新型コロナウイルス禍による入国制限が徐々に緩和され、外国人向けの賃貸住宅市場がにわかに活気づいている。外国人入居者が多いシェアハウスを運営する会社からは3月は2021年3月に比べ、申し込みが7.5倍に増えたという声も上がっている。
入国制限の緩和受け
入国制限が段階的に緩和され、外国人の入国が進み始めた。1日あたりの入国者数の上限は、3月1日に5000人、同月14日には7000人に緩和された。その一方で、出入国在留管理庁によると、在留資格の事前認定を受けながら来日できていない外国人は、1月4日時点で約40万人に上る。文部科学省の調査では、3月11日時点で留学生だけでも11万人ほどが入国待ちの状態だという。
約4600ベッドのシェアハウスを運営するオークハウス(東京都豊島区)では、3月の入居に関する問い合わせ数が21年同月比で1.6倍に増加した。コロナ前の19年同月比の約7割にあたる。その8割が外国人だ。
22年3月14日にオープンした全36ベッドのシェアハウス「ファンネ経堂」は、3月に入ってから入居申し込みが急増。同月23日時点で35人の入居が決まっている。そのうち31人を外国人が占め、その8割が留学生だ。
同社はコロナ禍の影響を大きく受けており、20年3月に93%だった運営物件の入居率は、22年2月末には70%弱まで下がっていた。入居者の6割を占めていた外国人の入国が制限されたためだ。
海老原大介取締役は「留学生の入国を見越して、2月から『学割プラン』を始めるなど、取り込みを図っている。この1年を通して、入居率をコロナ前の水準まで戻す」と意気込みを語る。
入居申し込み7.5倍に
計660ベッドのシェアハウスを運営するボーダレスハウス(東京都台東区)には、コロナ前を上回る入居申し込みが殺到している。19年3月に80件だった外国人の入居申し込みは、22年3月22日時点で150件に達した。20件だった21年3月と比べると、7.5倍にあたる数字だ。また、留学生の割合が多く、9割を占めているという。
同社が運営するシェアハウスは国際交流をコンセプトとしており、基本的に入居者の半分が外国人だ。そのため、19年4月に95%だった入居率は、入国制限によって21年4月には75%まで低下していた。李成一社長は「外国人の入国が順調に進めば、入居率は22年5月に9割を超えそう」と声色も明るい。
3月業績は過去最高
外国人専門の家賃債務保証事業や賃貸仲介事業などを展開するグローバルトラストネットワークス(東京都豊島区)も3月以降の業績が好調だ。後藤裕幸社長は年間3万件の実績を誇る家賃債務保証事業について「ニーズが一気に押し寄せてきており、現場はフル稼働状態。3月の業績は過去最高水準で、5月までは同様の状態が続くとみている」と話す。
同社もコロナ禍による入国制限を受けて、賃貸仲介件数が半減するなどの苦戦が続いたが、ニーズの回復に備えて雇用を維持。さらに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した事務作業の効率化など、業務体制の整備を進めていた。
「外国人の入国はこれからどんどん増えるだろう。管理会社や家主は、積極的に外国人入居者を受け入れて業績を伸ばしていってほしい」(後藤社長)
グローバルトラストネットワークス
東京都豊島区
後藤裕幸社長(43)
(2022年4月4日1面に掲載)