新生活費用を軽減
ハウスコム(東京都港区)が、児童養護施設を退所する若者の住まい探しの支援に力を入れている。原則18歳で退所しなければならない入所者が、住まい探しに苦労する場面が多いからだ。複数の事業者に協力を呼びかけ、契約の障害を取り除き、金銭的な支援体制を整える。
児童養護施設退所者向けの支援事業「Mirai(ミライ)」は、賃貸借契約に伴う初期費用などを支援する仕組みだ。都内の施設に対して2019年から部屋探しのサポート事業を行ってきたが、支援項目を追加して25年3月にMiraiとして再スタートした。3月中に7件が成約に至った。
Miraiの契約では、ハウスコムは仲介手数料を半額にする。家賃債務保証においては、エポスカード(東京都中野区)が初回保証料を無料とし、毎月家賃の1.5%を家賃とともに請求する(一部物件に限る)。ジャパンベストレスキューシステム(名古屋市)の設備トラブル対応や、ヴァンガードスミス(東京都港区)の近隣トラブル対応、ボネックス(埼玉県新座市)の消火剤も無料で利用できる。引っ越し費用については、OSD(東京都江東区)とキョウトプラス(京都府八幡市)が共同で、低価格の特別プランを提供する。電気、ガス、通信などのライフライン契約については、Renxa(レンサ:東京都豊島区)が、契約に至った場合入居者向けにキャッシュバックする。
児童養護施設の退所者の部屋探しをめぐる状況は非常に厳しいという。原則として18歳で就職先を決め退所しなければならないが、22年までは、20歳以下の未成年が賃貸借契約を交わすことができず、親族と連絡を取ることが難しい退所者たちの障害となってきた。民法改正による成人年齢の引き下げで、18歳から賃貸借契約を結べるようになったが、家賃債務保証契約については、審査が通りにくい状況が今も続いていると同社ではみる。
ハウスコムが退所者の住まい探し支援に関わるようになったのは、19年だ。東京都の要請を受け、補助金を活用し、退所者が住む居室のリノベーション提案を始めた。これをきっかけに都内の児童養護施設を訪問するようになり、部屋探しについてもサポートするようになった。「児童養護施設の退所者は、親族との間に難しい事情を抱える場合が多い。部屋探しをする際、事情についての詳細な説明を求められた。その状況下で契約を交わすには、一般の人よりも高いハードルを越えなければならない。この状況を変えるために、取引先と協力しながらできることに取り組んできた」(事業推進部・惠崎裕久部長)
今後は、就職後も、児童養護施設の退所者が抱える悩みに気付けるよう、養護施設と協力し、家族のようにケアできる体制を整えることを、一部の物件で検討中だ。
児童養護施設の退所者数は全国で年間2000人程度に上る。就職先に寮がない場合、自分で賃貸住宅を契約する必要がある。現在は、都内での支援が活動のメインだが、仲介店舗を置く他地域に広げていきたい考えだ。
(2025年5月5日4面に掲載)