銀行(同)を受託者として、不動産を信託化しセキュリティートークンで受益証券を発行。そのデジタル受益証券を引き受け会社であるSBI証券(東京都港区)と野村証券(東京都中央区)が投資家に販売する。三菱UFJ信託銀行が提供するブロックチェーン基盤「Progmat(プログマ)」上で名簿管理や権利移転などを行う。ケネディクスは対象不動産のアセットマネジメント業務などを行う。

 ケネディクスの中尾彰宏執行役員は「今回は、初めての公募案件ということもあり、約1年間は売買できない期間を設けているが、その後は取扱証券会社での店頭取引による期中売買が可能。実物不動産よりも流動性が高く小口で購入できる。対象になる不動産がリートと異なり1件ずつとなり、売買価格は不動産鑑定評価を基準として設定する。そのため実物不動産投資に近い感覚で資産運用ができるのが特徴」と話す。

 当面対象となる不動産は都心立地の30億~50億円ほどの資産規模の案件で、住宅などを中心に企画していく。

 

証券会社が販売新たな不動産投資手法

 ケネディクスの狙いは、個人を中心とした新しい投資家層の獲得だ。同社は不動産運用会社として2兆4000億円の運用残高を持つが、顧客は機関投資家が多い。

 「ミドルリスク・ミドルリターンの投資商品として、不動産STOを幅広い投資家の資産運用の有力な選択肢に入れられるようにする。日本の市場には収益不動産が約210兆円あり、そのうち証券化されているのは40兆円程度。1000兆円を超える個人の現預金の一部を不動産投資に振り向ける手法として広げていきたい」(中尾執行役員)

 同社は、不動産STOの市場を2030年に2兆5000億円にまで広げられるとみており、ゆくゆくは、海外の収益不動産を含む多様な不動産STOも視野に入れる。

 

専門家解説 参入ポイントは不動産の商品力

 不動産クラウドファンディングなどに詳しいTMI(ティーエムアイ)総合法律事務所(東京都港区)の成本治男弁護士は「不動産STOビジネスを始めるにあたり、不動産会社にとっての法律上の参入障壁が高いわけではない」と話す。

 今回の三菱UFJ信託銀行が提供する「特定受益証券発行信託スキーム」では、不動産会社が対象物件を提供する。加えて受託者である信託銀行から委託を受け不動産運用を行う場合には、金融商品取引法に基づく投資運用業の登録があれば事業を行える。

 参入したい不動産会社にとってポイントとなるのは、不動産STOの商品として成立する不動産を提供できるかにある。公募する場合、有価証券届出書・目論見書や継続開示資料の作成が必要になり、通常の不動産小口化商品よりも手間やコストがかかる。

 そのため資産規模として10億円程度では採算が合わず、少なくとも数十億円程度が目安となる。「証券会社は、運用会社の信用力や運用能力などについても審査をするが、信託や特別目的会社を活用する場合には、まず不動産そのものの商品性でSTOとして成り立つか否かを判断すると思われるので、物件を提供する不動産会社が上場企業である必要性は必ずしもない。不動産会社にとっても不動産STOビジネスが広がると考えられる」(成本弁護士)

 他方、不動産会社としては、これまでの現物取引や小口化商品の場合にもまして、必要十分な情報開示や投資判断のための類似取引事例などの情報提供が求められる。

TMI総合法律事務所< 成本治男弁護士の写真

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東京都港区
成本治男弁護士(45)

 

(9月6日1面に掲載)

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