東京都江東区に立つ『風光舎』は、2017年2月に竣工した。冬も夏も快適な日差しを得るため窓の向きに変化を持たせた住まいだ。断熱性や風の流れ、さらにデザイン性などにも配慮。相場よりも高い家賃でありながら満室状態での引き渡しとなった。
日差しを夏は抑えて冬は取り込む高遮熱ペアガラス
『風光舎』は運河に面した場所にある。1階は店舗、2.3階が賃貸住戸、4階はオーナー宅だ。同建物にほど近い場所には幹線道路が走り、周辺は建物の高層化が進むエリア。そのため日照環境に課題があった。設計を担当したSUEP. (スープ:東京都世田谷区)は、「環境共生型の住まい」というオーナーからの依頼に配慮し「光や風に配慮した集合住宅」をテーマに同建物を設計。冬は日差しを取り入れ、夏は日差しを抑える最適なファサードを目指した。アルゴリズムを用い日射を解析することで2916ものファサードの形状パターンを抽出。その中から、構造なども配慮し最適なファサードモデルを採用した。そのため窓が南東向けに斜めになっている外観が特長的だ。平面的な窓よりも冬の日射取得量が約52.1%増えたという。さらにオーナーのこだわりである「断熱性」を考慮し、床に断熱材を入れるとともに全住戸の窓に高遮熱性ペアガラスを採用した。
玄関に網戸付き格子戸を採用して風通し配慮
また建物の中央にある中廊下には、ルーバー部分の角度を変えて換気ができるジャロジー窓を南・北両方に設置し、風が通るようにした。さらに住戸の玄関手前にはロック機能を設けた網戸付き格子戸を採用。これにより玄関ドアを開けておけば、中廊下との風の流れが生まれる。
住戸には自分の「居場所」を感じるような空間として、窓側に低いベンチや本棚がある。また壁がカーブになった部屋を用意。「柔らかい曲線があると、部屋のアクセントになる」と同社代表取締役の末光弘和氏は語る。壁は白色とすることで、光を取り込むようにしている。また普段は開放していないが、屋上には芝生を敷き、コミュニケーションを育む要素も取り入れている。