賃貸物件において収益を上げられない共用部。しかし、空き住戸を共用部につくり替え、あえて「無収益化」させることで入居者を集める物件がある。共用部を充実させることで、建物全体の付加価値を高めることに成功した事例を紹介する。
建物全体の価値高める
3戸分使いラウンジに 「シェアする暮らし方」体現
新会社立ち上げ
神奈川県の横浜港を望む丘の上に立つ住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」。255坪ある敷地は、RC造3階建てのマンション2棟、戸建て1戸、小さな畑と池もある広々とした中庭で構成されている。運営・管理を行うのは、ここくらす(神奈川県横浜市)の荒井聖輝社長。「現代版長屋」をコンセプトに、築60年のマンションをリノベーションした。
バーのような雰囲気の共用ラウンジ
同マンションは借地に立ち、荒井社長の母が祖父より相続したときは、廃虚状態だったという。リノベ前は2棟で全10戸あったが、入居者が住んでいたのは1戸で、残りは空き家か物置状態だった。建物は完成してから50年以上、一度も大規模修繕をしていなかったため、配管や躯体にひびが入っていた。
マンションは解体費だけで1200万~1300万円という見積もりだった。同一敷地内の母屋である戸建て1戸を所有している以上、借地を更地として返すこともできない状況だった。
また、借地は土地を担保にお金を借りることは非常に難しく、加えて未接道地であるため建て直しもできなかった。そこで、当時外資系企業に勤めていた荒井社長が新会社をつくり、リニューアルをすることにしたのだ。